外貨預金を検証する   小俣 龍


 今、外貨預金や外国債券がブームになっているようである。円による定期預金や定額貯金では雀の涙程度の利息にしかならない中で、外貨預金等の高金利は確かに魅力である。

元本が保証されない株式や投資信託があまり好きでない日本人にとって、元本が保証されている定期預金や国債の方に安心感を持つのは当然かもしれない

特に、最近まで米ドルが急激に安くなったため、将来のドル高(円安)への切り返しを見込むと米ドルへの投資は魅力的に思える。実は筆者も昨年以来、2カ国の外貨預金で資金の一部を運用している。

ところが実際に外貨預金をやって見た結果、外貨による運用の怖さが痛いほど良く分かってきたのである。筆者は運用のプロでも無いし、フィナンシャルプランナーでも無い。

むしろ資産運用の素人として、外貨預金の持つ問題点を検証して見たい。


個人金融資産の内訳とその動向

 先ずおさらいであるが、下のグラフを見て欲しい。日本の個人金融資産は約1400兆円と言われているが、その内訳を見ると現預金が突出して多く(775兆円、56%)、かつその割合が上昇傾向にあることが良くわかる。また、株や出資金の金額(81兆円)や割合(約6%)が、米国に比べて異常に低い(米国の五分の一)だけでなく、低下傾向にあることも見てとれる。

0438日「ヨミウリ・オンライン」
http://www.yomiuri.co.jp/copyright/index.htm 


外貨預金の人気


 続いて次のグラフを見て頂きたい。日本銀行の公式統計を新生銀行がホームページで引用しているものである。確かに、過去4年間における外貨預金の伸びは顕著である。筆者が某外資系銀行を訪問した時にも、普通の小母さん(失礼!)がブースの中で外貨預金の相談をしていた。何時の間にか、普通の庶民の間でも外貨預金は特別の取引では無くなって来ているようなのである。

新生銀行のホームページより(3月7日)

 それでは何故外貨預金はこれほどの人気を集めているのであろうか?新生銀行のホームページから、外貨預金の魅力をどう訴えているかを見てみることにする。(外貨預金の魅力はどの銀行でも同じような訴え方をしている。念の為)このホームページでは外貨預金の魅力を次の5点にあるとしている。(カッコ内は筆者注)

@日本経済の先行きが不安(株や土地などが一層下落する可能性がある)

A円安・インフレになった場合への備え(上とは全く反対の状況を想定)

B外貨預金は一般的に好金利(何と好金利と書いてある。高のはず)

C外貨建てでは元本割れしない預金の安心感(預金のところが、“預金”、として強調されている)

D海外旅行の普及による為替相場への関心の向上(実は筆者もこのケースである)


 新生銀行に悪気は無いが、このうたい文句はいただけない。それなりの理屈はあるのだろうが、全くピンと来ない。要は、高金利で元本が保証されている、という2点が訴えの根本なのである。

確かにキャンペーン期間中の上乗せ優遇金利やキャッシュバックサービスを除いても、オーストラリアやニュージランドの4%前後という金利は日本に比べれば夢のようである。さらに、購入時点より円安になれば為替差益が狙えるという旨みもある、と説くのである。


外貨預金のリスク

 それでは肝心の外貨預金のリスクについてはどう触れているのだろうか?同じく新生銀行のホームページから引用して見よう。

@為替レートの上下によって円で見た時の預金額が上下する。円高では損(為替差損)をする。

A外貨預金は預金保険の対象にはならない。

B中途解約が出来ない。

以上の3点が外貨預金のデメリットである、と説いている。「ちょっと待てよ」と言いたい。円と外貨を交換する時に為替手数料がかかるという肝心な点が何故抜けているのか。それも売り、買いの2回にわたって取られることが出ていない。「外貨預金とは」、という説明の中で簡単に触れられているだけである。お客に不利な情報こそ、リスク(あるいはデメリット)としてキチンと大きく表示すべきと思われる。

為替レートの変動は外貨預金をなさる方なら一応念頭に置いていると思われるが、為替手数料が極めて高いことや、中途解約が出来ないことのリスクはどうしても過小評価されているとしか思えないのである。その問題は追って述べるとして、先ずは為替レートの変動を見てみよう。


為替変動リスクとは 

 為替変動リスクとは、為替相場が上下することによって損をしたり(為替差損)、益が出ることをいう。これを図に示すと次のような感じとなる。

日興年金コンサルティングのホームページから(3月9日)


 115円から120円前後で安定的に推移していた米ドルが、昨年
9月以降一気にドル安(円高)が進み、今年の1月末には105円程度となり、1時は100円を切るとさえ言われていた。

