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遺産分割協議書の作成までの手続き

 遺言書がない場合や、遺言書があっても遺産の一部しか指定していない場合
には、相続人全員(他に包括受遺者等も)の話合いで分割方法を決めます。
分割の話合いの結果、各相続人の取得分がたとえ法定相続分と異なっていたと
しても、それは有効です。ただし、その場合は、本人の自由意志によるものである
ことが必要です。
民法は、遺産分割の一般的基準として遺産の分割は、遺産に属する物又は
権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況
その他一切の事情を考慮してこれをすると定めています。

死亡保険金は遺産分割協議の対象となる相続財産かどうか
→最高裁判例  平成16年10月29日


遺産分割協議

 遺産分割協議は相続人全員でしなければならず、1人でも欠けた協議は無
効となります。
ただ、相続人が遠方に住んでいるなどで一堂に会してすることが難しい場合は
電話、手紙等で話し合いを進めて、協議が成立したら、分割協議書への署名押
印は郵便等で持ち回りの方法をとってもかまいません。

相続人の中に未成年者がいる場合

 遺産分割協議を行う際に、相続人の中に未成年がいるときは、未成年者は
法律行為に関しては無能力者であるため、法定代理人は代理して分割協議を
行う必要があります。父親が死亡し、その相続人が母と未成年の子のであると
き、未成年者の法定代理人は、通常親権者である母ですが、母と子は遺産の
分割について利害関係ができてしまうことになるため、子の代理人として第三
者の特別代理人の選任が必要となります。
未成年者の子が複数いるときは、特別代理人もその複数の人数が必要になり
ます。
特別代理人の選任手続は、家庭裁判所への申し立てをすることになります。

相続人の中に認知症・痴呆等の方がいる場合
 相続人が認知症などにより判断能力が無い場合、家庭裁判所に後見開始の
審判の申立を行い、本人のために成年後見人を選任し、成年後見人が本人を
代理して相続手続きに参加します。(状況により保佐・補助の場合有り)
 なお、後見人等には身内の人間がなるケースが多いですが、同じ相続人とな
る場合は利害が対立する関係となり、基本的に後見人にはなれません。
もし、既に後見人に就任している人が同じ相続人となる場合は上の未成年者の
ケースと同様で特別代理人の選任が必要となります。

 →成年後見制度と手続き

相続人の中に行方不明者がいる場合

 相続人の中に音信不通で所在不明あったり、生死不明である場合には家庭
裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法と、失踪宣告の申し立て
をする方法が考えられます。

 なお、単純に親族としての交流がないため、住所等連絡先が分からないという
場合は、戸籍・住民票等より所在が判明することは多いです。
詳細については専門家等にお問い合せ下さい。

 不在者財産管理人については、不在者の財産を維持・管理する権限を有す
るのみですが、家庭裁判所の許可を得ることで不在者に代わって遺産分割協議
に参加したり、不動産等の売却を行うことが出来ます。
なお、不在者財産管理人と類似の名称の「相続財産管理人」がありますが
こちらは相続人がいない(不存在)場合や相続人が全員、相続放棄手続きを行い、
結果的に相続する人がいない場合に被相続人の相続財産を管理するために
選任されます。

  不在者財産管理人選任 (裁判所のページ)

 相続人の生死が7年間不明のときには、親族等利害関係人は家庭裁判所
に申し立てて、失踪宣告の審判をしてもらうことができます。 審判があると、失
踪した人は、不明になってから7年経過したときに死亡したものとみなされます。
この死亡したとみなされた者の相続人を加えて遺産分割協議をすることとなり
ます。

 被相続人の亡くなる前に死亡したとみなされれば、代襲相続人と遺産分割
の協議をすることになります。あるいは被相続人の亡くなった後に死亡したも
のとみなされる場合は、失踪した人がいったん相続した後に、失踪した人につ
いて相続が発生することになります。

遺産分割協議が成立しなかった場合

 相続人間の協議が調わないときや、初めから協議に参加しない者がいると
きは、家庭裁判所に遺産の分割を申し立てることができます。家庭裁判所は、
普通これを調停手続で行い、調停が成立しなければ、審判手続きで行うこと
になります。

参考ページ
  遺産分割(遺産分割調停)裁判所のページ

  遺産分割の調停の申立書(記載例書式)裁判所のページ

※遺言が無く、遺産分割協議が成立していない時点で、被相続人の銀行預金に
ついて法定相続人は自己の相続分の支払を請求できるか。


※遺産分割協議が成立しないと困ること(デメリット)も出てくる可能性があります。
   (特に相続税を納めなければならない方の場合)


