年賀状

これまで長い間、芸術作品の署名として、脇役であリ続けた篆刻を、何とかして主役にしたい。そう考えたわたしが、まず目を付けたのが年賀状だった。
わたしは書もやるので、よく「年賀状を毛筆で書きたいが、何年かかりますか?」と聞かれる。そんな時は「1年は1年分、2年は2年分、努力の分だけ上手に書けるようになりますよ」と答えてきた。
一方、篆刻は少々未熟でも、それが味になって、それなりに面白くできたりするものだ。篆刻をやってみたいという人は、絵手紙や水墨画などに自作の印を押したいという場合が多いが、「篆刻での年賀状作りも楽しいよ」と、勧めてきた。
しかし、はがきの真ん中に大きめの印をボンと押しただけでは、何やら物足リないし、送られた相手は大概「何て彫ってあるのか、どこがいいのか教えて?」とくる。
もっと自由に、分かりやすくできないだろうか。そこで約20年前、篆刻教室の生徒たちに「篆刻を主役にして、楽しく、美しい年賀状を作ろう」と呼び掛けてみた。
その年のえとや、おめでたい言葉を彫り、それぞれを集合体にしたり、組み合わせたり。もちろん、はがきの紙も吟味して、カラフルに作り上げる。篆刻というと朱色のイメージが強いかもしれないが、印泥(印肉)は8色セットなど、たくさんの色が市販されている。仕上げに金箔や銀箔などを使うと、お正月らしい雰囲気も出る。
最初は「篆刻が主役」と聞いて、キョトンとしていた生徒たちだったが、気が付くと、みんな和気あいあいとデザインを考えたり、彫ったりしながら、楽しんでいる。
毎年、年末にはみんなの作品を展示した「篆刻でつくる年賀状展」を金沢市で開催。2009年で21回目となった。誰にとっても身近な年賀状をきっかけに、少しずつ、篆刻の楽しさが伝わっているのを実感している。
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