サルノコシカケ

・・メルマガ・・さるのこしかけ

山菜、きのこ直売所
ちいくろ

天然の山菜、きのこは栽培品では味わうことの出来ない独特の風味や食感を持ちます。 ここ「みちのくの山々」から旬の味を産地直送でお届けします。
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「ちいくろ奮戦記」で掲載しているメルマガから「さるのこしかけ」部分を抜粋したものです。 「ちいくろ奮戦記」は、自然を舞台にしてくりひろげる山菜やきのこについてのメールマガジンです。
 
 
 


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             メルマガ・・さるのこしかけ


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                ・・・ちいくろ奮戦記

                      サルノコシカケ(1.山登り)・・・・・・・

       伊藤組の「金ちゃん」は、サルノコシカケ大ファンです。
       永年愛用して体調もよく、今でもその信仰心はかわりません。
       キノコ採りに一緒に行った時も、キノコよりサルノコシカケを、
       目当てにしているぐらいです。

       キノコや山菜のシーズンオフには、このサルノコシカケを
       採取することになりました。
       サルノコシカケを市場の人から、頼まれたからです
       名人は社長に相談をして、社長が金ちゃんに採らせるから
       ということになり、更に金ちゃんが一人では嫌だから
       みんなをつれていくということになって、
      私や石垣さん、みよしさんが同行することになりました。

      サルノコシカケ採りも、それを目的に行ったことがないので
     どのようなものなのかを見学することや、鬼頭のカムロ山
     に行くということで石垣さんが行ったことがないので
     行ってみたいということで一緒に行くことになりました。


     山形県境にカムロ岳という山があります。
     麓から登ると相当な距離ですが、県境のところから
     登るとそんなに険しくはありません。

     小学生も登る初心者用の山になっています。
     野田さんとは数回キノコを採るのに登ってみました。
     5合目ぐらいまでで、頂上までは登らずに引き返してきました。

     今回は、山野草の好きな石垣さんと、社長、金ちゃん、
     みよしさんの5人です。

     サルノコシカケを見つけるのが目的なのですが、
     社長と金ちゃんは、例の「マムシ事件」が、ありましたから、
     油断は出来ません。

    でも二人は、この山は初めてなのだそうです。
    仕事仲間から、ブナ林が多いからサルノコシカケも
    でているんじゃなのといわれて、本拠地の宮崎の
    山を捨ててこの方角を選んだようです。

    いすゞの4輪駆動車で、山形県境にある、カムロ山
    登り口まできました。
    この頂上を下ると山形県の赤倉というところに降りていくところです

    頂上には日本海のほうから吹いてくる北西の風が
    やや強めに吹いています
    登山道にはほか2台の車が置いてありました。
    きっとこの山へ登ったのに違いありません
  
    眼下には、さっき上って来た道がみえました。
    新緑の山並みがきれいに見えます
    放牧場の牛が小さく見えました。薄く霞がかかっているかのようで、
    麓の赤い建物がぼんやりと見えます

    空には薄い雲が南の方にかかっています
    県境の頂を吹きぬく風は、山と山との谷間になっている
    駐車場を強く吹き抜けていきました。

    めいめいが登る準備をしていますが、いつも不思議に思うのは
    社長と、金ちゃんは、普段と全く変わらない姿なのです。
    そのまま来てそのまま山に入るという感じなのです

    普通は何かを始めるときには、取り組む服装や、
    道具などの段取りが必要なのですが、
    なにもないのです。

    普段から山に入る格好をしているのかというと、そうでも
    なさそうだし、
    うちに来てお茶飲み話をしているときともあまり変わっては
    いません。

     皆の準備を眺めて美味しそうにタバコを吸っています。
    準備が出来たのを見計らって、肩から斜めに藤製のふごを、
    下げるだけです。

    全く便利に出来ていると感心します
   「きんちゃん・・虫対策は!」
   「なに・・虫
    さっぱりよってこねちゃ」
   「金ちゃんは虫にもきらわれてるんだ」 
   初老の金ちゃんは、社長に言われても平気です
    二人とも農機具店のマークの入った帽子をかぶり
    軍手、長靴・・・全くの普通の野良作業の服装で・・
    食べ物も一切持ちません・・水もです。

    ブナ林に入るからって・・・
    蚊取り線香・・防虫網・・長い手袋・・・
    笹や木が絡まないようにヤッケを上下に、
    顔や頭の保護に大きなキャデー帽を、さらにその上からと・・
    全く同じところにいく格好とは目を疑いたくなるほどです

    小さな笹が地面を覆い尽くしているところを登るとすぐに、
    小高い峰の上に出ます。
    あたりは石が一面にひろがったところです。
    よく石山では見かける光景で、あちらこちらに
    石を何段にも積み上げてところがあります。
    風が強く当たるところで、恐山に行ったような風景のところです

    山歩き金ちゃんは、一人で先に進みます
    皆で山形の方を見たり、宮城の方を見たりしていました
    山形の方には杉の山々に囲まれた集落が見えています。
    山村の風景です。
   いかにもこれから炊事の煙が立ちあがりそうな雰囲気です
    宮城の方は先ほどの平原がより大きく広がりをみせていました。

    峰を下るとき地面の石がコロコロと小さく転がり落ちていきます
    金ちゃんが先頭、社長が二番手
    宮崎の「マムシの事件」のときもそうでした。
    金ちゃんは斥候のように、皆より先に行っては、戻ってきたり
    着くのをまって、この先はどうだとか、この山はどうだとか
    社長に報告しているようです。

    登山道はロープを使って登るところや
    木で階段を作っている急なところを登ると、なだらかなところに
    到着しました。
    ずいぶんに登ったと思うのにまだ3合目です

    昨年も一昨年も登ったところなのに、形状が変わって
    しまいなかなか同じところと思えません
 
    ブナ林の多いところに着くと、
    登山道に突き出たブナの葉をもぎ取って
    「ほら・・ブナの実
    今年はブナ実が豊作年だな」
    などといいながら
    社長が双眼鏡を取り出します。
    何も持ってこないように見えて、いつの間にか
    双眼鏡などを取り出しているのです。

    「社長・・・見えるか」
    「うん・・・枯れてる木はあっけどな・・」

   どうやら、ブナ林に入る前にサルノコシカケを
    双眼鏡で確認しているようです

    「こごの林は・・たち枯れ木すぐないな」
    「サルノコシカケもないっちゃね」
   「あ〜ワゲあった」
   「金ちゃん・・ワゲででる」
    どうやら、平茸を見つけたようです

    でも双眼鏡で見えるところの場所は、木の根元からは
    10m以上もあってとても採取できるところではありません

    サルノコシカケも見つけたとしても、採取できる
    とは思いないのですが、
    真剣にブナ林を見つづけていましたが

    「ねーな・・もっといってみっぺ」
    「そうすっか」

    金ちゃんはまた上の方に先回りして登り始めました。








・・・・・・・・・・ちいくろ奮戦記
      サルノコシカケ(2.山登り)・・・・・・


「ねーな・・もっといってみっぺ」
「そうすっか」

金ちゃんはまた上の方に先回りして登り始めました。

先ほどまでは、風が心地よく登山道を駆け抜けていたのに
いつの間にか、登山道の周りはブナ林に囲まれて
無風状態になりました。

谷のところでは、水溜りが出来てぬかるんだ状態に
なっています。
登山者のどなたかが、倒木を水溜りに上手に敷き詰めて
水に入ることなく通れるようにしてくれています。

上り道に来ると、
ブナの木の根が歩道まで突き出て、ブナ木の根を
足場に登る所に来ました

息が切れそうな急な上りです。
汗がじわっと噴出してきました。
女性陣3人は皆額や、鼻かしらに汗をかきはじめました。
汗は顔全体に広がります。

私と石垣さんは、防虫網をつけていますので、
汗は流しっぱなしになりました。


金ちゃんと社長は汗をかいているのやら、足が疲れて
いるのやらいないのやら一向に何気なく登り続けているのです

山の人にはかなわないな
その驚くべき体力に感心していると

「社長・・・休憩」
私たちをみかねたみよしさんが社長に声をかけますと
「お〜休憩にすっぺ」
そういって上から降りてきます。

歩きづめで石垣さんも、山野草ところではありません
「石垣さん・・どう・・疲れない」
「すごい二人ね・・休みなしで・・歩き続けるんで
    おどろいたわ・・
   登山のときって・・ときどき休憩したり
         自分のペースで歩くから・・・・」
そういうと例の魔法のリュックをおろしました。

休憩の場所は、見晴らしのよい、風通しのよい
登山道が崖のように突き出たところです。
ちょうど4〜5人ぐらいが腰を下ろすにちょうどよい場所でした。

風通しがよいので虫も寄ってこないので、
二人は網を外して流れる汗を拭きました。

「ふ〜・・・」
大きな息をつきました。
緑の海が全体に大きく広がっています


みよしさんが、夏みかんを手際よく皆の分を剥いて
「はい・・つかれたねぇ
      この調子だから・・社長も金ちゃんも」
「みよしさんも・・すごいよ」
「おら・・毎日
     外で手元すてっから・・慣れてんの」

 そういいながら、剥いた夏みかんを、社長に

「社長・・どうぞ」
「駄目だ・・すっぱいの
     ほら・・桃もってきたべ
               あいつむいてけろ」
「桃は・・・もうすこしいってから
   いいがら・・こいつあがいん」
「なんだや・・おしつけんのがや
     すっぱいがらや・・
            な〜金ちゃん・・」
「社長・・くってみらいん
       汗かいたどきうまいがら」
「なんだや・・金ちゃんまで
     むりにくわせんのがや」
 いやいや食べてましたが、
「社長さんこれはどうですか・・」
 石垣さんが例の魔法のリュックから、赤いトマトを
 とりだし、少しの塩とともに差し出しますと渡すと

 「これは・・いい
     トマトはうまいんだ」
 社長はトマトを手にもつと、がぶりと噛み付いたのです
 「うまい!・・」

 「ほら・・みんなのぶんもあるから」
 トマトは全員にいきわたりました。 

 山でのトマトは、それは美味しいのです
 冷たくしたトマトは、水気もあるし、食感や
 ボリュウームもたっぷりで、ちょっとの塩で
 とても美味しくいただけるのです

 それにしても魔法のリュックです
 あの小さなリュックにどうしてトマトまでがはいっているのか

 私は名人から渡された、シソ巻きをこれも皆に渡しました
 このシソ巻きも山では美味しくいただけるのです
 おにぎりにシソ巻き・・・
 これが楽しみで・・楽しみで・・・ウフフフ・・
           ・
           ・
           ・
 二度目に双眼鏡をのぞいたときに、
 「社長・・・あった
    見っけだ・・・」
 金ちゃんが双眼鏡を社長に渡しながら
 「10個ぐらいは採れっから」
 社長も、見つけたらしく
 「金ちゃん・・あっけど
          とおいなや」
 「なあに〜ぞうさないことっしゃ」
 「みんなはいげねーな」
 「だめだ〜いげね〜
        あぶねえもん」
 「まってでもらうが」
 「うんだ・・そうすっぺ」