遺産の分け方

現物分割
 遺産の中の個々の財産を相続人に配分する方法で、遺産分割の原則的な
方法です。
 ある土地と家屋は配偶者に、株式は長男に、預金は次男にというように具体
的に決めていく方法です。

※遺産を長男など一人の相続人の名義にするケースは多いですが遺産を取得
 (相続)しない他の相続人のいわゆる相続放棄手続きとは
事実上の相続放棄 と 民法938条の相続放棄(家庭裁判所への申述)

換価分割
 遺産の全部または一部をを売却して、その売却代金を各相続人で分割する方
法です。
各相続人が取得を希望しない相続財産があるとき、相続税の納税資金とする場
合などに換価分割を選択されます
遺産の売却の場合には譲渡所得税等に注意を要します。

※参考
  未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したこと
による更正の請求、修正申告等
 (国税庁 質疑応答より)
土地の譲渡所得税と遺産分割


代償分割
 遺産を相続した相続人が遺産を取得した代償として他の相続人に対して金
銭その他資産を払う方法です。
 遺産のほとんどが事業用資産で後継者である相続人が事業の継続のため
に大部分の遺産を取得しなければならない場合に、他の相続人はその後継
者から代償として金銭その他資産を与えられるというような場合です。
ただ、金銭等を負担する相続人には支払能力が要求されまし、金銭以外の資
産を与えた場合はは譲渡所得税等に注意を要します。
この場合、他の相続人が現金を得た場合それは単に代償として現金を得たわけ
ですので譲渡所得税はかかりません。

※生命保険を利用して遺産分割資金に備えるなど、相続税がかからなくても
 生前の相続対策が必要なケースもあるでしょう。

共有分割
 遺産の全部または一部を共同相続人間で共有とする方法です。
将来その土地の有効活用を考えた場合や、担保を設定したり、売却したいとき
に他の共有者の同意が得られず、トラブルになるケースもあり得ます。

 遺産を分ける主な方法としては、以上の方法があり、それらの方法を適当に
組み合わせて各相続人の事情を考慮しつつ、出来るだけ公平になるように分
割内容を決めます。

遺産分割協議で借金など債務の負担(負債)について分割できるか?
  住宅ローンなどでは、多くは団体信用生命保険に加入しているケースだと思います
が、借り主が死亡した場合、金融機関が保険会社からローン残高を保険金として受取り、
相続人は残債務を免れることになります。

 団体信用生命保険に加入していない場合、例えば旧住宅金融公庫の場合は加入は
任意だったわけですが、未加入で、借り主が死亡した場合、法律上は、相続人全員が
相続分に応じて負担することになります。
実際には、遺産分割協議により取得した人がローンを継続して支払うか、ローン残を一括
して返済するかになると思いますが、継続して支払う場合、遺産分割により取得する者が
高齢者の場合は新たなローン申込と同一視されることがあり、すんなり金融機関に承諾
されなかったり、新たに連帯債務者を求められたりする場合もあるため注意が必要です。

 なお、一般の借金について、事業経営していた場合など、多額の借金が残ったという
ケースもありますが、団信未加入のケースと同様、相続人全員が相続分に応じて負担する
ことになります。
遺産分割協議により、会社経営を引き継ぐ者が借金をすべて負担すると相続人同士で決める
ことは自由ですが、債権者が承諾しない限り、債権者に対して対抗することはできません。

 なお、相続税を納めなければならないような相続の場合、債務控除の関係で相続税基本
通達によると、債務の承継について、負担する金額を決めていないときは、相続分に応じて
負担するとされております。
したがって、借金については、債権者の承諾の有無に関係なく、遺産分割協議自体をしなか
ったり、債務負担の割合取り決めをしなかったり、あるいは遺言書を作成する場合での債務
の処理について記載がなかったりすると、相続税の納税額に違いが出てくる可能性はあります。


遺産分割協議書の作成

 相続人全員で話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は、民法上、作成義務はありませんが後日の紛争防止の為
のほかに不動産などの名義変更や相続税申告の際にも必要となってきます。

