漢字の成り立ち
中国最古の歴史書「史記」に記載されにいる古代殷王朝。著した司馬遷はどのようにして王朝の系讃を知ったのか。孔子が自らの理想を古代に託して作り上げた絵空事にすぎないと、長い間その実在すら疑われていた。
ところが、十九世紀の末、偶然の出来事から清王朝の高官の手によって大発見がなされた。高官がマラリアの治療のために薬店から買い求めた漢方薬の断片に文字が刻まれており、それが中国最古の文字ではないかということになったのである。
このきっかけが、一八九九年、亀甲や獣骨に刻まれた三千三百年前の殷の文字の大量発見をもたらすこととなった。「甲骨文字」と呼ばれるこの古代文字こそ今われわれが使っている漢字の原点である。そして、伝説の彼方に眠っていた殷王朝の実態が次第に明らかにされた。
・数カ月で解読
甲骨文字は公表されるやいなや数カ月という驚嘆すべき速度で解読がなされた。そのことは、漢字が悠久の時を生きてきたにもかかわらず、基本的な姿が大きく変化することなく脈々とその生命を維持してきたことを示している。
甲骨文字は、亀の甲羅あるいは牛の肩甲骨にするどい刃物のようなもので刻まれている。そして形は、物を視覚的にとらえた象形文字、具体的な形をもたない抽象的な事がらを、符号を加えて線で表わした指事文字と、それらを組み合わせてできな会意文字などである。
・王と神は同格
甲骨文字の出土は現在の河南省安陽市のあたりであった。甲骨文字が解読されたことにより、殷王朝は王を中心にして城壁で囲まれた都市国軍であったことが明らかになった。
王は人間の中で最も神に近い存在であるという神聖政治を行っていた。亀甲や獣骨に、神に問う文を刻み、それを火であぶってヒビ割れをつくり、ヒビの方向で吉凶を占う。占いの結果は王と神が同格であることを証明ずる手続きであった。占いの内容は、農耕、狩猟、軍事、政治、祭祀など多岐にわたっていた。
甲骨文字は神秘的で美しい。その線には古代人の精神が凝縮されている。その形の中に古代社会の人々の意識や生命万をも探ることができる。人間の自然に対する畏敬の念や神への祈りが宿っている。
甲骨文字に秘められた古代人の魂にほんの少しでも触れることで、現代人が失いかけているものを取り戻す糸口が見つかればよいと、小講演の活動を行っている。
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