 「社長・・みせてください」
 石垣さんが、社長のところに行って
 双眼鏡を借りて見ました

 「ほら・・・大きなブナの木の横の方に
      ずーと遠くに枯れ木があって」
 
 「よくわかりません・・
       見つけられません」
 「はじめてだどわがんねかもな」
 金ちゃんがいいました。

  「駄目だ・・見つけられない」
   と石垣さん
 「私にも見せて」

 双眼鏡を借りて社長の指示する方向に
 向けてみましたが、双眼鏡は初めてなので
 見方がよくわかりません

 望遠鏡だと片方の目を閉じて、片方の目で見るので
 わかるのですが

 双眼鏡をのぞきながら片方の目を閉じてしまう自分に
 おかしくなってしまいます
 やっぱりわかりません

 「社長・・どこですか」
 「あんたもわがんないの!」
 「ほら・・・あそご・・」
 双眼鏡を外して、社長の指差す方向をみつめて
 もう一度双眼鏡を目にしました

 「遠くのたち枯れ木・・・立ち枯れ木
      え〜と」
 双眼鏡でのぞくと遠くのぶなの木が手に取るように
 近くに見えました。
 ぶなの木の白と灰色のブチブチ模様がおおきく
 くっきり見えます。

 あちこちに緑のコケのようなものが生えています
 「どうだ・・見えた」
 「まだです・・でも枯れ木は見つけました」
 「上の方だよ・・上」
 「上の方ね」
 ブナのたち枯れ木を見えたところから、上の方に
 おっていきますと、白い塊が見えました。

 「あった・・」
 「あったべ」
 「伊藤さん・・見えた」
 「あった・・あった
    たくさん  すごい大きいのも」
 ブナの立ち枯れ木の上のほうに行くにしたがって
 キノコの数は多くなり、大きさも大きくなっていきます

 形は偏平形でした
 形のよい「サルノコシカケ」です

 「石垣さん・・ほら」
 「見せて・・」
 双眼鏡を渡し
 「ほらこっち・・見えた
     だめ・・見えないの」
 「見つけられない」
 「ウン・・そっちの方」
 なんどかしているうちに、
 「あった・・見つけた
          ある・・ある
                たくさんある」
 「やった・・」
 二人は大喜びです。
 もう採取したような喜びようでした。

 金ちゃんと社長は、二人でサルノコシカケを
 採りに行くことになりました。
 私たちは遠くて危ないので「駄目だ」というのです

 「気をつけてね・・社長、金ちゃん」
 「あいよ・・」
 金ちゃんは、みよしさんから土嚢袋を3枚預かると
 「いってくっから
    ちょとまってて」
 ほんの近くに行くような素振りで
 登山道から笹薮を掻き分けて二人は入っていきました。
 笹薮は二人の背よりも高くて、入るとすぐに
 二人の姿は消えてしまいました。

 みよしさんが笛を取り出して
 「ぴ〜ぴ〜」と吹くと
 すぐ藪の中から
 「ぴ〜ぴ〜」と返答の合図がありました。
 それは数回続けられました。
 なんか山の暮らしの知恵を見ているようです

 二人は、山を下ってサルノコシカケのある、立ち枯れ木に
 向かったのですが、
 何の目印もなく、背より高い笹薮の中に入って
 どのようにしてこの場所に戻ってくるのか
 不思議です。

 山の人には、初めてのところでも
 何か目印でもあるのでしょうか、
 それとも勘が働くのでしょうか
 自分の歩いた道がわかるんでしょうか
 何故道に迷わないのか
 不思議です
 
 残された私たちは、登山道近辺で
 キノコや山野草を探すことにしたのです。





・・・ちいくろ奮戦記
サルノコシカケ(3.あなたは誰)・・・・

 残された私たちは、登山道近辺で
 キノコや山野草を探すことにしたのです。

 登山道の下刈りをした登山道と林との切れ目のところに
 白いキノコが出ています。
 
 「石垣さん・・きのこ
          白いキノコ」
 「伊藤さん・・そのきのこ
           ツチカブリよ」
 「土かぶり・・」
 見るとそのキノコは笠の部分に、土から
 生え出したときの、土が残っています
 「土かぶり・・食べれるの」
 「う〜ん
    食べられるって書いてあるけど
      誰も食べないの」
 「なんで・・美味くないの」
 「白いキノコは、猛毒のキノコが多いので
   それに・・ハツの仲間に似ている
           キノコは食べないの」

 「毒キノコだから」
 「毒キノコが多いの・・」
 「これも・・危ないってわけ」
 「そう・・
   それに初夏のキノコは、危ないの」
 「じゃ〜あぶないののオンパレード」
 「そのとおりよ
    食べるほどのものでもないしね」
 
 竹やぶの中を見ると、あちこちに点々と
 白い「ツチカブリ」が見えています

 「伊藤さん・・
  ツチカブリはこのように乳液をだすの」
 そういいながら、ツチカブリをとって
 二つに笠のところから割りました

 二つに割られたキノコは、見ているまに
 白い液がひだのところににじみ出て来ました。
 
 「ツチカブリはチチタケの仲間よ」
 「チチタケ?」
 「乳液を出すキノコのことよ」

 なんて石垣さんはキノコにくわしいんだろう

 「ツチカブリがでるこの時期には、チチタケもでてるわ」
 「チチタケが」
 「そうよ・茶色のきのこ
          すぐわかるから」

 登山道を注意深く見てみますと
 さっきまでは気がつかなかったものが見えてきます
 きれいなキノコがあります

 「石垣さん・・
   これはベニテングタケ」
 「そうそう・・・
   この笠にブツブツの斑点があるので
                   わかるの」
 「このブツブツね」
 「それから・・テングタケの仲間は
    根っこのところが特徴があるの」
 「根っこ」
 「ほら・・茎の付け根
           よく見て」
 見てみますが何にもわかりません
 何が違うのかも一向に見当もつきません

 「見てるけど・・何が違うの」
 「ツチカブリそっちの採ってみて」
 「ツチカブリね」
 「根っこの方まで採ってみてね」

 もう一個のツチカブリを今度は言われるように
 丁寧に採ってみました

 「伊藤さん・・わかる
         これとの違い」
 「さっぱり・・・何が違うの」
 「よ〜く見て」

 ツチカブリのきのこと、ベニテングタケのキノコを
 二つ並べて違いを確認していますが
 一向に違いが見えてきません

 「やっぱりわからない・・
          どこが・・違うの」
 「わからない・・」

 「ほら・・根っこのところ
             よく見て」
 「見てるけど」
 「こっちは まっすぐね
    こっちは膨らんでるでしょ」
 「うん・・膨らんでるけど」
 「この違いよ」
 「えっ・・この違い
    この違いって・・」
 普通では全く気がつかないような、根のところの変化を
 石垣さんは言っています

 「この違いが・・
   そのうち大きな違いってわかるようになるから」
 「わかるかな〜
        全く気がつかないけど」

 キノコの違いをこのように明確にされたのは
 初めてのような気がします

 「これは・・袋状になっているの
     キノコの用語では、壷っていうの」
 「壷・・」
 「この壷が毒キノコの判断する
           重要なところなの」
 「壷ね〜」
 そういえばよくよく見ていると、壷といわれると
 壷のような格好をしていて、
 壷からキノコが出ているように見えます。

 「この壷のあるキノコ
     このキノコが要注意のきのこ」
 「毒キノコなの」
 「毒キノコの仲間が多いの
    だから壷のあるきのこは採らないの」

 「そうか・・壷か」
 そう思いながら、更に見つめると
 キノコの根元は壷そっくりに見えてくるから
 不思議です。

 先ほどまでは「ツチカブリ」の根元も
 「ベニテングタケ」の根元も同一のように
 見えましたが、今ははっきりと違いがわかります

 とても膨らんで、壷から出ているのがよくわかりました

 「テングタケは、この壷があるので
               見分けがつくわ」
 「壷ね」
 さっきまで黙って聞いていたみよしさんも
 そういうと手にとってまじまじと見つめています





 ・・・ちいくろ奮戦記
 サルノコシカケ(4.あなたは誰2)・・・


 上の方からみよしさんの声です
 「茶色のきのこあったよ」
 「笠のとっから、少し白い液で出るよ」

 「それ・・チチタケかも」
  石垣さん
 「チチタケ!・・
     見つけたの」
 「そう・・チチタケのようよ」

 上からハア〜ハア〜言いながらみよしさんが
 下りてきました。
 「ほら・・このきのご
    さっき言ったチチタケでね〜」
 「そう・・チチタケよ」
 「どんなん・・見せて」
 「ほら・・」

 チチタケといわれたキノコは、表面が本当に
 茶色で、笠の真ん中のところが少し窪んでいます
 笠の表面は茶色のビロードのような上品なきっちりとした
 まとまった笠をしていました。
 
 裏のヒダの部分からは、チチタケ特有の白い
 乳液がにじみ出ています。
 「これがチチタケね」
 はじめてみるキノコでした。

 「チチタケは普通は数本が近くに出るので
    採ったところにもう少しあるかもしれない」
 「そうなの・・」
 「うんだが・・
   探したけど・・見つけられながったな〜」
 「見てみましょう
        もう一度」

 3人はみよしさんの採った所の場所に行って
 注意深く周辺を探しました。
 登山道の笹などを下刈りした道端のところに出ていたということでした
 笹薮の中をのぞくと、先ほどの「ツチカブリ」が、
 何本か見えました。

 「みっけ・・」
 みよしさん
 「ほらここに・・2本あった」
 見ると、やっぱり登山道と、藪との境目のところの
 地面から出ています

 「土から出てるんだ」
 「うんだ・・土からでんだね〜」
 先ほどのものよりちょっと小さく若いチチタケです
 笠は茶色のビロード状でしたが、笠は中心がへこんでなく
 キノコの形のままです。

 「かわいいね」
 「いいきのこだっちゃ」
 みよしさんも満足げです。

 ほか周辺を探しましたが、後は見つけられませんでした。
 「もうないかもね・・」
 「まだ少し早いから・・・」

 「このキノコは、どうやって喰うのしゃっ」
 「チチタケは、そのまま食べると
   ぼそぼそしてあまり美味しくないの」
 「うまぐないの!」
 「でも・・出汁(ダシ)はいいのよ」
 「出汁(ダシ)」

 「この出汁で、そばやうどんを食べるのが
          一番というところもあるの」

 「秋田県では、トンビマイタケをお盆に
    帰省する子どもや親類にトンビマイタケご飯
     として食べさせるのが慣わしなの」
 「栃木県では・・このチチタケの出汁で
      うどんを食べるのが慣わしなの」
 「宮城県では・・・なにかな〜
     特別に無いけど・・・
    ほら・・帰省した人にだす「ホヤ」や
         「ずんだ餅」のようなものよ」

