彼女の名を呼ぶ、男には、二種類ある。 ひとつは、彼女の血縁の男であり、もうひとつは、彼女と血縁を持たぬ男である。 両者の血統は、相違しているが、 両者には、共通した感覚があり、そこに相違は無い。 この、異なる血統と、共通した感覚とが、 陳腐な悲喜劇をもたらすことは、 彼らに、その名を呼ばれる、彼女だけが、知っている。 彼女の名は、少女。処女。恋人。妻。娘。母、そして淫売婦。 彼女の名を呼ぶ男たちは、これらの呼び名が、 どれも等しく、彼女を指す名前であることを、けして知らない。 そう、これが、彼らに共通した感覚なのだ。 昔、むかし、ある所に。 無知と無知との狭間に、高くそびえる、塀があった。 この小編は、光栄ある女性の、歴史的記録である。 或いは、凡庸な女の、たわいもない備忘録である。 |
| 「塀の中」 |
登場人物
07/1/17
第1回 「翡翠王」
05/4/30
第2回
第3回