滲出性中耳炎

 急性中耳炎が完治しないうちに治療が中止されると、
 起炎菌は弱まり鼻咽頭の急性粘膜腫脹は消退しますが、中耳腔の粘膜腫脹はそのまま残り
 耳管は開通しないままで耳管の排泄が障害され、その後も中耳腔の粘膜から滲出液の分泌が継続し
 腔内に貯留し、滲出性中耳炎に移行していきます。
 滲出性中耳炎は幼児と老人に多い疾患ですが、幼小児が90%を占め、4〜5歳にピークがあります。
 幼小児は急性中耳炎に反復罹患しやすく(急性中耳炎の項参照)、
 したがって滲出性中耳炎の遷延化、難治化につながります。
 成人、とくに老人の場合は耳管の閉鎖が弱く、機能が低下している(耳管開放症)が一因と言われ、
 これに『鼻すすり』が癖になって続くと、くり返し中耳腔が陰圧になり、鼓膜が陥凹して
 中耳腔に液がたまり滲出性中耳炎となっていきます。
 また成人の場合、上咽頭の腫瘍が耳管周囲に浸潤し、
 中耳に貯留液を生ずることが稀にありますので注意が必要です。
耳閉感自声強調(自分の声がひびく)などの症状を伴いますが、
急性中耳炎と異なり、耳痛はないかあっても軽度で
難聴も軽度〜中等度であるため、幼児では発見が遅くなり
知らないうちに音を通じた学習が少なくなるため、
伸び盛りの知的な成長が遅れてしまう恐れがあります。
幼小児では次のような症状に注意してください
2〜3才  言葉の発育が遅い
       おこりっぽく、よく泣く
3〜6才  後ろから呼んでも返事をしない
       大きな声でしゃべる
       テレビの音を大きくする
       言ったことを聞き返す
6才以上  落ち着きがない 積極性がない
       協調性がない  内向的である
 治療法
 @原因となっている鼻咽頭疾患の治療
 A耳管通気法は耳管・鼓室粘膜の正常化と滲出液の吸収を目的とします
 B鼓膜切開による貯留液の排除、粘稠液の場合は大きく切開し、吸引する
 C鼓膜チューブの挿入
 D鼻アレルギーの滲出性中耳炎に対する影響は無視できないといわれています
   したがって、鼻アレルギーに対する治療も重要です

目次へ戻る




急性中耳炎

 急性中耳炎は、上咽頭に感染した細菌やウイルスが『耳管』(耳と鼻の奥をつないでいる管)を経由して
 中耳腔鼓室に感染することで発症します。
 大人よりも子どもに発症することが多い疾患で、近年その難治化反復化の症例が増加しています。
 その原因として
 @乳幼児や小児の耳管は、成人の耳管と比べて短くて角度も水平に近いため、
   細菌やウイルスが容易に鼻の奥から鼓室に入り、炎症をおこします。
   特に子どもは、かぜ、のどの炎症、副鼻腔炎などにかかったり、アデノイドや扁桃肥大があると
   耳管に影響をおよぼし、中耳炎を併発しやすくなります。
 A子どもでは、一般に外界から侵入した異物に対する抗体産生能が大人と比較して低い
   とくに3歳以下の乳幼児においてはその傾向が著明です。
   また一部の子どもにおいては、この抗体産生能が特に低いため、くり返し上咽頭に感染をおこし、
   その結果、反復して急性中耳炎を発症することがあります。
 B耳管には、上咽頭と鼓室の空気の交換を行い、気圧の調節をしたり
   細菌やウイルスを排除したりする働きがありますが、
   一部の子どもでは、これらの耳管機能が悪いために急性中耳炎を頻回に発症することがあります。
 C薬剤耐性菌の増加も、難治化、反復化の一因となっています。
 D低年齢からの集団保育も、ひとつの要因と言われています。
   つまり、抗体産生能の低い3歳以下の乳幼児の中には
   耐性菌が潜在的に蔓延していることが多いと言われています。