 「地域によって人気のあるキノコは違うけど
   チチタケは栃木県では、こちらのナメコ以上かもよ」
 「ナメコ以上・・・人気あるの」
 「そうよ」

 「チチタケはナメコや他のキノコと違って、
       採取時期や、場所が限定されるから
                 採取量は少ないの」
 「栃木県では、たくさん採れるの」
 「採れないわ・・難しいもの」
 「じゃ〜どっかから・・買うの」
 「そうね・・やっぱり足りない分は買うのね」
 「だから・・時期になるとチチタケの値段も上がり
         高価なキノコになるわけね」
 「秋田のトンビマイタケも同じ
    トンビマイタケもお盆の時期しか採取できないから」
 「だからその時期になると
    チチタケ同様高価なキノコになるわけ」
 「需要と供給のバランスね」

 「そんなんだ・・
    たけい・・きのごなんだね」
 「いいもの採ったわ・・みよしさん」
 「うんでも・・3本では」
 「まだまだ・・帰るときに注意すれば
             もっと見つかるから」

 「山んながでは、採れないのすか」
 「このキノコは、風との微妙な関係で
    出るキノコだから、風の通りにくい
     山の中のようなところでは、探しにくいキノコなの」
 「そうなのすか」
 「キノコ全体が、風との微妙な関係で
                  発生するのよ」
 「今採ったチチタケも、登り口の右側だったでしょ」
 「南から登って頂上までは、この登山道は
              北側に登って行くの
    そうするとキノコは、登り方向に向かって
                  右側に出るの」
 「右側・・そうか東側だった」
 「風は北西か、西から吹くのが多いので
     西側に風に邪魔にならないものがあると
       キノコは東側に出る確率が多くなるわ」

 石垣さんは、登山道に向かって、左手を西から
 このように吹いてくるから、キノコは風の当たりやすい
 東側に出るのよ・・そういいながら
 身振り手振りで二人に説明してくれました

 「でも・・
   風は南風も・・東風もあるのに
                何で西風」
 「風の吹いてくる方向は
    気圧の関係もあるけど一番は
     地球の自転の関係が一番影響するの
       だからこの辺では北西の風が一番多いのよ」
 「地球の自転?」
 
 なんだかわからなくなってきてしまいます。
 チチタケが何で地球の自転なんかに関係するのか
 そう説明されるとそのような気もするし
 二人で石垣さんの説明を聞いていますが、
 頭の中は「チンプンカンプン」です

 「とにかく・・
   風の通り道のところが、キノコは
                一番すきなの」
 「山の中より、登山道周辺よ」
 「山の中では、下草の少ないところや  
     下草の少ない立ち枯れ木が、ねらいめね」
 「ハイ・・」
 「ハイ・・」
 思わず二人は、先生に教わっている生徒のように
 元気に返事をしてしまいました。


 そうか・・風か
     風の通るところか・・フム・・フム
  なんか一度にきのこ採りのプロになった気分です

 ところで・・石垣さんあなたは何者・・
       ・
       ・
       ・
       ・
 そのとき、下のほうから
 「ピー」という笛の音です
 「帰ってきた・・みよしさん」
 「うんだね」
 そう言うと、みよしさんも笛を取り出して
 「ピー」と、大きく吹きました
 4〜5回吹いていましたが、
 
 「金ちゃんのほうに聞こえたかしら」
 「だいじょうぶだ・・かぜすぐねがら
               きこえっちゃ」
 笛の音色は遠くからでもよく聞こえるのだそうです

 まもなく金ちゃん、社長が登山道に
 姿を現しました。
 持って行った土嚢ふくろ3個に入れて上がってきました
 
 「わ〜採ってきた」
 3人は近寄ると、社長が「20kgは採ってきたぞ」と
 登山道に土嚢袋を投げ出すと、

 「おもで〜
    いや〜山ん中を担いでくんのは、しどい〜」
 そういって登山道に尻をついいてしまいました

 金ちゃんも「つかれだ・・」って、尻を着きました。

 「あんたら・・なぬがとったの」
 社長が言うと待ってたとばかり
 みよしさんが、「社長ほら」と、さっきとった
 チチタケを出しますと、

 社長はきのこを手に乗せてみながら
 眺めていましたが

 「なんだ・・このきのご
      おっかないきのごだぞ」
 
 「社長・・
     チチタケだよ」
 「なぬ・・チチタケ
      なんだ・・そいつは」
 「社長しらないべ・・
    石垣さんに・・おそわったの
   ほら・・みでみさいん・・」

 みよしさんは得意げにきのこを二つに割って
 乳液を出して見せます
 この乳液がチチタケの由縁だと説明します

 「くえんの・・」
 「うまいんだから」
 「おら・・いいがら
    あんだ・・くわいん」

 山の人たちは自分の知らないキノコには
 絶対に手を出しません
 今日の社長も、金ちゃんもそうでした
 危ないキノコだというのです
 生えている状態も木からではなく、土から
 直接出ているのも、気に入らないのです。

 いいものを採ったと自慢したかったみよしさんも
 二人が危ないと頑固に言い出すので、
 ちょっと心配になったのか、
 「うまいんだよね〜石垣さん」
 石垣さんに助けを求めました。

 「社長さん
   このきのこはチチタケといって、」
 そう言うと先ほど、私たちに説明した内容を
 社長と金ちゃんに話しています。
 初対面の石垣さんの礼儀正しい説明ですので
 聞かないわけにはいかないので、二人とも
 窮屈そうに神妙に聞いているのです。

 みよしさんと私は顔を見合わせて
 二人のその様子に噴出してしまいました。

 「ウフフフフフフ・・・」
 「ははははははは・・・」
 金ちゃんと社長は私たちを見ながら
 何を笑っているの・・・
 
 早く説明を切り上げさせてよ・・
 そういう顔でこちらを見ました

 石垣さんは、まじめな顔で、二人の困惑などお構いないしに
 熱心に説明しているのでした。

 やっぱり・・
 石垣さん・・・あなたは何者・・








・・・・・ちいくろ奮戦記
 サルノコシカケ(5.あなたは誰)・・・・・・

 サルノコシカケは、もう十分に採ったから
 これ以上は要らないことになりました

 登山道ももうこれ以上登る必要がないといって
 ここから引き返すことになったのです

 お昼を少し過ぎていたので
 先ほど休憩したところまでもどり、
 そこでお昼にして、今日のサルノコシカケ採りは
 終了です

 山の人は必要なものや、量をを採るとそれ以上
 採ることはいたしません
 もちろん商売にしているわけでもないので、
 頼まれた分や、自家消費分のみ採れば
 それ以上は採る必要がないのです

 見晴らしのよいところでお昼にしました。
 先ほどより天気がよくなり晩夏の牧草地が
 よく見えます
 牧草地に建っている牛舎の赤い屋根もきれいに見えました

 風も心地よく吹いてきます
 楽しいひと時です
 
 「伊藤さん・・・これわかる」
 石垣さんが小さな紫の実を出しました。
 「何の実?」
 「クロウスゴ」
 「クロウスゴ・・?」
 「ほら・・ブルーベリーって知ってるでしょ」
 「ブルーベリーは知っているけど」
 「天然のブルーベリーよ」
 「これが・・」

 紫の小さな実は10粒ほど、石垣さんの手のひらに
 ありました。
 きれいな実です。石垣さんの手のひらは、クロウスゴ
 の、実の紫に少し染まっています

 「まだ早いけど・・」
 「果実酒にするときれいな美味しい
    甘い果実酒になるの」
 「クロウスゴね」
 「ほらこの木よ」
 石垣さんの座っていたすぐ脇の小さな低木の
 木を指差して、・・その木は葉がやや黄色に
 色づき始めているような木でした。

 小さなその木の枝枝には、先ほどの小さな
 紫の実が点々と付いています

 「こちらの方が目にはよく効くでしょうね」
 「目にね」
 「ブルーベリーの元祖だから」

 「天然のものは、栽培物に比べたら
   それは・・もう・・比較にならないわ」
 「特にこのような場所で採取できるものには
    想像のつかないような力があるわ」

 「さっき採ったサルノコシカケあるでしょ」
 「うん・・サルノコシカケ」
 「サルノコシカケにもたくさんの種類があるの」
 「たくさんあるの」
 「たくさんあるのよ」

 「メシマコブとか、レイシとか聞いたことない」
 「あるある・・」
 「ガンに効くサルノコシカケで有名なんだけど」
 「宣伝たくさんしているし」
 「メシマコブは桑の木に出るサルノコシカケよ」
 「そのほか、梅ノ木に出るサルノコシカケもあるの」

 「サルノコシカケってなんにでも出るのね」
 「サルノコシカケの種類でも、抗癌効果の多きい
    サルノコシカケがひっぱりだこだわ」
 「やっぱりがん患者にとっては
          何でも試したくなるもの」
 「もちろんそうよ
    でも、サルノコシカケの種類ではなく
       どこで採取されたかがもっと重要だわ」

 「なんで」
 「自然の摂理なの」
 「自然の摂理?」
 なんだかまた難しくなってきたぞ 

 「自然の力は、育った環境に大きく左右されるの
        厳しい環境ほど、作物は美味しいいの」
 「美味しいだけではなく、人間に与える
            力も備えているのよ」
 「人間に与える力?」
 「そう・・・免疫力って言う方がわかる!」
 「免疫力?」
 「自然環境の厳しいところで育ったものほど
     生命力は強いのよ、またそれを利用した場合の
    人間に対する作用も大きく働くの」

 「人間に対する作用?」
 「自然の摂理よ」
   「だから、サルノコシカケもサルノコシカケの種類ではなく
           採取した場所が重要だわ」
 「採取場所ね」
 「メシマコブ、レイシだとか、自然ではなく
  工場のようなところでの栽培品にはその力は
     半減ね、半減どころかもっともっと少ないかも」
 「栽培品には力がないのよ、抗癌に対する 
   成分は多く含んでいるかもしれないけど、
           でも・・力・・パワーが無ければ」

 「このような場所での、サルノコシカケには
             そのパワーは十分にあるわ」
 「だって、・・この自然の厳しい環境下で
              育っているんですもの」
 「だから・・種類にこだわる必要はないわ」
 「種類にね」

 なんだか一方的に話をされているようで
 ただただうなずくしかありません

 「さっき採取したサルノコシカケは、
   ブナの木に出ていたので普通に「ブナサルノコシカケ」と呼ぶの」
 「これは、参考書や図鑑にはない名称なの」
 「北海道の方ではブナの木は少なく針葉樹が
   多いので「ツガサルノコシカケ」と呼んでいるわ」
 「図鑑なども統一して同じ名称にするといいのよ
   「ツガサルノコシカケ」は針葉樹にでて、広葉樹
   には、出ないといっているけど、こちらの
    ブナの木に出ているものと同一種と思うな」

 「コフキサルノコシカケというものが、
   ブナの木に出るから、こちらではブナの木に出る
  サルノコシカケを「コフキサルノコシカケ」と呼んでいるの」
 「コフキサルノコシカケと「ブナサルノコシカケ」は
   サルノコシカケだけど違うものなの」
 「図鑑ではこの「コフキサルノコシカケ」の説明も
           間違っているものがほとんどなの」

