本場ナポリの繁盛店で鍛えた腕前
「あれは誰だ。東洋人にピザを焼けるのか!?」。
ナポリの中心街にあるピザの繁盛店「オーカラマーロ」で、ピザを焼始めた18歳の哲平に、常連たちは、そんな言葉を遠慮なく投げかけた。店名のオーカラマーロは、ナポリ料理に欠かせぬ食材である「イカ」という意味。ピザを焼く石窯は、出入り口のすぐわきに据えられ、130席の大きな店内からもよく見える。
ナポリの伝統的な食文化であるピザの世界に、突然、日本人が現れたのだから無理はない。しかも、従業員約20人の繁盛店にあって、ピザの仕上がりを大きく左右する石窯の担当は、いわば花形のポスト。
それはまさに、銀座の高級寿司店のカウンターで外国人が寿司を握っているようなものだった。午後7時の営業開始から閉店の午前2時まで、灼熱の石窯に向かい、ざっと600枚は焼く。額に汗を浮かべ、毎日、懸命に働いた。焼き加減にうるさい常連たちも、「うまかった!」と哲平にお礼のチップを置いていくようになった。 |