筆者もそうであるが、120円前後でドル預金を始めた方は円の目減りの激しさを痛感したはずである。また、小生は69円前後でニュージランドドル預金を設定したが、設定直後に64円程度まで円高が進み、肝を冷やしたものである。元本は7%以上も目減りし、高金利が吹っ飛ぶと思ったのである。これが為替変動リスクの怖さである。

また、問題なのは為替の変動はプロでも読めないということである。筆者が外貨預金について某外資系金融機関に相談した時には、次のようなコメントを聞かされていた。(カッコ内は筆者注)

@米ドルは安定している。購買力平価の差からすると長期的には円が高すぎるのでドル高が期待出来る。

(例えば、1ドルが110円の場合、日本で110円で買える以上のものが米国では買える、ということ。海外旅行をすると円の価値が随分高いことに気がつくはずである。OECDは購買力平価に基づき、1ドル=146円という値を出している)

Aユーロはお勧め出来ない。中核のドイツの景気が弱含みであり明らかに水準が高すぎる。

B豪とニュージランドは、好景気が続いており政策金利は高い。当面ドル高が続く。

この予測で当たったのはBだけであるただ、筆者自身も全く同じ読みをしていたし、どの評論家も同じように見ていたから、この金融機関だけの責任とは思わない。要は、為替相場ははプロから見ても難しいのである。

 為替は経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映すると言われるが、とんでもない。為替を動かしているのは、政治情勢(米国大統領選挙が好例)やヘッジファンドの仕掛け、地政学リスク(テロ懸念など)、財務大臣の発言(口先介入)、株価の推移等等、数十項目以上の連立方程式から成り立っているのである。

最近は、「プロから見ても難しい為替の世界に素人は手を出すべきではない」と一部のプロは、言い切っている。

円安が一気に進み「今売りたい」と思っても、定期預金では中途解約が出来ないのも大きなネックなのである。

筆者の場合、現時点ではニュージランドドルが急激に高くなったため、米ドルの損失をカバーしてかなりのお釣りが来る。ただ、米ドルが短期間で円安に戻った理由も良く分からないし、ニュージランドドルが急激に上がった理由もつかめていないのである。


為替手数料の罠

 為替レートは上下双方があるため、リスクもあるがリターンも見込める。ところが、一方的にリスクしか残らないのが為替手数料である。

2月29日(日)の日経マネー欄に直近の金利と為替手数料が銀行別に掲載されていたので引用して見よう。(預入れ金額の条件などが細かく設定されているが割愛する。)

 

米ドル

豪ドル

1年定期

金利(%)

手数料・円

1年定期

金利(%)

手数料・円

東京三菱

0.1

3.45

みずほ

0.18

4.1

2.5

シティバンク

0.1

2.4

日本経済新聞(2月29日朝刊)から (注)2月27日時点 


多分この表を見ただけでは、手数料の怖さが分からないはずである。
筆者は、この表をこのように直すことを提案したい。(1米ドルを111円、1豪ドルを85円で試算)

 

米ドル

豪ドル

1年定期

金利(%)

手数料(%)・

往復

1年定期

金利(%)

手数料(%)・

往復

東京三菱

0.1

1.8

3.45

4.71

みずほ

0.18

1.8

4.1

5.88

シティバンク

0.1

1.8

2.4

2.35

違いは一目瞭然である。シティバンクの豪ドル預金を除き、全てのケースで始めから元本割れなのである。

先ず、為替手数料は購入時と売却時の2回にわたって発生する。その外貨のままで永遠に持っていれば片道で済むが、そんなに頻繁にアメリカやオーストラリアに旅行するわけにもいかず、何時かは日本円に戻すはずである。

また、手数料を金利と同じく%で表示することで有利不利が簡単に判明する。例えば、豪ドルを例に取れば金利で不利と思われたシティバンクが相対的に見て有利であることが分かる。

 先日、金融機関に長く勤めていた友人にこの為替手数料のことで注文をつけたが、友人は外貨預金をやるような人は為替手数料のことは十分承知しているはずだ、と言っていた。筆者は全くそうは思わない。このような表を出していたら、外貨預金がこれほど人気を集めることは無いと思われるのである。


結論

 外貨預金は、思っているより遥かにリスクの高い商品である。通常は為替変動リスクのことが強調されるが、先ず、手数料の大きさが半端では無く、下手をするとハイリスクで、ローリターンの預金であることを肝に銘ずるべきである。

それにしても外貨預金の為替手数料の高さは異常である。都銀を始め各銀行は手数料収入を重視しだしているが、外貨預金については預金者不在としか思えないのである。

一方、分散投資の必要上など、どうしても外貨で運用したい場合には、相当長期にわたってじっくり保有出来る余裕が必要だし、何時でも換金出来るような商品にしておくことも必要である。

また、今回は触れなかったが、証券会社や信託銀行の方が為替手数料も安いし、豊富な品揃えをしていることなど、幅広く研究することも大事である。


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