 「ツガサルノコシカケ、コフキサルノコシカケ、
   ブナサルノコシカケ、もう少し勉強すべきだわ
        図鑑を発行するなら・・生態をもっと」
 「はあ〜」
 なにがなんだかわからいんですが・・石垣さん
 あなたは何を言っているんですか・・・

 「要するに・・・
  ここで採取したサルノコシカケは・・
    とてもいいってわけ・・・石垣さん」
 「そうよ・・
     この辺で採取できたサルノコシカケは
      とてもパワーがあるわ」
 「栽培のメシマコブや、霊芝なんか目じゃないわ」
 「とてもいいもの」
 「いいものよ・・自信を持って
             市場に出せるわ」
 「石垣さん・・お墨付けって
        荷札にでも書いて出す」

 ・・・・・ウフフフフフフフ・・・

 「伊藤さん・・・
   サルノコシカケ採ったついでに
              更に勉強してみる」
 「勉強って!」
 「自然の不思議さ、魅力を」
 「未知の世界のこと」
 「そう・・キノコの不思議な力・・・」
 「なんか怖いな・・その言い方」

 「ごめんごめん・・そんなんで無くって」
 「勉強って何するの」
 「な〜んにも・・」
 「なんだあ〜難しいことかと思った」
 「新しいものを採りに行くの」
 「新しいもの」
 「そうよ」
 「何!新しものって」

 「冬虫夏草(とうちゅうかそう)よ」
 「冬虫夏草?」
 耳で聞いたことはありますが、見たことはありません
 キノコの図鑑の後ろの方には必ず写真が載っています
 セミなどの昆虫からキノコが出ている写真です

 「そんな・・採れるの」
 「どうかな・・本気になれば
             探せるわ」
 「でもとって・・どうするの」
 「う〜ん・・・どうしょうか」
 「ただ見るだけ」
 「う〜ん・・」

 石垣さんは返答しません、
 答えようかどうか迷っているようです

 「伊藤さん・・
          誰にも言わない」
 「なにを・・」
 「私がしていること」
 「石垣さん・・なにかしているの
    悪い薬を作っているとか・・麻薬とか」
 「な〜に・・いやね
    そんなことできるわけないでしょ」
 「でも・・口止めするようなことだもの」
 「そうか・・」

 「じゃ〜その前に一度家に来て
     伊藤さんに見せたいものあるから」
 「気持ちの悪いものじゃないの」
 「少し気持ちわるいかな」
 「少しでも気持ちの悪いものはいやよ」

 「そうか・・
  気持ちの悪そうなものはしまって」
 「機会を見て見せてもらうわ
   その少し気もちの悪いものを」
 「いいの」
 「いい・・我慢する」

      ・
      ・
      ・
      ・
      ・
  「おう・・いくぞ」
 社長の声がしました
 二人は、皆が休憩しているところまで
 いって、皆で登山道を降りました


 「ほら・・ 
   こいづでねーの
           さっきのチチタケ」
 金ちゃんが2本ほど見つけました
 さすがに早いのみ込みです

 社長も見つけました

 降りる途中10本ぐらいの
 チチタケを皆で見つけました

 またこれからが楽しみな
 サルノコシカケ採りでした

 その後はさっきの続きを話すでもなく
 石垣さんは帰っていきました

 あなたは・・・
        何者・・・

 後姿を見ながらそう考えていました。





 ・・・・ちいくろ奮戦記
   サルノコシカケ(6.菌研)・・・・・

 何日たったある日に、石垣さんの自宅に伺うことにしました。
 石垣さんは隣の団地に住んでいるので、すぐ近くです。
 
 家は青い洋瓦に白い塗り壁の西洋風のお洒落な建物です。
 門構えも立派で、白壁の塀も上の方には、住居と同じような、
 青い瓦がのっています。

 手入れのよく行き届いた庭には、アジサイの花が咲いています
 門のところは、シンボルツリーの「はなみずき」が植えてあります。

 表札の御影石には楷書で「石垣」とあります。

 団地のほぼ中央部で、バスどおりに面した平坦なところのよいところです・
 車道と住まいの間には、歩道が備えてあり、植え込みには
 「どうだんつつじ」が、植えられています・

 街路樹の、プラタナスの木が夏の太陽をさえぎって
 ちょっと涼しく感じられます。
 車道は、さほど交通量はなく静かな団地といった感じのところです。

 インターホンを押すと、すぐ石垣さんがでて、
 まもなく玄関から出てきました。

 「どうぞ・・・暑いね!」
 半そでのシャツにパンツ姿ででてくると
 うちのほうに案内してくれました。

 外は太陽も照って暑く感じましたが
 中はエアコンを効かしているのか、とても快適な
 気温です

 そういえば、これまで何度となく一緒に、山菜やきのこを
 採りに行きましたが、石垣さんのことは何一つ知らなかったのです。
 自宅に伺ったのも初めてでした。

 とてもきれいに整理整頓されていて、人の住まいの気配を感じさせないほどです
 まるで住宅のモデルハウスの中にでも案内されたような雰囲気でした。

 「伊藤さん・・冷たいものどうぞ」
 「ありがとう」
 「近くなのに・・始めてね・・うちに来たの」
 「そうね・・こんなに近くなのにね驚いたわ」
 
 「ずいぶんきれいに片付いているけど、石垣さんは整理魔・・」
 「ウフフフ・・・そう・・・そうかもしれない」
 「私は駄目・・・家の中はもうゴミで一杯
        何かを探すのも・・大変よ」
 「いいのよ・・その方が・・
             気が疲れないもの」
 「気ままにやるほうがいいのよ」

 「これで・・気ままにやってる」
 「娘よ・・うるさくて
        すぐ捨てられるから・・」
 「娘さん!」
 「大学生よ・・うるさいのよ
             私以上に掃除魔なの」

 「大学生か・・」
 「伊藤さんとこ・・は」
 「うち・・息子 2人よ
    2人とも大学行ってくれると助かるんだけど」
 「高校生!」
 「上は高校卒業して・・・ジャズの勉強とかで
               アメリカにいったきり音沙汰がないわ」
 「心配でないの」
 「はじめは心配していたけど・・
   友達と二人でいるからって・・一年以上になるわ」
 
 「下のお子さんは」
 「私立の高校生2年生よ」
 「子どもも中学を過ぎると、もう親の手から離れるから」
 「離れたほうがいいわ」

 コーヒーを飲みながら雑談をしていましたが、
 「伊藤さん・・行ってみる」
 「行く?」
 「あっ・・・ごめん、隣に・・行くの」
 「お隣?」
 「ほらとなりに建物あるでしょ」
 「お隣の白い家・・?」

 「隣は事務所では?」
 「そこが・・私の仕事場・・職場かな」
 「職場って・・そこへ勤めているの」
 「う〜ん・・勤めているってわけでもないけど
                   行ってみよう」
 「うん  行ってみる」

 東隣には60坪ぐらいの2階建ての大きい白い建物が建っています。
 石垣さんの自宅から見ると、一つの敷地に2棟の建物が建っているように見えますが、
 外からは別々の敷地に建っている建物に見えます

 飛び石を踏みながら石垣さんの後をついていくと
 やっぱり洋館の建物で、とても細工のしてある
 立派な建物でした。

 敷地の広さも200坪ぐらいの広さで、ゆったりとした建て方です。
 周囲には芝生が敷き詰められていて、こちらも
 石垣邸のようにきれいに手入れがなされていました

 木製の玄関ドア〜のアーチガラスにはステンドグラス風の
 模様があります
 ドア〜の脇には小さな表札があり、表札には「菌研」とありました。

 「菌研」ってなんだろう
 石垣さんが・・「こずえさん入るよ」と声をかけます
 中から一人の若い女性が出てきて
 「伊藤さん・・いらっしゃい」

 「はい・・」
 どうして私のことがわかるの・・けげんな私を見つめて
 「ほら・・わがまま娘」
 「娘さんなの・・・」
 「どうも・・母から聞いていますから!」

 「今日は、もう一人の方が出張でいないから
                娘がアルバイトよ」
 「ちゃんとやってるの・・
      お茶ばっかり飲んでいるんじゃないの」
 「やってますよ・・しっかりとね」

 「「菌研」っていったいなあ〜に」
 「自然の山野草や、きのこの菌を主に調査や研究する仕事をしているのよ」
 「誰が・・調査を」
 「おかあさんと、もう一人の人」
 こずえさんが石垣さんに代わって答えてくれました。

 「きのこの菌の調査・・石垣さんが」
 「調査って大げさなの・・
    ここは、調査に来る人たちの宿泊所そして、研修所で
     私たちは依頼されたものを事前にどこにあるかをを調べるだけ」

 「菌研」といわれた中は、一見普通の住宅の造りです
 石垣さんが部屋の構成を説明してくれました。

 「研修が主目的だから、研修や、調査に来た方が、
  ここに泊まったり、またここからいろんなところに出かけるの」

 「一階は、応接間(事務室?)台所、食事室、トイレや洗面所などの水周り
  そして見てもらう、資料室、などで2階は、宿泊施設で5部屋、2人部屋だから
  10人は泊まれるわ、もっと来たときは私のうちに泊まるの、
  それに研修室、それに水周りね」

 「石垣さんはここの管理人さん?」
 「うふふふふ・・」
 「おかあさんは、・・一応この「菌研仙台事業所」の所長兼
   小間使いよ・・管理人さんなんかより手が悪いわ」
 「な〜にいってんだか・・こずえさんは
           誰にアルバイト料いただいているの」
 「私は・・会社からよ・・・所長からじゃないもん
   あんまりこきつかわないでよね
    あんまりひどいと・・会社にいいつけるんだ
     ネ・・伊藤さん・・当然でしょ」

 「おお~怖い・・こわい
     だったらもっと素直なアルバイトをやとうんだった」
 「あ〜ら・・
    私でなきゃ・・できないことあるでしょ」
 「伊藤さん・・私ね・・
     山野草マップや、きのこのマップを作成しているの
          普通の人できないんだから・・残念ね・・所長さん」

 「こずえさん・・山野草やきのこのマップ作ってんの!
    どこに何があるとか・・そういうもの・・マップって」
 「普通のマップとちょっと違うの・・ 
              ま〜でも似たようなものかな」

 「調査に行くときに、便利なのよ
    これがないと何日もあっちこっち歩きとおしても
                目的のものが見つけられないんだから」
 「それは・・一般の人でも見られるもの」
 「見れるけど・・慣れないとわかりにくいの、
   だからはじめは私が案内して、マップの見方を教えるの」

 「でも・・採取は研究目的だから
      たくさんは採らないし、もし必要な場合には
                     ほかの人に頼むのよ」
 「ほかの人・・」
 「山の好きな人たち・・山菜やきのこに詳しい人たちよ
        伊藤さんや・・伊藤さんの仲間の人たちのこと」
 「私?・・まったく詳しくないけど
    こずえさんのほうが詳しそうじゃない」
 「私っておかあさんの影響で、きのこは耳としまなの
     山などには、案内以外にはあんまり行かないの」
 「でも・・マップを作ってるって!」
 「そう・・これは得意なの
      伊藤さんにも、いろいろ教えてもらって
                 そのマップ作って見せるから」

