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    ミツバチはカナリア
    −−−第29回ミツバチ科学研究会、総合討論より 





玉川大学ミツバチ科学研究会
 年に一度、全国からミツバチにかかわる人々が玉川大学に集まる。毎年1月中旬頃開催されるミツバチ科学研究会である。この研究会は、おもに大学のミツバチ科学研究施設から発行されている研究機関誌「ミツバチ科学」の購読会員対象の研究会で、今年(平成19年)で29回目を迎える。
 「ミツバチ科学」の会員にはさまざまな立場の人がいる。仕事としてミツバチを飼っているプロの養蜂家から庭の片隅で1、2群を飼っている趣味の養蜂家、大学のミツバチ研究者、ハチミツ専門店の社長、プロポリスなどの健康食品業界の人。これらの人々が専門家によるミツバチ研究の最前線の講義を聴いたり、日頃、仕事上で感じる疑問や発見を業種の立場を越えて「腹を割って」討論する。
 多くの養蜂家は、この会を年に一度他県の養蜂家と出会い話をする「新年会」と捉えている。健康食品業界の人々は、ここで何か「体に効く」新発見でも見つけられないか、情報交換の場にしている。研究会というよりもどこかお祭りの様相を呈した、楽しい集会である。
 今年の参加者は300名。会場となる講義室は満杯で、モニター視聴できる別室も設けてあった。参加者の半数は「ミツバチ科学」会員外であるということから、ミツバチ研究が一部の関係者に限らず幅広く注目を集めていることがうかがえる。
 研究会は朝10時半から昼食をはさみ、午後4時半までの長時間にわたって行われる。玉川大学の研究者による発表を中心に、ときには海外の養蜂関係者を招いての発表があり、会場から自由に質問や意見がとびかう。最後は自由なテーマで参加者による「総合討論」を行い幕を閉じる。今年の研究会では、「総合討論」の中で興味深い話題があった。

養蜂と農薬散布
 「総合討論」の中で岩手県のある養蜂家が、昨年あったミツバチの農薬被害について独自に調査した結果を発表した。養蜂と農薬、それは農地の近くでミツバチを飼う養蜂家にとって、昔から頭を悩ませていた問題である。農家は作物を育てる以上、多少の農薬を撒く。しかしミツバチにとっては有り難くはない。そこで、これまでは近隣農家との話し合いの中で、農薬の散布時期を事前に知らせてもらい、ミツバチの箱を一時的に避難するなどの措置で難を逃れてきた。
 ところが、一昨年8月、農薬によるミツバチの大量死という稀に見る被害が岩手県下で起きた(*1)。被害群数、772群。原因となった農薬は稲作のカメムシ防除に使われる農薬だった。日蜂協(社 日本養蜂はちみつ協会)は即座に農水省安全局に再発防止の要望書を提出し、今後は散布時期などを事前に告知するなど、稲作農家と養蜂家の間で連絡を密にするなどの方針が決まった。ところが、昨年もまた同様のミツバチ大量死が相次ぎ、しかも被害は岩手にとどまらないことが判明した。
 2006年9月の日蜂協による調査では、北海道、岩手、山形など全国16県で、合計6615群ものミツバチに被害が出たという(*2)。これは一昨年の教訓が何も活かされていない、養蜂家の声がきちんと反映されなかったということを示す結果だった。

活発な意見交換
 総合討論で発表した養蜂家は、昨年夏、農薬散布の時期に従来ミツバチの巣箱を置いていた山形県下の4つの蜂場をA〜Dと称して農薬散布日周辺日時のミツバチの巣の様子を克明に記録した。農家が使用した農薬、ダントツスタークルによる被害の違いについて、また、ミツバチがどこで農薬に接しやすいかを調べるため、巣箱の近くに水場を設けた群とそうでない群との被害率を出した。
 観察の結果、ダントツの昆虫への効き目は強く、ダントツ散布後は「水田から100メートル離れた畑で、テントウムシなどの昆虫が1か月間にわたって姿を見せなくなった」と報告書を締めくくった。ダントツの主成分はクロチアニジン(*3)というもの。ほ乳類や魚類など脊椎動物には毒ではないが、昆虫には有毒という成分である。
 発表の後、会場からは様々な意見が出た。まず、兵庫県で農業指導員をしているという人からは次のような意見が。
「知人が農業試験場で低農薬農業の指導をしている。カメムシ防除は農薬よりも、出穂時期までに畦草刈りを三度行うことで農薬散布はほとんどしなくてすむと聞いた。畦草刈りのやり方を農家に教えればどうか?」
また、現在、農薬メーカーに勤務しているという人からは次のような意見が。
「ダントツはコメだけではなく、柑橘系の植物の農薬としてもよく使われる。ミカンの蜜をとっている養蜂家の方々は注意してほしい」
 ミツバチを巡ってさまざまな立場の人々が知恵を出し合おうとする姿を頼もしく感じた。

ミツバチはカナリア
 農薬に関しては、大きく法律が変わり、昨年からポジティブリスト制が導入された。これまで基準が設けられていなかった農薬の残留濃度は、作物の重量の0.01ppm以下でなければならないという厳しい措置で、農薬への心配は従来よりずっとなくなったはずである。そこにきて、今までなかったようなミツバチの農薬被害が出たということはどういうことだろう? 制度の変更と何か関連性があるのだろうか? 
 コメだけがカメムシから守られればそれでいいのだろうか。昆虫による花粉交配が必要な作物はたくさんある。微量で多くの昆虫をすべて殺してしまう農薬が持続可能な農業に適しているとは思えない。とはいえ、高齢化が進む今の農業で、こまめに草刈りをやって収益をあげられる農家はどれだけいるというのだろう。ミツバチ大量死問題は、私たちにさまざまな注意喚起をしてくれる。
 かつて炭坑で、有毒ガスの発生をいちはやく知るため、炭坑夫はカナリアを籠に入れて坑道に入った。ミツバチは現代の「坑道のカナリア」。私たちはミツバチの羽音に、しっかり耳を傾けなければならない。

養蜂レポート



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第29回ミツバチ科学研究会

























*1 岩手県のミツバチの大量死問題のその後・・・・・・
昨年、県の養蜂組合は岩手県全農に対して損害賠償を求める訴訟を起こしたが、今年4月26日和解。請求を取り下げた。






*2 農薬によるミツバチ大量死 
参考資料
日蜂通信511号2005/9/25、518(2006/5/25)、522号(2006/10/25

















*3 クロチアニジン
詳しくは農薬検査所のHPへ。










































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