P2-6-1. ART(1) 西ウイミンズクリニックでの不妊治療による妊娠実績は2002年末までに1400名を越えています。
   ★ART(Assisted Reprodactive Technolozy) 
 まず・・・  ARTとは  
  ART(Assisted Reprodactive Technolozy)− 生殖補助医療技術とは → ARTの種類 

 【3】 当院で行っているART

 (1) IVF/ET (従来の体外受精胚移植)  
 ◆@IVF/ETとは
  IVF/ETはゴナドトロピンで卵巣を刺激し、多数の卵胞を発育成熟させ、穿刺して採取した卵を体外で受精させ、発育した受精卵を子宮内に移植して、妊娠成立をはかるものです。対象とする事例は、日産婦学会の見解に従っています。
日産婦学会【会告】 P2-6-1a-a2
@卵巣排卵刺激
A採卵
B精液の調整と媒精
C体外受精
D胚移植
E黄体期管理
 
・卵管、腹膜因子による不妊
  両卵管角付近の閉塞や、卵管形成術、癒着剥離術後2年経過しても妊娠の成立をみないもの。
・原因不明不妊
  不妊期間が2年以上で、一般不妊治療を2年以上行っても妊娠に至らない症例
・子宮内膜症による不妊
  薬物療法、治療的腹腔鏡、チョコレート嚢腫のアルコール固定などを行っても妊娠の成立をみないもの
・男性不妊
  最終の調整濃度で運動良好な精子が(カウント数×106以上得られた場合は、IVF/ET、それ以下の場合には顕微授精を併用
・免疫性不妊
  抗精子抗体が存在する症例
       
 ◆AIVF/ETの手順  
     
   ◇@卵巣刺激  
  採卵では多数の卵子を得ることが成功率を高めます。自然周期や内服薬服用周期に比べ注射による卵巣刺激では妊娠率は、約3倍となります。  
  胚が着床する率は2割にも未たないものですから、複数の良好胚を移植することが妊娠率向上に必要となってきます。余剰胚は凍結して妊娠が成立しなかった場合、他の周期に移植することができます。(別記;凍結胚移植)  
  1)主な卵巣刺激法を図2にまとめました。  
 
クロミフェン法
hMG/FSH-hCG法
GnRHa+hMG/FSH-hCG法
GnRHa+hMG/FSH-hCG法
 
    hMGやFSHは年齢を考慮し、投与量を決めます。【表 1】  
 
       当院におけるhMG、FSH製剤の年齢別投与量 【表 1】  
  月経周期3〜5日目  月経周期6日目〜
年齢 pure FSH hMG
〜26  150単位   75単位
27〜34  225単位 150単位
35〜 300単位 150単位
 
  (a)hMG/FSH-hCG法  
  卵胞期初期においてはFSH優位で刺激し良好な卵胞発育をおこし、つづいてhMG製剤(LH:FSH=1:3)で成熟させていきます。卵胞発育における過剰なLH環境は、アンドロゲン産生を増加させて良好な卵胞発育を妨げることになる可能性が示唆されています。LH:FSH比を十分考慮し薬を選択することが大事です。  
  (b)GnRHa(gonadotropin seleasing hormone agonist)併用 hMG/FSH-hCG法  
  内因性のゴナドトロピンが出現し卵胞の発育や排卵を阻害し採卵率を低下させることがあります。その様な傾向が予想される方には、GnRHaを併用し、採卵率のアップをはかります。  
  GnRHaは二面性の作用を持っています。投与初期には下垂体からのゴナドトロピンを放出させる作用があります。この作用は一過性であり、flare up現象と呼ばれ排卵誘発が困難な症例にも有効です。ついで脱感作現象が起こり、下垂体からのゴナドトロピンの放出は抑制されます。また、脱感作現象では、内因性ゴナドトロピンをブロックし、卵胞の発育を外因性に投与するhMG/FSHのみでコントロールします。さらにhCG投与前に起きる有害なLHサージを予防し、採卵のキャンセル率を減少させます。  
   三通りの使用法があります  
 
 urtra short protocol ・flare up現象のみを期待する
 long protocol ・脱感作作用のみを期待する
 short Pprotocol ・その両者を期待する
 
   GnRHaの問題点として  
 
@)卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発生頻度が高い
A)時に卵巣嚢腫を形成する
B)治療費用が高い (特にlong protocol)
 
 
当院では初回の卵巣刺激法として、hMG/FSH-hCG法を施行し、色々な理由でキャンセル周期が続く場合にはshort protocolあるいは、long protocolを行います。また、最近ではGnRHアンタゴニストも使用しています。
 
  2)poor responderへの対応  
  poor responderの定義は定まっていませんが、hMG/FSHによる卵巣刺激法をしても、おおむね卵胞径10mm以上の卵胞が3個以下しか出現しないものか、血中エストラジオール(E2)のピーク値が200pg/ml未満のものを大体の基準としています。対応として以下の方法をとっています。  
 
@)hMG/FSH増量投与法
A)hMG/FSHとGnRHaの併用(ultra short または short)
B)成長ホルモン(GH)の併用
C)hMG律動的投与法
X)自然排卵周期法     
 
    3)多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)への対応  
  通常量のhMG製剤を投与しても高率にOHSSの発生をみます。GnRHaの long protocol法を行い、内因性ゴナドトロピンの分泌を完全にブロックした後に pure FSH製剤(LHを殆ど含まない)を投与します。  
     