 「まあ〜まあ〜
   説明は後にして・・」
 「伊藤さん・・資料室見てみる」
  石垣さんが資料室へ案内してくれることになりました。

 外は車が大きな音を立てて通り過ぎていきました。
 暑い夏の太陽が窓の外の紫陽花(あじさい)を照らしています。

 資料室は、食事室から入っていけるようになっていて
 小さい文字で「資料室」とかかれてあります
 石垣さんが部屋のドアを開けました。




★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.94

          山菜きのこ メールマガジン
            「ちいくろ奮戦記」

                            ・・・・・・★★★★★★★★

  ・・・ ・サルノコシカケ(7.菌研)・・・・・・・


 石垣さんが開けた資料室は、思ったより大きな部屋でした。
 入ったところは、書類庫のようで、何列か本棚が設置してあり、
 本やファイルが整理整頓されていました。

 「ここはいろんな資料や、参考書や、ここで調べたものが
   ファイルされているの、今はほとんどがパソコン用の
  CDに保存されるけど、昔のものはやっぱりこのように
  保管しているのよ」

 「たくさんある!」
 見出しは、普通の山野草の本だったり、きのこの本などもありましたが
 全体的には研究的な専門書のようなものが多く、
 いかにも資料室といった感じです

 窓際に小さなテーブルとイスが2個置かれているだけです。
 
 「誰がここを利用するの・・
           石垣さんが、利用するの」
 「私は・・何か調べたいものがあるときは
         利用するけどほとんど使わないの
    研修に来たときにここの資料を使ったりするけど」
 「研修ね・・」
    ・
    ・
    ・
 「ほら・この資料を見て」
 石垣さんが壁際の蛍光灯の光がとどきにくい薄暗い
 書棚にいくと、薄汚れた資料を取り出しました。

 資料は紙の袋に入ったものでした。
 丁寧に折り曲げられた古い新聞紙、色あせたきのこの写真、報告書のような
 文献やらが、カーキ色の紙袋から取り出されました。

 「なにそれ・・」
 「父が調べていたものなの」
 「おとうさん?」
 「そう・・父も植物などに興味があって
            きのこの菌を調べていたのね」
 「お父さんも同じ会社にいたの」
 「父は会社ではなく・・大学の研究室にいたの
    それがたのまれて調べたのが、この道に入るきっかけになったの」
 「何か調査を」
 「そうよ ほら見て」

 紙袋を広げて中から古い新聞を取り出しました。
 その新聞は地方の新聞で昭和32年とあります。
 赤い鉛筆で丸く囲まれた欄がありました。

 「○○村で、原因不明の死亡」・・という小さな記事です
 
 「これがどうかしたの!」
 「原因を調査してほしいと父に依頼があったようなの」
  「ずいぶん前ね・・
        お父さんの若いころ」
 「そうなの、まだ独身の時代(ころ)だから」
 「どこから・・警察?」
 「ううん・・その近くの開業医さん
         父の大学での友達のおとうさん」

 「何で石垣さんのお父さんに!」
 「父は、大学で菌などの研究をしていたようなの
   父の友達が、開業医のお父さんに紹介したの
   友達のお父さんの開業医さんによると、死亡の原因は
            きのこでないかというのよ」
 「きのこ!」
 「でもそのきのこはその地方では普通に
           食べられているきのこなの」

 「じゃなんで・・」
 「開業医の先生が・・何年かのうちに
   同じような死亡例があったので・・
    ・どうもそのきのこじゃないだろうかと・・
              だから・・調べてほしいと」

 「お父さんはきのも研究していたの」
 「いいえ・・まったく
     でも友達の頼みだから・・ってそこへ行って見るだけ行ってみよう
             そういう軽い気持ちで行ったようなの」
 「行ってみると開業医さんの熱心な説明に
        疑念を抱いて本気に調べてみることになったようよ」

 「それから、父はきのこの菌に没頭するようになって・・・
    もういろいろ調査研究をはじめたの・・・・それで・・
     研究のためにアメリカに行ったとき、「菌研」の
    母体の研究機関や、製薬会社と共同で研究を行ったの 」
 「すごいお父さんね」
  
 「だから・・父が日本に戻って来てから
      大学や製薬会社の研究機関のために
         「菌研」という組織を作ったみたいなの」
 「すごい・・」

 「自分のためだけに作ったような組織なのよ!」
 「でもすごいわ・・」
 「わがままなだけよ」
 「それで・・死亡の原因は
            きのこだったの」

 「父からは正確には聞いていないけど
    ある条件の下での因果関係があるって言っていたわ」
 「ある因果関係!」
 「そう・・薬を服用するとき
   病院で聞かれるじゃない・・
     これまで大きな病気をしましたか、アレルギー
     症状はありませんか、薬を飲んで気分が悪くなったことは
    ありませんか・・って」

 「あれと同じ」
 「ある条件下では、食べられるきのこも、あるときは
    人間の体に微妙に影響して害になることがある
       それも、致命的なことになる場合があるって」
 「その条件って・・なんなの」
 「いわないの・・
   まず十分な確証がないからと・・混乱するし、悪用されることも
        あるからって」
 「悪用する・・
   悪いことに利用されるってことなの」
 「そういうことだと思うわ」

 「きのこは裏を返せば、
     人間に対する大きな力をもっているって
               常々言っていたわ」
 「きのこは魅力があるのよ
    不思議に人をひきつける力が!」

 「研究者ね・・おとうさん」
 「きのこの魅力に摂り付かれたんだわ」
 「だって・・娘の私を本気で「きのこの研究者」に
   しょうとしたのよ・・自分のやってきたことや
       出来なかったことを継がそうと」
 「石垣さんは・・それで」
 「はじめは、面白半分ではじめたけど
   駄目ね・・・奥が深くてわからないことが多くて・・
     父のようには辛抱強く出来ないし、続けられないとわかったの」

 「製薬会社の研究所で私があきらめ始めたのを知るやとても残念がったの
    そうすると父の教え子のような人と結婚させようとしたのよ」
 「怖いお父さんね
    でもそれだけ石垣さんに期待したんだわ
               ショックだったでしょうね」
 「私も父に反抗して、
    腹いせも手伝って別の人と結婚したの
      そうすれば、菌の研究や父から開放されると考えたのね」
 「えっ・・おとうさん怒らなかったの」
 「それはもう怒った怒った、お前なんか家に来るなって」

 「意地も手伝って私は製薬会社の同じ会社の研究者だった人と
  結婚したの・・・
   でも・・こずえが生まれてまもなく別れたのよ」

 「離婚したの!」
 「残念ながらね・・・父は大喜びで
   大変だったな〜などといいながら家へ頻繁に
                来るようになったの」
 
 今日は石垣さんが自分のことを、これまでは何にも話さなかったのに
 いろんなことまで話し始めました。
 その後、お父さんが事故で体調を崩したために、お母さんの
 ふるさとの宮城県の方に来たのだそうです。

 お父さんは現役の復帰が出来ないことを知り、
 研究機関などに働きかけてこの「菌研」仙台事業所を
 設立して、自分も研究していましたが、建築後まもなく
 亡くなり、お母さんが石垣さんを呼びよせて「菌研」の
 管理などをまかせて
 石垣さんは仙台に住むようになったのだそうです。

 「お母さんは・・」
 「元気よ、あちらにいるの」
 「でも結局お父さんの仕事のお手伝いをしているわけだ
    石垣さんは・・」
 「そうね・・ほんの少しだけね
           父のようにはいかないわ」
 「3代目も、いるしね・・
   お父さん生きていたらほんとに心強いと思うわ」
 「そうかしら」
 「そうよ・・こずえさんもいい娘だし
            きのこのことすきそうだし」
           ・
           ・

 「あらあら・・話が長くなって」
 お父さんをきのこに夢中にさせることになった
 古い新聞紙をまた丁寧に袋に返して、

 「さ〜こっちよ」
 資料室からの続き部屋の
 いよいよ怖いところに入ることになったのです。







★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.95

          山菜きのこ メールマガジン
            「ちいくろ奮戦記」

                            ・・・・・・★★★★★★★★

    ・・・ ・サルノコシカケ(8.菌研)・・・・・・・

     「さ〜こっちよ」
    資料室からの続き部屋の
    いよいよ怖いところに入ることになったのです。

  部屋は、資料室の北側に配置されているために、心無しか暗く
  夏なのにひんやりと感じます。
  北側の窓は、ベージュのブラインドが降りており、石垣さんが
 窓に行ってブラインドを上げると昼の光が徐々に射し込んで
 部屋いっぱいに明るさが広がりました。

 部屋の中には、研究や実験用の器具機材が置かれています。
 壁際のほうには、やはり棚があって、きのこの標本のようなものが
 置かれてありました。

 「ここは父の部屋のようなところ・・
    体を悪くしてからは、大学や会社に行くことができなく
                  ここで、ほとんどを過ごしていたの」
 「お父さんの部屋!・・・・ 研究室?」
 「研究室!・・・そうね
         ・・・そうかもしれないけど」

 「これは・・」
 「それね・・きのこの培養に使う滅菌釜、恒温器などね」
 「きのこの培養!」
 「ほら・・きのこの菌をつくって菌からきのこをつくるの」
 「ふ〜ん・・これは顕微鏡ね」
 「そうよ・・古い顕微鏡よ
     今は、技術が発達して走査電子顕微鏡を使うのが
              普通になったの・・もうそれは使わないの」

 机の上には、ビーカーやガラスの瓶、ピンセット、ナイフ、ハサミなどが
 置いてありました。

 「この部屋ももう使わないのよ・・
    研修のとき標本を見るぐらい・・・
       そうそうそれから胞子紋の採取ぐらいかな」
 「胞子紋の採取!」
 「きのこの傘の裏側・・人間の指紋のようなもの」
 「そうなの」
 「ほらこれよ」

 机の後ろには、きのこやいろいろの写真が掛けてありました。
 その中のひとつを指して、小さい花びら模様の色あせた紙を
 見せてくれました。

 「これが・・胞子紋!」
  パイナップルを輪切りにしたような黄色の模様のきのこでした。

 「伊藤さんこっちよ・・標本」
 石垣さんが、写真や絵を掛けてある後ろの棚に回りながら
 小さい小瓶を持ってきました。

 小瓶の中には、小さい標本が入っています。
 「ほ〜ら・・よく見て」
 「なになに・・」
 「わかる・・」
 「ちいさくて」
 「これが冬虫夏草よ」
 「冬虫夏草!」

 はじめて見る「冬虫夏草」といわれたものは、小さな小瓶に
 入っており、また中に入っているものも小さくて
 よくわかりませんでした。

 「ほら・・下のほうに虫が見えない
              この虫は「ハチ」よ」
 「ハチ」
 「そうよ「ハチ」なの
    ハチの体から小さい紐のようなものが出ているでしょ」
 「出てる・・・これが・・「冬虫夏草」」
 あんまり小さいのにおどろきました。