 遺産分割協議書の書式については特に決まりはありませんが(横書きでも縦
書きでも、協議書の用紙サイズ等)、誰がどの遺産を取得したかを、具体的に記載
する必要があります。
たとえば、不動産の場合、管轄の法務局で登記簿謄本(または全部事項証明書)
を取り、土地だと所在、地番、地目、地積を謄本の記載通りに書きます。
銀行預金の場合は、銀行名、支店名、預金種別、名義人名、口座番号、金額など。
有価証券は、銘柄、証券番号、数量など第三者から見てどの遺産なのか分かるよう
に記載します。

 遺産分割協議書のタイトルですが「遺産分割協議書」と記載します。
例えば、相続人である長男が遺産分割案をとりまとめ、各相続人が長男の案に同意
したという場合も、実質的に全員の意見の一致という場面で協議が成立したとみなし
てよいわけですが、この場合も「遺産分割協議書」と記載して下さい。
 次に「被相続人の特定」です。相続開始の場所(最後の本人の住所)、相続開始の日
(死亡日付)を記載することで特定します。
 それと、遺産分割協議に参加した相続人全員の特定です。遺産分割協議の結果、
遺産を取得しない者も含みます。

 ※  被相続人・相続人の特定に必要な証明書類について
   被相続人の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍・戸籍の附票等の収集

遺産分割協議書の書式をというご希望が多いですがとにかく遺産・被相続人・相続人を
特定できるように具体的に記載することが必要です。
銀行預金等も同様に具体的に記載します。

そして、相続人全員が署名の上、実印を押し、日付を記載して各相続人の印鑑
証明書を添付します。
この印鑑証明書は3ヶ月を過ぎてしまってもかまいません。
この署名は遺産分割協議の結果、遺産を取得しない者も署名押印する必要があります。
ただし、家庭裁判所で相続放棄の手続きをした者は最初から相続人ではないことに
なるので署名押印は不要です。
署名するときの住所は印鑑証明書(住民票)に記載されているとおりに記載します。
 協議書が複数枚になるときは用紙間に相続人全員の契印が必要です。
 協議の結果、遺産を取得しないことになった者も署名押印、印鑑証明書の添付は必要
です。

特別受益証明書(相続分不存在証明書・相続分がないことの証明書)について


遺産分割協議書の方式
 遺産分割協議書は手続き上の便宜面を考えて、不動産用、銀行用など複数に分
けてもよいですし、遺産が多数に及ぶ場合は、別途遺産目録として作成することでも
かまいません。遺産目録(相続財産目録)とは被相続人の遺産の一覧表のことです。
この目録の書式というものは特にに決まっておりません。大事なことは、遺産分割協議
書に直接記載する場合と同様に遺産を特定できるように記載することです。

 相続人がそれぞれ、遠方に住んでいて一堂に会する機会を持てない場合などは
同一内容を記載した書面を相続人分作成して、それを郵送して、それぞれの相続人に
署名押印してもらい、最後に相続人代表者がその書面を集め、それを一つの遺産分割
協議書とすることもできます。

 遺産分割協議書は、原則として、相続人の数だけは作成し、相続人各人が印鑑証
明書を添付し、協議書原本を保管します。
ただ、遺産分割協議書の原本は遺産を取得する者の分だけ作成し、後は写しということでも
構いません。

相続放棄した人は?
なお、家庭裁判所に相続放棄の申述した者は最初から相続人でないことになります
ので遺産分割協議への参加は無用です。
 ただ、放棄という場合でも、事実上の相続放棄の場合は遺産分割協議に参加すること
になります。
 ※相続放棄については相続放棄・限定承認 の部分をご覧下さい。


海外在留者の場合の遺産分割協議書作成手続きは
それから、国際化による影響でしょうか。長期間、海外赴任だったり、国際結婚等で海外に
在留されている方が増えていますが、この場合(日本に住民登録がない場合)は印鑑
証明書に代えて、領事館等で署名証明(サイン証明)の交付を受けることになります。
遺産を取得する場合は在留証明が住所を証する書面となります。
なお、遺産分割協議書などへの署名は領事館等で行いますので、ご自宅で先に署名しない
でください。

→参考  外務省 届出・証明
       各種証明・申請手続きガイドをご覧下さい。
       詳しくは、事前に証明を受ける予定の領事館等にお問い合せ下さい。

 ※被相続人が外国人である場合
 法の適用に関する通則法36条により、相続は被相続人の本国法によることと
されていますから、被相続人の本国法の規定による相続人及び相続分が適用
されることになります。


遺言書があるとは思わずに遺産分割(名義変更等)を行ってしまったが
後になって遺言書が見つかった場合


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