   ◇A卵胞発育のモニタリング  
  卵胞成熟の指標としては、超音波断層法による卵胞径のニ方向測定の平均値と血中エストラジオール(E2)値を用います。  
 
主席卵胞径が17mm以上で14mm以上の卵胞が3〜4個以上
E2値が14mm以上の卵胞1個に対して200pg/l以上
子宮内膜の厚さは8mm以上が望ましい(薄ければ貼薬にて是正する)
 
  卵胞成熟の時点でhCGを5000〜10000単位筋注し、その34〜36時間後に採卵します。  
     
   ◇B採卵  
  手術室にて静脈麻酔を用い、経腟超音波下にて、卵巣を穿刺し採卵を行います。入室から帰室まで30分程度です。  
   【採卵の手順】  
 
  ・入室
  ・前投薬(麻酔の副作用を防ぐ)
  ・モニター(血圧心電計、血中酸素濃度計)の装着
  ・点滴開始
  ・麻酔開始
  ・腟洗浄
  ・内膜のチェック、腹腔内観察
  ・採卵
  ・腟内にガーゼの挿入、バルンカテーテル(尿の管)の挿入
  ・帰室
  ・6〜8時間安静の後、腟内ガーゼの抜去、経腟超音波にて腹腔内観察
  ・帰宅
 
     
   ◇C精子調整  
  アイソレート法、swim up法を用い、良好な運動精子のみを回収しています。生み分けも事情により行うこともあります。   
   精子調整法(体外受精、顕微授精)  
 
@アイソレート液6mlを37℃に温める。
A液化した精液をアイソレート液に重層
B2000rpm、20分遠心
C上清を吸引除去後、37℃に加温し平衡化させる。(10% Serum Sobstiture Supplement + HTF Medium)2mlを加え、懸濁  
D2000rpm、5分遠心
E上清を吸引除去後、37℃に加温し平衡化した(10%SSS + HTF Medium)を2ml加え、懸濁
F2000rpm、5分遠心
G上清を全量が約0.3mlになるまで吸引除去し懸濁
H懸濁液をswim upする
I1時間後、swim upした精子を回収し使用する。
 
     
   ◇D体外受精  
  採卵から胚移植までの培養スケジュール   
 
採卵 卵子の成熟度による分類
  卵子を培養液にて洗浄後3〜4個づつ培養液にて培養
  培養環境 ; 温度37℃ 湿度100% 気相(5%CO2、5%O2、90%N2) 光暴露制限培養液 Irvine社 HTFmedium
4〜6h 精子懸濁液を加え受精させる(媒精)
  精子は卵子1個あたり10万匹の運動精子としています
24h 受精の確認
  正常受精卵を別培養液へ移します
  培養環境 ; 温度37℃ 湿度100% 気相(5%CO2、5%O2、90%N2) 培養液 Irvine社HTFmedium
48h 受精卵分割状態の観察を行っています
  受精卵のクオリティの判定(Veeckの5段階を採用)
 
Grade1 Grade2  Grade3 Grade4  Grade5
  卵割球の状態がより均等でフラグメンデーションのより少ないものが、形態良好胚で高妊娠率が期待されます
48〜72h 胚移植 
 
     
   ◇E胚移植   
  胚移植は採卵48〜72時間後に行っています。(胚盤胞移植については別記)  
  移植数は3個以内としています。移植後は6時間安静臥床していただきます。細いチューブに胚を吸入し、移植しますので痛みはほとんどありません。  
 
a・経頸管的子宮内移植法
b・経腟的子宮内移植法
頸管の変形などによりa法が困難である場合、静脈麻酔下で行います。
 
     
   ◇F黄体機能賦活補充  
 
1)hCG(モチダhCG1500単位)を胚移植後、1日目、3日目に注射します。 
2)黄体ホルモン腟錠(プロゲ座薬50mg)を胚移植翌日より採卵14日目まで1日2回投与しています。
3)妊娠成功時には、妊娠8週目まで黄体ホルモン(プロゲホルモン25mg)を1日2回注射しています。 
 
     
   ◇G不成功例の検討および解決法  
 
1)受精不成功例  →  顕微授精(別記)
  男性側、卵子側、各々の因子に異常がないにも関らず、受精しないことがあります。次回よりは顕微授精の対象となります。
2)着床不成功例  →  子宮因子に対する手術療法、薬物療法、胚盤胞移植(別記)、出生前診断・アシステッドハッチング(別記)
  胚自体に発生できない遺伝子的な異常がある場合には、出生前診断が必要となります。子宮粘膜下筋腫や子宮腺筋症、子宮奇形などが原因となりうる場合には、外科的内科的治療を先に行います。それらの因子もなく良好胚は得られても、何故か妊娠しないというような例には、アシステッドハッチングや胚盤胞移植を行っています。
3)内膜不全による不成功例  →  ダナゾール(接着因子)の投与。エストラジオール貼薬により内膜の改善をはかる。
  胚の着床はまず内膜上皮に接着することが重要ですが、この時接着因子のひとつであるインテグリンの発生が必要であるといわれています。この発現のない症例にはダナゾール(ボンゾール)を投与し、インテグリンの発現をはかっています。また採卵直前の子宮内膜が8mm以下である場合には、エストラジオール貼薬(エストラダームM)を使用しています。
4)卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発生  →  hCGを投与せず採卵をキャンセルするか、または採卵後胚移植をキャンセル(胚を凍結保存)
  25個以上の卵胞を認めたり、血中エストラジオール値が3000pg/ml以上の場合にはOHSSのおそれがあるのでhCGは投与せず、採卵を中止することがあります。採卵を行っても、妊娠することによる症状の増悪を避けるため、胚移植は行わず凍結保存し、別の周期に胚移植しています。 
 今後は coasting法も予定  (E2の低下を待つ)