ガンダムコミックについて
(03/5/24 GMN)


本編(?)アニメシリーズでさえ20年以上の歳月をかけて
やっと多少まともな評論がわずかに出てきたのであるからして
(そんでも個人的にはまだまだ。結局の所、幼い業界なんでしょうね)
それより狭い位置にあるコミックの評価等は皆無と言っても
過言ではない。勿論、濃いファンが多い作品である故、
「感想」的な言葉としてはそれなりに語られ、吐き出されてはいる
これから自分の綴る言葉もそれらとさほどかわる物ではないかもしれない
私個人も見解の広さは無いと自覚しているし、
批評家ぶる程に頭もよろしくない(汗)
それらを考慮した上で解釈していただけたら幸いである。


メディアミックス等と言う言葉は今は珍しくも無いが
他のジャンルと比較してコミックは古くからアニメーションと
密接な関係にある為、”「メディアミックス」という言葉が生まれる以前
から存在している「メディアミックス」”ものである。

アニメーションとマンガの関係で言えば手塚治虫「鉄腕アトム」
あたりから始まるように、古い時代から遡ると
「原作」としてのマンガがあってそれをアニメーション(あるいは実写も含め)
という技術を使って動かす、という所が発端であろう。
別にここでアニメの論議をやろうというのでは無いので
その辺りは深く追求しないが、事「ガンダム」の場合は
マンガなり小説なりの原作ありきでなく、アニメーションそのものが
オリジナルの原作媒体であるという事
が重要な要素となる。

「マンガ→アニメ」という流れでは無く
「アニメ→マンガ」の流れにあるのがガンダムコミックという事だ。
言い換えればガンダムコミックというのは「オリジナル」ではなく
あくまで二次生産品的な立場にあるという事は理解しよう。

ずガンダムコミックの大多数を占める一角
「08小隊」「Gセイバー」以外全ての作品が
コミック版として製作されている「コミカライズ」作品について。
歴史的な観点で言えば岡崎優版「機動戦士ガンダム」が実は興味深い。
ファンの間では笑い話のネタにされる作品であるのだが
初のガンダムコミック作品でもある。

今現在「ガンダム」と言う言葉で連想されるような要素が確立される
「ムーブメント以前」を感じられる唯一の作品であると思う。
「ガンダム」以前の感覚で見た「ガンダム」というものが本作なのだろう。
(プラモ以前の超合金トイで発売されたガンダムと並ぶ物、と言えば分かりやすいか?)
ガンダムというイメージが確立される以前のガンダム」という事だ。

続いて「Z」以降が次々とアニメ本編と平行されてコミカライズされていくが
作品の方向性のふり幅が多少異なるだけで、そこにコミックなりの価値を求める
事は難しい。はっきり言えば何の生産性もそこには無く、マーケティングという
システムが垣間見えるだけであろう。

が、コミカライズ作品においても、後に違う価値を見出せる作品が登場する。
安彦良和「ジ・オリジン」松浦まさふみ「星屑の英雄」の2本である。
これらの違いは原作アニメのメディアミックス展開とは違う部分で作られた作品
という事だ。(とも一概に言い切れない部分もあんですけどね。そこがガンダムの
難しくも面白い部分ではあるのだけれど、ここで語る事ではないですので)
物語として「元あったものを再解釈してアップデイトされた作品」。
丁度MGやHGUCのプラモデルと同じような事をやっている
と思えば分かりやすいだろう。リメイク作品という言い方もできる。
それが「メカニック」であるか「物語」であるかの差だけである。
これ等は原作アニメに依存する事無く一つのコミック作品として完成度が高い、
コミックとして価値のある作品である。

残念な事にときた版「逆襲のシャア」は、同じような環境にありながら、
なんのアップディトも加えないどころか作品の本質さえ見失うという
どこに価値を求めたらいいのかわからない作品を世に贈り出している。
作者の器量の狭さを露呈しただけとしか思えず、苦笑してしまう所なのだが
それを何も考えず消費してしまうのが現在のムーブであるのが
良くも悪くも現実であったりする。