 棚を見ると、何種類かの「冬虫夏草」が、ホルマリンのようなものに
 入っています。
 いずれのものも小さいものでした。
 「よく見つけたこと」
 「慣れると・・案外見つけることできるわ」
 「できるかな・・」
 これは・・・見つけることはできないな・・
 とても小さいし・・
 でもそんなに怖いものでもないぞ

 そのほか、同じように何種類かのきのこが、瓶の中に入っています。
 「このような・・瓶つめは扱いが難しいの
        油断するとすぐに壊れるから」
 「今は・・こっちのほうが主流よ」
 
 瓶詰めの隣には、乾燥したきのこが、こちらも
 何種類か陳列されています。

 サルノコシカケもありました。
 「サルノコシカケ?・・」
 「そうよ・・サルノコシカケ」
 「いろんなサルノコシカケがあるのね」
 
 石垣さんはそのひとつを手に取ると
 「きのこは、人間には良い働きをするものが
   あるって・・」
 「良い働きって・・健康にいいことのこと」
 「そう・・人間の体に・・
   毒をもって毒を制す・・ってことわざがあるわ」
 「でも・・毒は・・使用方法が難しい
        麻酔薬とか、睡眠薬とか、使用量を誤ると
          命の危険があるし」
 「抗生物質も・・服用していると副作用や・・
   抗体ができて効かなくなったり・・長い期間使用することは
                 体に悪いこともあるわ」

 「体に危険の無い、安全なもの
     食べ過ぎても・・飲みすぎても・・どのような人が
               用いても・・・安全なもの」
 「病院からいただいている薬と併用しても・・
                    害の無いもの」
 「父が求めていたものなの・・
     このような食品?・・薬?・・・健康食品っていうのかな
            自然食品・・・漢方薬・・なんて呼ぶのか」
 「それが・・きのこだ・なんて
     よっぽどきのこの魅力に取り付かれたのよ」

 「それに・・みんなが手軽に利用できるもので無ければならないって」
 「すぐ手に入るもの・・購入する場合には
          負担にならない金額でなければ・・」

 「サルノコシカケでも、、メシマコブ、アガリスクでは
 いかに効能があっても駄目よ。
 一般の人が手軽に手に入れられないから・・特殊な人のお金持ちの
 人たちだけのものでは駄目なのよ・・・
 また・・効能が優れてるかっらて人間の弱みにつけ込んでわけのわからないものを
 売りつける商業主義にも大反対だって・・
 このようなものは、意味が無いって常々言っていたわ」

 「そこにいくと・・この間のサルノコシカケは、自然の中でわりと
   たくさん採取できるし、・・季節に関係なく採取できるところも
   魅力だ・・お金も他に比べればかからないし」
 「飲みすぎても・・他と併用しても問題が無いから・・
   きのことしてはシイタケやエノキタケなどと同様・・有能なきのこよ」
 「このようなきのこが一番研究しがいがあるって・・」

 「それでサルノコシカケを・・研究?」
 「研究ってほどでは・・・
    そのようなものを追い求めていたの」
 「冬虫夏草は」
 「きのこの生態学的な意味から・・
              研究価値があるって」
 「きのこの生態学的な意味ね?」
 またまた難しくなってきたぞ・・生態学的な意味ってよくわからないし
 
 「ほら・・このサルノコシカケ
      この間のブナサルノコシカケよ」
 「こっちがコフキサルノコシカケ・・そしてこれがツリガネタケ」
 「このブナサルノコシカケを図鑑では・・このツリガネタケの
    大きくなったものとしてあるけど・・まったくの間違いよ」
 「この二つには明らかに違いがあるもの
    幼菌も違うし、断面も違うわ・・」
 「これが大きくなって・・このようになることは絶対にないわ」
 「まったく別の種類ってこと」
 「まったく別のものよ」
 「じゃ〜図鑑や参考書のまちがい」
 「そうまちがっているわ」

 「きのこの効能でも・・ツリガネタケはよくでてくるけど
            ブナサルノコシカケのことを言っているの」
 「だからこの間採取したものも・・
        医学的にも認められている効果のあるサルノコシカケだわ」
 「よかった・・良い物で」
 「採取条件もいいもの・・また呼んでね・・伊藤さん」
 「うん一緒に行こうね」
 
 研究室を眺めていると・・
 「おかあさん・・成美さんから電話よ」
 こずえさんが石垣さんを呼びにきました。
 「電話!・・急ぎ」
 「急ぐからって・・」
 「なにかしら・・ごめんちょっといってくる」
 「どうぞ・・」
 石垣さんが出て行くと
 「伊藤さん・・どうですか
    こんな趣味や研究・・マイナーですよね」
 「でもすごいね・・おかあさん」
 「おかあさん・・おじいちゃんよりきのこに摂りつかれているのよ
    もう夢中なんだから・・・山野草よりきのこのことなると」

 「こずえさんは・・好きなの」
 「きのこというより・・自然と接するのが好きなの」
 「いいわね・・おかあさんと共通の趣味があって」
 「まあ〜おかあさんに私があわせているんだけど」
 「えらいわ・・こずえさん」
 「そうかしら・・
    伊藤さん・・むこうでお茶はいりましたから
         いきましょ・・おいしいケーキありますから」
 「ありがとう・・いただくわ」
  
 先になって出て行くこずえさんを見て、石垣さんもいい娘さんを
 もって安心だわ

 ちょっと心配した、こわ〜いものも見なくてすみました。
 これで一安心・・・おいしいケーキをいただこう
 研究室を後に足は知らずに急ぎ足になっていました。
               ・
               ・
               ・
 夏の太陽は暑そうに庭のあじさいを照らしていました。





★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.96

          山菜きのこ メールマガジン
            「ちいくろ奮戦記」

                            ・・・・・・★★★★★★★★

    ・・・ ・サルノコシカケ(9.市場)・・・・・・・

  社長,金ちゃんの採った「サルノコシカケ」を、
 市場に持っていきました。

 市場はいつも活気があり、明るく生気にみなぎっているので、
 好きです。
 暗い朝の早いうちから、市場周辺は騒々しく賑やかです。
 国道の4号線から右折する車は、市場に関係する車が多く、
 あわただしい車が、警笛を鳴らしながら、通り過ぎていきます。

 「危ない車だな・・
   そんなに急がなくても・・・」
 そう思うんですが、構ってはくれません。
 タイヤに悲鳴を上げさせながら、走りすぎます。

 市場の中は、市場専用の荷車用ガソリン車が、ひっきりなしに
 行き来しています。

 ダダダダダ・・・ダダダダダ・・・
 バタバタ・・・ダダダダ・・・・

 市場内の通路の交通マナーもほとんど守られていないように
 見受けられるのです。

 近郊農家のトラックも野菜などをたくさん積んで、
 次から次へと、目的地の場所に移動していきます。
 日焼けしたおじさんおばさんが、ダンボールに詰め込んだ
 野菜をトラックの荷台から、運び込みます。

 多くのきゅうりや、とうもろこし、とまと、なす等が
 運びこまれてきます。
 長距離トラックからおろされた荷物が市場の中を所狭しと
 積み上げられています。

 大きなスーパーの専用トラックが我が物顔に、
 駐車場を占領しています。
 その周りをさっきの荷車エンジンやら、フオークリフトが
 取り囲んで荷物を入れています。
 
 いつもの場所に車を止めて、40kgほどの
 「サルコシカケ」を、台車に載せて運びます。
 台車はコンクリートの床の上をガラガラ音を立てながら
 市場の売り場へと向かいます。

 途中知り合いの仲買さんが、
 「今日は何もって来たの」
 いいながら、台車に近づいてきます。

 「おはようございます
    山菜はもう終わりなので、大阪さんから
  頼まれた、サルノコシカケを届けにきたの」
 「「北陽」さんもどうですか・・」
 「サルノコシカケ!・・・
    市場では買わないんじゃないの・・
   うちでも・・お客から頼まれれば・・だけど」
 「う〜ん  まあ〜いいもの採れたら
    また教えてよ・・じゃ〜」
 どうやら、大阪さんのほうでは、サルノコシカケの
 注文はなさそうです。
 そっけなく立ち去ってしまいました

 山菜売り場へ行きましたが、山菜はほとんど何も入荷されていません。
 担当の大阪さんの姿も見えません。

 構内はさっきのエンジン車がひっきりなしに行ったり来たりしています。
 荷受所で伝票を記入、

 「おばあちゃんはこないの」
 「そのうち皆さんの顔を見に来ますよ」
 「元気だから・・・
        山へまだいってんの」
 「山が元気の秘訣ですから
       まだまだ・・・・」
 「じゃ〜嫁さんも大変だ
     はははははは・・・・」

 荷受所では、必ず会話を交わします。

 この字が読めませ〜ん・・
 ばあちゃん字が達筆すぎるっていっといてよ
 小学生にわかる字で書いてって
 はははははははは

 ばあちゃんのお土産は
 無いの・・・いつも置いていくのに・・
 忘れてきたな・・年取ったのかって・・
 物忘れひどいよ・・他は忘れても・・ここは忘れるなって
 はははははははは

 売り場へ戻ると大阪さんが、
 売り場へ戻ってきています。

 「おばあちゃんから頼まれて・・
          サルノコシカケもってきました。」
 「ご苦労さん・・で・・
     どれだけ持ってきたの」
 「40kgほど」
 「40kg!」
 「少なかったんですか」
 「いやいや・・多いんだよ」
 「多いんですか!」
 「半分の20kgでも十分だったんだけど
   こんなに採れると思わなかったから、
      採れた分だけ持ってきて・・・って
                  こっちが悪かったかな〜」

 「どれ・・・」
   いいながら携帯電話を取り出すと
     おばあちゃんに電話を入れたのです。
 全く便利なことになってしまいました。
 市場での会話がそのままお茶の間に行ってしまうのですから

 「こんなに要らないよ・・どうする」
 「・・・・」
 「そうか・・」
 「・・・・・」
 「わかった じゃみなもらっておくか・・うん・・またね」

 電話を耳から離し
 「今電話で・・話したから
      みなもらうことにした」

 「ありがとうございます。」
 荷物を降ろして、
 「大阪さん・・
   サンショの実を市場に出せるかって・・」
 「サンショの実!
     う〜ん  安いよ・・本当に」
 「今市場では物がみな安いんだよ
    品物にこだわらずに安いものは、捌けるけど
       高くなると売りにくい」
 「山のものは採取に手間がかかるけど・・
      その良さを理解させるほど高くは・・高くはね〜」
 「昔は・・
    そのものの良さが・・野菜と山菜との
      区別がはっきりとできたんだけど・・
           時代の流れかな〜 今の人たちの傾向は・・」

 「手間のかかるものは、敬遠されがちなんだね
    それに、流通が良くなって、買い置きや、食品の
               保存の必要がなくなってきたんだね」
 「若い人は共働きが多く、料理に時間を費やせる時間も無いし
   それより料理そのものが出来なくなってきているんだよ」
 「料理するより出来上がっているものを、
          買っていって、パックそのままで出すんだ
      茶碗も要らないし、箸も、・・
       そのうちなべも、ガス器具も要らない・・」

