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II. Les modes à transpositions limitées

移調の限られた旋法



a) 種々の旋法について

《西洋の旋法》



a-1) 古代ギリシャの旋法


 旋法・音階が歴史的にいつ頃誕生したのかは不明だが、現在よく知られているもっとも古い旋法は古代ギリシャのものである。

 彼らはまず、完全4度(周波数比4:3)離れた2音を基準とした*1。そして、こ の間に更に2つの音を設けた。このような4つの音の並びをテトラコードと呼ぶ。このテトラコードは高い音から低い音へと読まれた(今日の通常の音階とは 逆)。間の2音の高さは全音音程(周波数比9:8)を基準に決められた。例えば、高い音ほうの音を基準に、第2音をそれより全音下、第3音を更に全音下、 というように規定したとする。すると第3音と第4音の間は全音音程よりも狭い音程(今日の半音音程よりも少し狭い程度)になる。この音程はレイムマ(残 り、の意)と呼ばれた。4つの音の間のどこにレイムマが位置するかによって、テトラコードには3種類が存在しうる。

第1音―(全音)―第2音―(全音)―第3音―(レイムマ)―第4音   例えば近似的に E D C H           ※ 平均律ではないので、音程は若干異なります
第1音―(全音)―第2音―(レイムマ)―第3音―(全音)―第4音   例えば近似的に E D Cis H
第1音―(レイムマ)―第2音―(全音)―第3音―(全音)―第4音   例えば近似的に E Dis Cis H

 後にこれらのテトラコードを2つ合わせた音階が誕生した。例えば
E D C H
 というテトラコードの下に、全音離してもうひとつテトラコードを置いてみると*2
E D C H A G F E
 という音階が得られる。このようなテトラコードを2つ並べた音階では最終音は最初の音のちょうど1オクターヴ下になる。結局、1オクターヴを7つの音で 分割したような音階になり、今日のピアノの白鍵の並びに近いものになる。

 このようにして作られた旋法のうち、代表的なものは下の4つである。

ドリア旋法E--D--C-H--A--G--F-E
フリギア旋法D--C-H--A--G--F-E--D
リディア旋法C-H--A--G--F-E--D--C
ミクソリディア旋法H--A--G--F-E--D--C-H

これらにはそれぞれ5度下に移調した形が存在し、「ヒポ(ヒュポ)~」と呼ばれた。

ヒポドリア旋法A--G--F-E--D--C-H--A
ヒポフリギア旋法G--F-E--D--C-H--A--G
ヒポリディア旋法F-E--D--C-H--A--G--F
ヒポミクソリディア旋法E--D--C-H--A--G--F-E

 これらはダイアトニック(全音階)の音階であるが、古代ギリシャにはこの他にもクロマティック(半音階)とエンハーモニック(半音以下の音程)の音階があった。クロマ ティックの音階ではテトラコードの各音の間の音程は「半音、半音、短3度」であり、エンハーモニックの音階では「1/4音、1/4音、2全音」になる。


注)
 *1: 他の民族も含め、殆どの音階は完全4度(または5度)か8度を基礎として作られている。
 *2: このように第1テトラコードの第4音の更に全音下に第2テトラコードの第1音を置いたものを分離型テトラコードと呼ぶ。これに対し、第1テトラコードの第4音と第2テトラコードの第1音を共有したものは結合型テトラコードと呼ばれる。


a-2) 教会旋法(今日の長旋法、短旋法を含む)


 教会旋法は聖歌を歌うために中世ヨーロッパで発達した旋法であり、基本的には4種、それぞれに正格と4度低い変格があり合計8種存在する。これらの旋法 には古代ギリシャの旋法からとった名前がつけられているが、全く別の旋法であり、同名のギリシャ旋法とは関係がない。

ドリア旋法
Dorian mode
(第1正格旋法)
D--E-F--G--A--H-C--D ヒポドリア旋法
Hypodorian mode
(第1変格旋法)
A--H-C--D--E-F--G--A
フリギア旋法
Phrygian mode
(第2正格旋法)
E-F--G--A--H-C--D--E ヒポフリギア旋法
Hypophrygian mode
(第2変格旋法)
H-C--D--E-F--G--A--H
リディア旋法
Lydian mode
(第3正格旋法)
F--G--A--H-C--D--E-F ヒポリディア旋法
Hypolydian mode
(第3変格旋法)
C--D--E-F--G--A--H-C
ミクソリディア旋法
Mixolydian mode
(第4正格旋法)
G--A--H-C--D--E-F--G ヒポミクソリディア旋法
Hypomixolydian mode
(第4変格旋法)
D--E-F--G--A--H-C--D

     ※赤字はフィナリス(終始音)、青字はドミナント(支配音)を表す。

 この体系に、中世後半(16世紀)になって次の2種(変格を入れると4種)の旋法が加えられた。

エオリア旋法
Aeolian mode
(第5正格旋法)
A--H-C--D--E-F--G--A ヒポエオリア旋法
Hypoaeolian mode
(第5変格旋法)
E-F--G--A--H-C--D--E
イオニア旋法
Ionian mode
(第6正格旋法)
C--D--E-F--G--A--H-C ヒポイオニア旋法
Hypoionian mode
(第6変格旋法)
G--A--H-C--D--E-F--G

 この2つがそれぞれ現在の短旋法、長旋法となった。これらは言う間でもなく、今日あらゆるジャンルの「調性音楽」で最も広く用いられているものである。
 数多くの教会旋法からなぜこの2つだけが生き残って圧倒的な優位を占めるようになったのだろうか。有力な説明として今日唱えられているのは「主音、下属音、属音の上に三和音を作ると、エオリア旋法ではすべて短和音に、イオニア旋法ではすべて長和音になると」いうものである。単旋律から和声音楽へ、という時代の変化に適合する条件を満たした訳だ。これだけで決定的な説明となる訳ではないが、大きな理由ではあったと考えられる。


a-3) スコットランドの旋法


 ペンタトニック(5音音階)は西洋・東洋を問わず様々な地域で用いられた。スコットランドもその一つである。

C--D--E---G--A---C

 これは、最も一般的な5音音階であり、後述する中国の呂旋法とほぼ同じである。

 使用例:蛍の光


a-4) ハンガリーの旋法


 古くは5音音階が用いられていたようであるが、ハンガリー独特の旋法として、短音階の下属音と導音を半音ずつ上げたこのような旋法がある。別名「ジプシー音階」とも呼ばれるが、「ジプシー音階」と言う場合には第7音が下記より半音低いスケールを指すこともある。。

A--H-C---Dis-E-F---Gis-A

 使用例:サラサーテ 「ツィゴイネルワイゼン」


a-5) その他の旋法


・ 全音音階

各音の間が全音程開いているもので、次の2つがある。

C--D--E--Fis--Gis--Ais--C
Cis--Dis--F--G--A--H--Cis

オリジナルに考案したのが誰だったのかはわからないが、ドビュッシーが積極的に用いた事でよく知られるようになった。
この音階は移調回数が制限されている。すなわち、更に半音あげると

D--E--Fis--Gis--Ais--C--D

となり、最初の音階と同じ音を与える。
それ故、この音階はメシアンの「移調の限られた旋法」の第1番ともなった。

・ 半音階

12音全てを順に並べたもの。移調は不可能。

・ スカーラ・エニグマーティカ Scala Enigmatica

イタリア語で「謎の音階」の意味。ヴェルディが「アヴェ・マリア」(1896)の中で用いた。

C-Des---E--Fis--Gis--Ais-H-C


 更に、12音以外の微分音まで考慮すると、考えられる旋法の数は爆発的に増加する。



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