 治療法は急性中耳炎の重症度により異なります
 軽症の場合は抗菌薬を飲まなくても治ることがあります。
 一方、中等症の場合は抗菌薬が必要となります。
 とくに細菌が薬に耐性化していたり、免疫能が低く抗菌薬だけでは治療が困難な重症例では、
 鼓膜切開・吸引により、中耳腔の排膿をすることが大切になります。
 鼓膜切開の傷は約1週間ほどで治るため、くり返し行っても影響は殆どありませんが、
 頻回の鼓膜切開は子どもにとって大きなストレスになり、
 鼓膜に換気チューブを入れる必要もでてきます。

目次へ戻る




鼻のはたらき(mucous blanket 粘液のおくるみについて)

鼻のあな(鼻腔)は丸い管ではありません。
中を覗くと粘膜のひだが三つ重なって
垂れ下がっています。
これを鼻甲介といい、わずかな隙間を通って
呼吸がなされています。
その隙間からはまた、顔面の骨の中に
副鼻腔と呼ばれる部屋が広がっています。

副鼻腔炎についてはこちらをご覧ください
上あごの骨の中に「上顎洞」、眼と眼のあいだに「篩骨洞」、額に「前頭洞」があり、
鼻腔とつながって換気がなされています。
もちろん、鼻腔のつきあたりは、のどの天井(上咽頭)で、
咽頭、喉頭、気管、気管支、そして肺へと空気を導きます。
また、上咽頭には左右に中耳腔(鼓室)を換気する耳管が開口しています。
つまり、鼻はからだの空気取り入れ口なのです。
そこではさらに、空気清浄器として大切な働きがなされています。
鼻腔や副鼻腔粘膜で覆われています。この粘膜は豊富な毛細血管の網目と静脈洞で構築され、
吸気に適度の温度を与え体温を調節しています。
また、左右の鼻甲介の粘膜は左右交互に約3時間ごとに大きくなったり小さくなったりして、
腫脹と収縮を繰り返して、鼻内気流の調節をしています。
これをnasal cycleといい、体内時計のひとつの表われでもあります。
さらに、その表面はうすい粘液の層で覆われています。
これをmucous blanket粘液のおくるみといいます。
この粘液の中にはある種の酵素や免疫物質が産生され、
感染に対する防御機構が組み込まれているのですが、
さて、鼻の中で作られる粘液の量は1日で一体どれくらいと思われるでしょうか? 
実は1日約1リットルもの量なのです。
このうち700mlが吸気に湿度を与えて、のどを乾燥から守っています。
残りの300mlは、mucous blanketとして咽頭に運ばれ飲み込まれます。
この粘液を運ぶ仕組みが、粘膜上皮の『線毛です。
線毛は1本1本は長さ7ミクロンと極めて微小で繊細なフィラメントですが、
あたかも穂波のように、それぞれが位相を変えて連動した全体の動きを起こし、
粘液を鼻腔から咽頭へ(副鼻腔では鼻腔にむかって)運んでいます。
(気管粘膜にも線毛があり、そこでは気管から喉頭に逆の方向に動いています)
線毛は粘液の中にあって動きます。粘膜が乾いたり、病的な分泌物の中では動きません。
こうして鼻はたえずきれいな粘液で洗われています。これを気道クリーニングといいます。
空気清浄機能付きのエアコンです。空気中のほこりやよごれを取り、温かさと湿り気を与えます。
鼻からのど、鼻から耳へと病気は広がります。
「鼻づまり」が呼吸障害をもたらし全身状態のバランスを壊すことは、前回も触れました。
「鼻づまり」は眠れません。こどもは育ちませんし、学生や大人は勉強や仕事の効率が上がりません。
家のエアコンのフィルターと同じように、ときには目づまりしていないかチェックしてみてください。

目次へ戻る