 「包丁よりもハサミのほうが使われてるなんて
                  笑い話もあるくらいだから」

 う〜ん・・料理の話になると、
              まずいな・・・・苦手だから

 「そのようなわけで・・調理に時間のかかる・・
             物は、敬遠されるって・・・こと」

 「サンショの実もそう
     食べ方も知らないし・・すぐに利用できないから
             ・・・利用方法がわからないのさ」
 なんか自分たちのことを言われているみたいで、そういわれると
 余り聞きすぎても・・・

 「そうですか・・じゃ〜
   おばあちゃんにいっときます。
       手間をかけても、それほどの金額で売れないって」
 「うん・・うん・・そういっといて」
 「じゃ〜これお願いします」

 サルノコシカケを売り場に置き、市場の中を見学することにしました
 どのようなものがどのような金額で取引されているのかを、
 見ておきたかったからです。

 相変わらずに、荷車のエンジン車は、あわただしく動き回って
 います。
 車の周辺には丸くガードのようなものがついていて、狭いところを
 走るとき、他の車に当たったり、柱や建物に当たっても
 エンジン本体まで被害が来ないようにガードされています。

 もうその丸いガードは、至るところ擦り傷でいっぱいになってる
 車がほとんどです。
 
 中卸しの売り場は市場の中の端のほうにあって、小売店の店主やらが
 朝早くから、買出しに来ているのです。
 魚市場ほどの活気はありませんが、やっぱりここも活気があって
 売り買いが威勢よく行われているのです。

 山菜などは、店先に出ているのですぐわかります。
 何件もの店先を眺めていきますが、この時期の山菜は
 ほとんどありません。

 店によっては「あかみず」や、葉わさびが並んでいますが
 それ以外は目に付くようなものはありませんでした。

 やっぱりシーズンオフなのかな〜
 
 一通り見終わってから、車に戻ると時間は5時30分になっています。
 6時になると、セリが始まりますので車が込み始めます。
 
 「出なくちゃ・・」
 
 市場を出て、
 「ふ〜・・・
   シーズンオフか・・おばあちゃんがっかりするな」
 そう考えながら車を走らせました。

 窓からは朝の日差しが差し込んできます。
 風が柔らかい空気を運んできました。

 でも気持ちは少し落ち込んでいました。






 ★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.97

          山菜きのこ メールマガジン
            「ちいくろ奮戦記」

                            ・・・・・・★★★★★★★★

    ・・・ ・サルノコシカケ(10.市場)・・・・・・・

  数日後に、市場から売買された値段の通知が来ます
  案の定市場の値段は安く、名人はとってもがっかりしていました
 「こんでは・・採ってもらって仕入れた値段より安いちゃ・・
           折角頼まれたものを採ってやったのに・・」
 「やっぱり自分たちで採らないと・・
                   合わないな〜」
 「でもおばあちゃん・・
       あれは私たちには・・とっても無理よ
                      採れない・・・」
 名人は値段が安いと、とてもがっかりしてもう元気がなくなります。
 気の毒なほど元気がなくなってしまいました。
 「おばあちゃん・・次は高く買ってもらえるから・・」
 「うんだがな〜売る人・・
      採るのがどんなにひどいが・・わがんないんだ」
 「余り多く採りすぎたかしら」
 「うんだ・・多いと安くすっから
    全部出さないでとっておけばよがったがな!」

 市場の伝票を前にがっかりし、気を落とした名人がいました。
 放心したかのように、しばらくはなんのことも手につかないのです

 傍目でみていると、気の毒やらおかしいやらです。
 一日中元気の無い名人の姿がありました。
            ・
            ・
            ・
 次の日、田山さんにサルノコシカケの件や、きのこのことを
 相談しに山に行きました。
 田山さんは、「きこり」なので雨の降った日や、天気が悪そうな日には
 仕事を休むことにしているのです。
 今日は名人が電話したら、仕事を休むというので、一緒について
 いくことにしました。

 田山さんは息子さん夫婦と暮らしています。
 息子さん夫婦は、牛を飼っています。
 また高原野菜を販売しているのです

 息子さん夫婦も、牛の食事の世話が終わり休憩をしているところでした。
 「安かったの」
 「うんだ・・・市場の人
     訳わかんないがら・・安く売ってしまったの」
 「サルノコシカケで損してしまったの」
 「損ってことではないけど・・経費をひくと
                 やっぱり損だね」
 「今は、何でも安くって
     野菜でも大変・・かえってつくらないほうが」
 息子さんが言います。

 「市場なんかでのあの値段で・・農家の人やっていけんのかな〜
    野菜の値段も、農協や市場の言いなりだから
                 こちらの都合は関係ないからね」
 「だから大規模にして、人件費や経費をできるだけかけないで
     多収穫を計らないと、価格では対抗できないし
      儲からない」
 「大きなグループを組んでやるとか、組合のように組織化するとか
    そのような農業形態にしないともうやっていけない時代だね」
 「専業農家では、もうやっていけないし、
    畜産も一緒・・・個人個人では・・・」
 「それに・・相手に値段を決めさせるんではなくって
     こちらの値段で売るようなそのような商品作りや、
              販売組織、方法を考えないと駄目だね」

 若い息子さんは、現状の農業経営では行き詰るっていいます。
 土地を切り売りしながら生活をするようでは・・先が見えてる
 借金も増えていくし・・
 牛もBSE問題で・・環境面での整備にもお金がかかるし・・
 「やっぱり・・資金力がないと
       農業も難しくなってきた
     生活が豊かになってきた分、諸経費がかかり
    昔のような訳にはいかないんだよ・・おやじ」
 いつの間にか、田山さんに息子さんが愚痴を語っているようです。

 
 「どっかつとめて二人働いて給料でももらったほうが、生活は楽だよね」
 隣のお嫁さんに話しかけています。
 お嫁さんは遠慮してか、余り言葉を出さない「賢明なお嫁さん」のようです
 息子さんのほうを見て、微笑むだけでした。

 農業も厳しいんだな〜
 でも農業の良さもあるよ。自分の考えでいろいろできるし、
 収入に見合った生活をすればいいし、何よりも
「自然と向き合って生きる」って、かえがたいものがあるんだけどな〜
 でも・・わからないよね・・
 自然と付き合うことがこんなにも素晴らしいことだなんて!
 他をみてみないとわからないの・・失敗をしないとわからないの・・
 経験をふまないとわからないの・・・

 あ〜人間って、その立場にならないとわからないことばかりなんだ・・
 お年寄りの気持ちは・・年をとらないと
 母親の気持ちは・・・母親にならないと
 農家の人には・・・農家の人にしかわからないことが

 本当の幸せって、それもわからないのよ
 身近に幸せがあることが・・

 年齢を重ねるごとにわかることが多いの・・年齢を重ねることは
             人生ってことがよく理解できてくるんだわ

 でも・・自分が犯した過ちを、子供たちも犯して・・
   知らなかったことが母親の年齢になって知るようになり
   子供たちも・・自分の年齢になって理解するようでは・・
   遅い・・遅いよ・・同じ過ちをしないと理解できないなんて!
 人間は・・不完全だわ・・失敗をしないと、年を重ねないと
                  わからないことがあるなんて

 息子さんの言葉でいろいろな思いが頭を巡りました。
 生きていくのは大変なのね
 楽しいことより苦しいことが多いなんて・・・やっぱり不完全だわ
 このような若い人たちをも、苦しめているわ
 人間は・・不完全だわ

 帰り際に、
 「家の周りにきのこでっから、見ていがいん」
 「家の周りに!」
 「後ろの杉林の所と、土手のところに」
 行ってみると、白い小さなよう菌がでていました。
 「名前はわがんないんだね
            みんな食ってる」
 傘は白く表面が光っています。
 そうだ、これはこの間石垣さんと採取したキノコと同じものだわ
 「田山さん・・これオオイチョウタケっていうきのこなの」
 「オオ・・イチョウ」
 「オオ・イ・チョウ・タ・ケよ」
 「オオイチョウタケ!」
 「そう・・オオイチョウタケ」
 「あら・・ちいちゃんくわしいごど」
 石垣さんに教わったばかりでしたが・・
 「きのこ・・勉強しているから」
 「あら・・凄い」
 田山さんの奥さんが、ほめてくれました。
 「おばあちゃん、これ市場へ出せるよ」
 「本当・・大丈夫かな」
 「大丈夫よ・・食べられるし・・味もいいし
        形もいいわ・・
    それに・・見たところ田山さん所だけでもずいぶん採れそうだし」
 「安くないかね」
 「これは安くないわ」
 「よかった・・売れるんかね」
 「売れますよ」

 「今日ちいちゃん連れて来てよかった」
 名人の朝の元気の無かった顔が、明るくなりました。
 田山さんと2〜3日ぐらい様子を見てから採取することにしました。
 田谷さんは近くの山でも同じものが採れるから
 探しておくということになりました。

 帰りの車の中で、息子さんが言った
 「値段はこちらで決めて、販売する方法」でなければ
 これからは、やっていけないという言葉が頭に
 浮かんでは消え、浮かんでは消えしました。







★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.98

          山菜きのこ メールマガジン
            「ちいくろ奮戦記」

                            ・・・・・・★★★★★★★★

    ・・・ ・サルノコシカケ(11.海を渡る)・・・・・・・

  「伊藤さん・・
   サルノコシカケを採りに北海道に行かない」
 「えっ・・なに・・北海道!」
 「どうして・・北海道へ」
 
 石垣さんから電話があり、唐突に北海道に「サルノコシカケ」を
 採りに行くというのです。

 こちらは、田山さんの息子さんが言う
 相手に値段を決めさせない「値段はこちらで決めて、販売する方法」
 について、いろいろ考えているところでした。
 うまく頭が廻らず、そんな方法ってあるかなあ〜と思っていました。
 そこへ、突然の北海道の話です。

 午後から石垣さんが来ました。
 北海道にどうしても行きたいので、一緒に行かないかということなのです。

 「ほら・・先日うちへきたとき、サルノコシカケみたでしょ
                      ツガサルノコシカケ・・」
 「はあ〜」

 サルノコシカケのことを言われてもなにが何だか、種類も何も
 さっぱり見当がつかないのです。
 みな同じように見えるし、どこがどう違って、なにがちがうのか
 なぜ北海道なのかも・・

 石垣さんは熱く語ります。
 「ほら・・この間社長さんと金ちゃんと行ったとき採ったサルノコシカケ」
 「うんわかる・・石垣さんがブナサルノコシカケって教えてくれたやつね」
 「そう・・あのサルノコシカケ・・・
   この奥山ではブナの木に出ているサルノコシカケは、
       あのブナサルノコシカケと、コフキサルノコシカケなの」
 「ブナサルノコシカケはブナの木以外にも
                    多くの木に出ているわ」
 「まず・・多いのがとちの木、ナラの木、白樺の木、
                  ときどき楡の木にも出ているし・・」
 「ブナの木が90%で、ほとんどはブナの木なんだけど」
 「コフキサルノコシカケは浮気なサルノコシカケではなく
                       ほとんどがブナの木ね」
 「このブナサルノコシカケについて・・
               自分の目で確認したいの」