て次はコミック作品のもう一つの流れ「サイドストーリー系」について
初のサイドストーリー系コミックは近藤和久・高橋昌也「MS戦記」である。
模型や文章展開であった「MSV」と並び、ガンダムの方向性を決定付けた
歴史的観点から見て
重要な作品になっている。

新米ジオン兵から見た戦記物風のストーリー。
細かいディティールが追加されたメカニック描写。
古参のファンがガンダムにミリタリズムを求めたがるのは
アニメ本編の戦争描写だけでなく、この辺りも基礎になっている。
このムーブが、後のOVAシリーズや「センチネル」等にも繋がる訳で、
そういった観点から見ても興味深いだろう。

しかし、これらの作品をきっかけに原作の世界観が一気に広がった功罪
とはうらはらに、意識の低い「形式だけのサイドストーリー」が
大量に生産されていく事になり、現在のガンダムコミックの中核を為す事になる。

キャラクターやメカニックを原作から引用しコミック独自の物語を展開する。
他人の土俵で相撲を取る」という時点で生産性が低いのは確実だし
そこをわかった上で何を表現するか、が問題なのだと思う。

勿論、元の作品世界が広がる、という利点も生まれるのだが
元作品に依存しなければ作品が成立しない物であれば、個の作品としての価値は
捨てるほか無い。まだ元作品に関わったクリエイターがそれをやるのなら
あくまで「補足」として割り切る事が出来るが、そうでない場合は
少々微妙な位置に立たされる事になる。

個別の作品として評価する程にレベルの高い何か一要素(例えば
脚本・テーマ・アート等)でもあればまた違ってくるのだが
これだけの本数のガンダムコミックが生産されながら評価に値する作品は
ほんの一握りでしかないのが現状であり、作り手も受け手も一考すべき所だろう。

「MS戦記」の近藤氏でさえ、後に続いて発表された作品は
氏の作風のファンでもないかぎり価値は求めにくい物となっていく。
他に評価できるのは沖一「パイロット列伝」松浦まさふみ「アウターガンダム」
くらいだろう。特に「アウター」の方は絵のレベルこそ低いものの
原作をきちんと飲み込んだ上で作者なりの独自の見解を作品で表現するという
あきらかに他とは一線を画す物語を紡ぎ出している。

若干違うがミッシングリンク作品もこれ等に近い存在だろう。
が、最初からあくまで元作品を補足するために生まれた作品であるので
多少ベクトルは異なる。

して最後に「オリジナル作品」について。正確には「オリジナル」という表現は
正しくない
だろうがここでは便宜上そう呼称する事にする。

「ダブルフェイク」「ムーンクライシス」「クロスボーン」あたりの
コミックのみで展開するオリジナルガンダムコミック系と思って下さい。
他には「F90」「SF91」も一応こちらのカテゴリーに含んでもいい
はずなのだが、実質「F91」の添え物的に上記のミッシングリンク作品と
同程度の価値しか見出せない
作品になってしまっている。
とは言え、逆にそういう観点から見てしまうと逆に全体的な繋がりの薄さ
が露呈してしまい、魅力も少なく、どうしようもなく中途半端な作品になっている。

媒体がアニメーションとコミックの違いがあるだけで、本質として
アニメのオリジナル作品と同列に位置しても遜色ない物という観点で
評価されるべき「オリジナル作品」であるが、松浦まさふみ「ムーンクライシス」
十分にそれらの点を考慮した上での作品になっている。
サービス的に他作品とのリンクも見せつつ、単独の作品として
物語やテーマ性が上手く練りこまれた上できちんと完結している
のは
評価すべきだろう。

そしてもう一つ、富野由悠季・長谷川裕一「機動戦士クロスボーンガンダム」
F91の続編として、富野監督自らが関わったという経緯もあり、
それだけでなんとなくありがたみがある作品であるのだが、
そんな部分だけで評価すべき物ではない
ガンダムをより深く理解していればいるほど本作もまた深みが増すのだが
逆に言えばそれは既存の「ガンダム」に依存している面も大きいと言えるし
実際に本作のテーマは既存のガンダムの延長にあるものである。

