前立腺肥大症と前立腺癌

ぜんりつせんひだいとぜんりつせんがん

Prostate Enlargement & Prostate Cancer

 

前立腺は、精液の中に含まれる液体を分泌する器官である。解剖学的に見ると、前立腺は膀胱の底部にある尿道(膀胱と外部を接続する管)の「周り」に位置する。

良性(軽症)前立腺肥大症(良性前立腺過形成、すなわちBPH)は、おそらく男性ホルモンの影響により、通常50歳以降に発症する。重症の肥大が起こると、それは尿道を「締め付け」、排尿を不可能にする。患者は、典型的に排尿開始に進行性困難を認め、排尿の勢いの減少、夜間何度もトイレに行くこと、排尿後の滴りなどを経験する。これらの徴候すべては、良性前立腺肥大症の診断と一致している。

徴候的前立腺肥大症は、通常、泌尿器科医による評価と可能な外科的補正を必要とする。

この疾患の診断を受けていない患者は、尿閉、前立腺炎(下記参照)、尿路感染症、前立腺癌(下記参照)になる可能性がある。

 

良性前立腺肥大症の治療は、患者に排尿困難、あるいは再発性感染が見られる場合、前立腺を除去する外科手術を必要とする。また、薬物投与も前立腺肥大症の非外科的管理に役立つ。前立腺肥大症の治療のための一般的に認められている物理療法を下記にまとめてみる。

 

前立腺肥大症(BPH)のための物理療法

 

1. 経尿道的前立腺切除術(TURP):TURPは、望遠鏡式刀により前立腺の妨げている部分を除去することである。TURPは、切開することなく、男性尿道からの通過に適応させた特別な機器を通して実施される。TURPは、全身麻酔薬を必要とし、手術時間は30-60分ほどかかる。手術後24-48時間はフォーレーカテーテルを置いておくので、入院期間は1-3日である。

2. 前立腺の経尿道的切開術(TUIP):これは、症状の緩和と流速の改善の両面から見た結果に最も一致するTURPの代替法である。この処置の基本的な目的は、前立腺内を通る適切な流れを可能にしておくために前立腺組織の最少量を切除することである。これは、前立腺の全長に沿って、単純な切り込み、すなわち切開を行う。前立腺の周りには円形の筋線維が走っているため、TUIPは膀胱頸の開口を可能にし、尿を流せるようにする。TUIPは、特により小さな前立腺に有効で、手術後に射精障害が発生する率が低い。入院期間はTURPの場合よりも一般的に短い。

 

3. バルーン拡大法:数年来、バルーン拡大法は前立腺外科手術の代替法として用いられてきた。これは、冠動脈疾患の治療の中で用いられる心臓の血管形成術に類似している。バルーン-チップ付きカテーテルを尿道に挿入し、それから前立腺経路内の適所で膨らませる。これは、尿の流れを可能にする経路を伸ばす。前立腺組織は除去しないので、生検に利用できなる組織はない(生検が必要な場合もある)。この処置は、より大きな前立腺を持つ患者には効果的でない。尿の徴候の再発は、一般にバルーン拡大の2年後に見られる。この処置は時間が経過するとは効力を失うようである。

 

4. 経尿道的超音波誘導前立腺切除術(TULIP):レーザーは高エネルギーの光源であり、70年代初期からメスの代替え法として使用されている。TULIP処置はいまだに実験的であると見なされており、1990年後期から臨床試験の対象となっている。この処置は、超音波の誘導により、前立腺経路にレーザー-チップを付けたカテーテルを挿入することを含む。レーザーは加熱され、前立腺の妨げている部分をを破壊する。この処置の利点は、最少の出血量、入院期間の短縮、手術時間の短縮、射精障害に至りうる術後の瘢痕化の発生率減少である。TULIPは非常に大きな前立腺を呈する患者には有益ではない。なぜならば、組織が除去されないので、生検が実施できず、前立腺癌の診断が困難になる。

 

5. アンドロゲン抑制:新薬のプロスカーやフィナステライドは、血中のテストステロンのレベルに影響を及ぼすことなく、前立腺のテストステロンの作用を抑制する。これにより、患者は、特にフィナステライドが前立腺に作用する間、正常のリビドーを持つことができる。過去の研究では、70%の患者が4-12ヶ月の療法で前立腺の大きさが減少し、尿の症状が改善されたと報告している。

 

6. 平滑筋弛緩剤:前立腺経路の周りを囲む平滑筋は、特異的な薬物投与により弛緩する。これらの薬剤の大半の薬は、ハイトリンとミニプレスを含む抗血圧薬である。これらの薬物投与は、前立腺の成長を止めないが、時間が経過すると、効力を失う場合がある。患者によっては、血圧を下げるこの療法の副作用でいくらかの症状(意識の朦朧、眩暈、失神)がある。

 

 

* PROSTATE CANCER *

     前立腺癌*

 

前立腺癌は、男性において二番目に多い癌である(肺癌が第一位である)。

前立腺癌は高齢者に多く見られ、診断時の平均年齢は73歳である。前立腺癌の原因は不明であるが、いくつかの素因が特定されている。研究によれば、50歳以上のほとんどの男性は少なくともある種の前立腺癌の顕微鏡的な証拠が認められるという。この疾患の家族歴は、前立腺癌のリスクを増加しうる。高脂肪の食餌がリスクを増加させることに関心が高まっている。

通常、初期の前立腺癌に関連する徴候はない。このため、40歳を過ぎたら毎年、デジタル式直腸内診法(医師は前立腺とすべての小結節を感じることができる)を受けることが重要である。

最近、前立腺特異抗原(PSA)として知られる血液検査が、初期疾患の主要な指標として用いられている。

もう一つの有益な血液検査は酸性ホスファターゼである。この酵素の血中レベルは、前立腺外、特に骨に広がった(転移)癌患者の場合、上昇している。このため、治療中の前立腺癌患者の酸性ホスファターゼ・レベルはよくモニターされる。

 

PSAおよび酸性ホスファターゼ血液検査のレベルの高い患者には、前立腺の超音波検査が実施される。超音波は、デジタル式直腸内診によって検知されてない癌を明らかにすることができる。現在、40歳以上の人は毎年、デジタル式直腸内診を受けることが推奨されている(大腸癌の発見のため)。

 

より進行した前立腺癌は、上記の良性前立腺肥大の症状によく似た、排尿困難が見られる。。前立腺癌のいくらかの症例では、尿検査が尿中の(顕微鏡的な)血液の存在を示している。

 

限局性前立腺癌は、前立腺の除去もしくは患部の放射線療法によって治療される。進行した前立腺癌は、骨に広がるという性質のため、全身性治療を必要とする。ホルモン療法は有効である。大部分の前立腺癌はテストステロン(睾丸によって産生される男性ホルモン)に反応して成長する。このために、このホルモンの産生を減少させる治療が推奨される。これらは、LHRH拮抗薬(ルプロンやゾラデックス)の投与、あるいは睾丸の外科的除去が含まれる

 

ホルモン療法が失敗したら、進行した症例では化学療法が用いられる。うまく局所化した疾患の場合、患者は正常な余命をもつ見込みがある。この疾患の評価の専門家は泌尿器科医である。

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