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Les Offrandes oubliées
Méditation Symphonique pour orchestre

忘れられた捧げもの
交響的瞑想



【作曲年】

1930年 (21歳時) シャンパーニュ地方、オーブ県のフリュニー (Fuligny, Aube) にて(「わが音楽語法」の記載による)
1930年8月30日にCharles Tournemireにあてた手紙には「ちょうど交響詩を書き終えたところ」との記述がある。

1930年は彼がコンセルヴァトワールを卒業した年にあたる。


【楽器編成】

フルート3、オーボエ2、イングリッシュ・ホルン、クラリネット、バス・クラリネット、ファゴット3、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ、ティンパニ(3ドラム)、大太鼓、シンバル、トライアングル、弦楽器(5部)

作曲者自身によるピアノソロ用の編曲版もある。


【献呈】

明示されていない。


【初演】

日時:1931年2月19日
会場:パリ・シャンゼリゼ劇場 Théâtre des Champs-Élysées
指揮:ヴァルター・ストララム Walther Straram
管弦楽:ストララム管弦楽団 Orchestre Straram

 当時メシアンはまだ無名に近く、管弦楽曲が大勢の聴衆の前で演奏されるのは初めてであった。この演奏会の模様はLe Courrier musical誌およびLe Ménestrel誌に評論が掲載されているが、好評をもって迎えられたようだ。この成功により、メシアンの名がパリの楽壇に広まることになった。
 この後、同年9月にメシアンはサン・トリニテ教会のオルガニストに任命された。「忘れられた捧げもの」の成功がこのポストへの就任を後押ししたと推察される。

 尚、ピアノ版の初演についてははっきりとしたデータが残っていない。


【出版】

1931年11月
Durand & Cie より
(ピアノ版はオーケストラ版よりも早く、1931年2月に出版された)


【演奏時間】

約11分~12分半(各種CDの演奏時間による)


【メシアン自身による序文】

 スコアにはメシアン自身により、以下のような序文が添えられている。

        Les bras étendus, triste jusqu'a la mort,
sur l'arbre de la Croix vous répandez votre sang.
Vous nous aimez, doux Jésus, nous l'avions oublié.

        Poussés par la folie et le dard du serpent,
dans une course haletante, effrénée, sans relâche,
nous descendions dans le péché comme dans un tombeau.

        Voici la table pure, la source de charité,
le banquet du pauvre, voici la Pitié adorable offrant
le pain de la Vie et de l'Amour.
Vous nous aimes, doux Jésus, nous l'avions oublié.


死に向かい悲しげに、十字架の木の上に腕は伸び、あなたは血を流す。
あなたは私たちを愛し給う、優しいイエスよ、私たちはそのことを忘れてしまっていた。

蛇の毒牙と狂気に追いたてられ、息を切らして休むことなくひたすら走り、
あたかも墓に向かって行くかのように私たちは罪に向かって堕ちていった。

ここには清らかな食卓、慈悲の泉、貧者の宴がある、また生命と愛のパンを供えたあがめるべき慈愛がある。
あなたは私たちを愛し給う、優しいイエスよ、私たちはそのことを忘れてしまっていた。

 この序文の第1節、第2節、第3節はそれぞれ曲の第1部、第2部、第3部に相当する。


【解説】

 <我が身体は汝のために与えられ、我が血は汝のために流される>―「捧げもの」とは我々のために血を流したイエスの十字架であり、それを忘れて罪を犯してしまう我々の姿、そしてそれを忘れないための聖体の秘蹟が順に描かれる。

 作品は対照的な3部から成る。スコアには記されていないが、メシアンは後にそれぞれの部が「十字架 La Croix」「罪Le péché」「聖体L'Eucharistie」であるとはっきり記している(1936年3月の「若きフランス」旗揚げ演奏会のプログラムに既にこの名称が記されている)。この「十字架」「罪」「聖体」はそれぞれメシアン自身の序文(上記)の第1節、第2節、第3節に相当する。

 書法的にはドビュッシーの影響下にスタートした初期の作風である。調号はついてはいるが、既に「移調の限られた旋法 (Les modes à transpositions limitées, MTL)」が用いられており、その中でも第2番(MTL II)が支配的である。リズムの面では後の複雑さに比べれば非常にシンプルであるが、不均等リズムの使用など後の彼の書法の萌芽を見出すことはできる。

第1部 「十字架 La Croix」

非常に遅く/痛ましく、深い悲しみとともに   Très lent, douloureux, profondément triste


 「弦楽器群の呻き声。その苦しげなネウマは戦慄を不平等の持続グループに区分し、灰色と薄紫の長い呻き声に区切る」(メシアン)

 非常に緩やかなテンポで始まり、弱音器をつけた弦楽器群が息の長い旋律を歌う。楽譜には「苦しげに、深く悲しく」と記されている。「不平等の持続グループ」と記されている通り、各小節が8分の10―11―9―7拍子…と不均等に分割されている(譜例1)。旋律は移調の限られた旋法第2番(MTL II)で歌われるが、若干の旋法外音も混じっている。例えば、第1小節目では伴奏にEとGの旋法外音を用いてホ短調の3和音を響かせることで、MTLと伝統的な調性とが融合されている。

[譜例 1]   MTL II3移調の限られた旋法第2番 第3移調形(以下同様)。赤矢印は旋法外音を示す。




第2部 「罪 Le péché」

速く/冷酷で、絶望的に、喘ぐように   Vif, féroce, désespéré, haletant


 「『罪』はここで殆ど<メカニックな>速さにおける<深淵への疾走>として示される。私たちはそこに、大きなアクセントと語尾、グリッサンドの和音の響き、トランペットの鋭い叫び声などを見出す」(メシアン)

 第1部とは対照的に、「激しく、絶望して、息を切らして」と指示された急速なテンポでクライマックスが形成される。金管楽器、特にホルンとトランペットの活躍が印象的である。

[譜例 2]




第3部 「聖体 L'Eucharistie」

きわめて遅く/大いなる哀れみと大いなる愛とともに   Extrêmement lent, avec une grande pitié et un grand amour


 「ヴァイオリンの長い緩やかなフレーズが、ppの弦楽器群の絨毯の上に、弱音器を付けたソリストの光の中で、<遠いステンドグラスのように>赤色、金色、青色に輝きながら立ち昇ってくる」(メシアン)

 「大いなる慈愛と大いなる愛と共に」の指定の下、管楽器は鳴りを潜め、弦楽器群が再び非常にゆっくりとしたフレーズを演奏する。第2ヴァイオリンは4人のソリストの声部、ヴィオラは5人のソリストの声部に分割されている。終始ppで奏され、最後はppppの響きで静かに消え去ってゆく。曲を閉じる和音はMTL II2の中から選ばれた4音、E-Gis-H-Cisであるが、これは6度を添加したホ長調の3和音である。この和音(6度添加の長3和音)は彼が晩年に至るまで好んで用いた。

[譜例 3]




【主要ディスク】

マリウス・コンスタン指揮 フランス放送フィルハーモニー管弦楽団(1971年 エラート)
チョン・ミュンフン指揮 パリ・バスティーユ管弦楽団(1994年 ドイツ・グラモフォン)

[ピアノ版]
ホーコン・アウスタベ(1999年 ナクソス)

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