「ガンダム」なのだからガンダムをやるべき、という方法論も
別に間違いではない
ので、読み手側が何を求めるかという
個人の資質に負う面というのは多々ある。

ここで一つ面白い例を挙げてみよう。
4巻に収録されている「トビアvsX2」
なんと人間対MSのバトルが描かれている。
これは他のガンダムコミックではまず読めない展開であろう。

これこそ!なのだ。この発想って、とてつもなく大事なのだと思う。
ガンダムうんぬん以前に、巨大なロボットがあるならば
それと人間との対比を描いて見せる。人間対巨大ロボット!
物語としてこんな魅力的なシチュエーションがあろうか?

バカげてる?なら言うが、巨大ロボットそのもの事態が
バカげた物
では無いのか?勿論それを許容してしまおうというのが
ガンダムであるのは確かではある。「ファースト」や「08」の如く
あくまで歩兵対巨大兵器という描き方もあるだろうが
そんな二番煎じ以上に、本作の描いたシチュエーションは
私には魅力的に映る。

他作品の戦闘シーンと比較して見てみれば
これまでのガンダムコミックなりは、いかにその程度の事すらやってこなかった
想像する事は容易であろう。
「ガンダム」の設定を借りなければ何の面白みも見出せない
何ら意味の無い事をただひたすらに繰り返してきた
事か。
他のシーンにしても、クロスボーンガンダムにおける戦闘シーンは、
常に何かしらのアイディアに満ちている。
「XG対F91」等というのは、設定を知っているコアなファンだけしか
その魅力を持ち得ない
という事だ。
(じゃあ本作はそれをどう見せているのか?ってのは自分で確認すべし)
死の旋風隊(デス・ゲイルズ)等はその最もたる見本だろう。

「クロスボーンガンダムはマンガとしても優れている」とは
よく言われる事だが、何も物語やテーマうんぬんだけでなく
そんな部分の積み重ねがあるからなのだと理解できるはずである。

とめ
おおまかに分類して見渡してみたが
以上のような点を考慮した上で、私が価値があると思う作品をランク付けしてみた。
当然、作品に何を求めるかは人様々に違うものであるからして
何も絶対的な価値を評するもので無いという事は理解していただけたら幸いである。
SSランク 「機動戦士クロスボーン・ガンダム」 富野由悠季・長谷川裕一
マンガとしての完成度は他の作品では絶対に味わえない
ガンダムコミックとしての指標となるべき作品。
Sランク 「機動戦士ガンダム ジ・オリジン」 安彦良和
絵のクオリティの高さと丁寧なドラマ描写!!
もはや凄いとしか言いようが無い
Aランク 「機動戦士ガンダム ムーンクライシス」 松浦まさふみ
全体的な脚本の完成度やオリジナリティが高い上に
ガンダムらしさも含むオリジナル外伝物のマスターピース
「アウターガンダム」 松浦まさふみ
オリジナルの「ガンダム」に対する作者なりのアプローチは
独創性が高く、非常に深みがある
Bランク 「ガンダムパイロット列伝 蒼穹の勇者達」 沖一
兵士の一人一人にあるドラマを再認識させてくれる良作
「機動戦士VS伝説巨神 逆襲のギガンティス」 長谷川裕一
良くも悪くもマニアックすぎる作品だが、奇を衒った設定以上のテーマ性
「機動戦士ガンダム0083 星屑の英雄」 松浦まさふみ
原作に再アプローチをかけた行為と、そこで生まれる「差」が興味深い
Cランク 「MS戦記 機動戦士ガンダム0079外伝」 高橋昌也・近藤和久
ガンダムの世界観を、より膨らませた功績はあなどれない所
当然ながら他作品もコミックオリジナルストーリーやミッシングリンクはそれらを求める人にとっては
それなりに価値は見出す事が可能であるのでその辺は勘違い為さらぬよう。

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