 「ブナサルノコシカケと、北海道がどのような関係が・・」
 「ブナサルノコシカケは広葉樹に発生し、
             ツガサルノコシカケは針葉樹に発生するの」
 「ツガサルノコシカケとブナサルノコシカケの違いを
    この目で確認したいの、うちにあるツガサルノコシカケは
                   もう大分前のものだから・・・」
 「確認してどうするの・・」
 
 「まず・・ブナサルノコシカケは図鑑にはないの
     どの図鑑にもツリガネタケの大きくなったものとあるけど
    ツリガネタケの幼菌と、ブナサルノコシカケの幼菌は
     全く違うものだから・・・・ツリガネタケの大きくなった
                    ものではないわ」
 「そうすると・・
    北海道では針葉樹林が多くてそこに発生する
     サルノコシカケはツガサルノコシカケといっているけど
   このツガという言葉は、針葉樹の「栂」材からきていて
     栂の木に多く出るからツガサルノコシカケと命名したと考えるの」
 「ところが本州は、針葉樹が少なくて、ブナのような広葉樹が多くて
   そこに出るサルノコシカケをツガサルノコシカケと呼ぶには
    ふさわしくないと思ったのか、ツリガネタケにしてしまったの」
 「普通一般的には、サルノコシカケであれば北海道も、
   本州も同じものがあってもいいはずなのに、ツガサルノコシカケは
     見当たらないのも・・おかしい・・・だから・・」

 「だから・・?」
 「ツガサルノコシカケは、まれに広葉樹に出ることがあるって書かれてるの」
 「私は・・ツガサルノコシカケもブナサルノコシカケも同一種類
                    だと考えているの・・・」
 「サルノコシカケを愛用している人たちは、このサルノコシカケの
      種類にも結構こだわっている方も多いのよ
   そのような人たちのためにも、はっきりしておきたいの」

 「まずツガサルノコシカケの発生状況をみてみたいわ
     できるだけ多くの発生状況を観察するの・・・
        それから・・採取したてのものの、中を見てみたいの
            詳しく比較してみたいの」

 やっぱりこの人は、きのこ学者だ
 そこまでこだわる人は普通にはいないもの
 お金をかけてまで、調べに行くなんて

 「何のために調べるの・・!」
 「う〜ん・・誰のためでもなく
            じぶんのこだわりかな〜」
 「伊藤さん迷惑・・!」
 「ううん・・でも・・」
 「あっ・・・費用のことは心配しないで
    私のほうからお願いすることだから・・私が準備するから」
 「お金もだけど・・それよりも・・
   私たちだけで・・見つけられるかしら
     北海道は知らないし・・どこへ行ったらいいのかも
             見当がつかないから・・・大丈夫かしら」

 「そうね・・本当は北海道の知人に頼もうと思ったんだけど
     そうすると・・気兼ねしたり時間や場所などに制約があって
           思うように活動ができないから・・・」
 「たくさんの事例を見たいの
    そのためには・・時間がかかってもしょうがないわ」
 「時間がかかってもって・・
           長くいる予定なの」
 「うまく見つかれば、すぐ帰れるけど・・
    でも見つからないことも考えて一週間ぐらいあれば・・」
 「一週間も・・
   本当にサルノコシカケ探しに・・そんなにいるの」
 「見つからない場合よ・・」

 「伊藤さんとなら・・うまく見つけられると思うんだけど」
 「二人だけで・・」
 「そうふたりで・・こずえは大学のことで時間取れないって
                     生意気なことをいうのよ」
 「大丈夫かな〜二人だけで
    北海道はヒグマが出るっていうし・・心配だわ」
 「大丈夫よ・・平気よ平気」
 「北海道は行ったことあるの」
 「あるけど・・札幌とか旭川とか山には関係の無いところ
                 山へは今回が初めて・・でも平気よ」

 「私も札幌は・・弟さんがいるから何回か行ったけど
      山へは・・・・6月ごろおばさんがいるからって
            登別の近くの開拓のところに行ったけど」
 「おばさんは・・一人暮らしで
     山奥なのでクマが出るから・・危ないって」

 「大丈夫・・大丈夫よ
    地図もあるし・・観光気分でいきましょ
       あても無く山を駆け巡るって素晴らしいじゃない」
 「でもサルノコシカケって・・
     奥山にしかないのよ・・北海道もおんなじだと思うけど
    道もわからない二人だけで・・奥山に入るなんて」

 「北海道の夏は・・カラッとして気分がいいのよ
     広い大地が待ってるんだわ・・伊藤さん」

 ああ〜もうだめだ
 もうすっかり行くことになっている
 気持ちはもう北海道にいるんだわ

 二人で行く日程を打ち合わせて、予定はたてないで、最長一週間の予定で
 北海道の山々の、サルノコシカケ採りに行くことになりました。

 本当に行くの
 大丈夫なの
  
 楽しそうに帰っていく石垣さんを見つめながら、
 不安がよぎりました。






★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.99

          山菜きのこ メールマガジン
            「ちいくろ奮戦記」

                            ・・・・・・★★★★★★★★

    ・・・ ・サルノコシカケ(12.北へ)・・・・・・・

  計画はとんとんと進み、いよいよ出発の日になりました。
  8月の太陽はじりじりと暑く、ジイジイとセミの鳴き声が
  うるさいほど耳につきます。
  朝晩はやや涼しくなったとはいえまだまだ夏盛りです。
  小中学生の夏休みもまもなく終わろうとする
  8月の後半に計画は実行に移されました。

 朝早々に元気に来た石垣さんは、名人に挨拶すると簡単に
 いきさつを説明すると、私の荷物をさっさっと車に積み込みました。

 とてもテキパキテキパキと機敏な動きの石垣さんです。
 「伊藤さん・・これでいいの」
 「う〜ん、大丈夫と思うけど」
 「いいの・・いいの・・我儘な旅だから
               少しぐらいのものが無くても平気よ」
 「あの・・田山さんから借りるものは!」
 「どうしたの」
 「行く途中寄って借りていくの」
 「あっそう」

 「ほら伊藤さん・・新しい地図買っちゃった
              これはなかなかいける地図なの」
 手には真新しい地図がありました。
 「どんなところが!」
 「ほら・・宿泊施設が載っているので・・自分たちのいる場所で
      近くの旅館がどこにあるのかよくわかるようになっているの」
 「それは心強いわ」
 「ねいいでしょう」
 「うん・・いいね」
 道路地図には赤い点のマークでホテルや、旅館などの宿泊施設が
 記載してありました

 「さあ〜いざっ出発ね」
 とても張り切っている石垣さんです。

 何か単なる観光旅行でサルノコシカケのことなど
 全く考えていないように見えます。
 もちろんどこを探そうかだなんて少しも考えてなさそうです。

 私は二人だけで大丈夫かな〜、見つけたとしても採れるかどうか
 不安なのです。
 なのに石垣さんは全くそんなことは気にしていないようです
 おくびにも態度には表さないのです。


 おばあちゃんに
 「いってくるから」というと
 不安げに「気をつけでな」「あんまりむりすんでねえど」
 という言葉が返ってきました。

 石垣さんは、
「お母さん・・大丈夫だから心配しないで
      たくさん北海道のサルノコシカケを土産に持って帰るから」
 などと話しているのです。

 空は夏の空で澄み切っている青い空でした。
 台風が3日前に通ったばかりなので、
 天気はここ数日は晴れの天気予報でした。
 北海道の天気も大きな崩れはないと長期予報が出ていました。

 途中田山さんのところによって、手の届きそうに無い
 高いところに発生している
 サルノコシカケを採る場合の伸縮棒を借りました。

 「サルノコシカケは、傘の上に引っ掛けて引き落とすのではなくて
              下から突き上げるんだ」
 「そうすると、簡単に落ちてくるから」というのです。

 要するに、上から下へではなく、下から上へ突き上げるのだそうです。
 上からはいくらやっても採れないものが、下から突き上げることで
 いともたやすく剥がれてくるのだそうです。

 二人で顔を見合わせて・・へえ〜と感心してしまいました。
 さすが山のエキスパートです。

 田山さんは、心配げに
 「二人で大丈夫!」
 私が不安げに・・「う・・う・・う・・」
 などと、言葉に詰まろうものなら、すかさず石垣さんが
 「大丈夫ですよ・・大丈夫です」
 と、言い返すのです。
 危ないところに行きませんし、山へは深くは入りませんし
 安全第一でやりますからなどと・・ビルの建築現場の標語の
 ようなことをいいかえします。

 計画では行くときは元気があるので、いろいろ見て行き
 帰りは一直線で帰るという計画でした。
 そのひとつに、行くとき下北半島の北限のサルと、サルノコシカケを
 見てみようという提案なのです。

 ひょっとすると本当にサルノコシカケにサルが腰をかけている光景が
 見られるかもしれないと真顔で話すのです。
 そんなことで行くときは、下北半島の突端、大間からフェリーに
 乗ることになりました。

 脇ノ沢のサルや、その周辺のサルノコシカケも探すことになりました。
 北海道と近いので、ツガサルノコシカケが
 移住してきているかも知れないなどというのです。


 サルがサルノコシカケに腰をかけた様子を撮るなどとうれしそうです。
 また「ツガサルノコシカケ」が、見つかるかもしれないなどと
 興味深々なのです。
 
 私も青森や下北半島へは初めてなので、恐山のイタコや、北限の 
 サルにも興味があったので賛成しました。

 薬研温泉って温泉の湯が白くて湯船の底が見えないぐらいの
 湯の花があるらしいし、その温泉にも浸かれるし、

 旨いイカ料理が食べれるかもしれない
 大畑はイカ漁港で名高いし、
 陸奥湾はホタテの養殖では日本一かもしれないし
 ホタテ料理かな・・

 サルノコシカケより食べるもののほうに関心があるなんて
 わかったら石垣さんはどう思うのかしら

 車の運転は交代でやることになりましたが、運転は余り得意でないので
 高速道路や込み合ったところなどは石垣さんにお願いすることにしました。

 車は順調に東北自動車道を北に走ります。
 お盆の帰省ラッシュも過ぎて、上下線とも混雑は余り無く
 マイペースで走ることができます。

 乱暴な運転や、追越をするための急スピード等もありません
 安心して運転ができるのです。
 この時期を選んでよかったななどと思いました。

 「伊藤さん・・音楽聴かない
           そこにCDがあるので好きな音楽選んで」
  後ろは宿泊のための荷物や、山歩きのための着替えとか、
  サルノコシカケを採る道具とかでいっぱいになっています。

 ボックスに詰まったCDをとり出し見ていると、
 「カーペンターズなんかどう」
 「いいね 私も好き」 
 「ほら・・英語の勉強にいいからって
                 買って勉強したの」
 「ほんと・・発音もわかりやすいし
           それもあるけどそれより曲も歌も大好きよ」
 カセットにCDを差し込むと、透明な歌声が車内に流れました。

 外は晴天の青空です。
 自動車道の擁壁には、草が青々とし木々の緑がまばゆいばかりです。
 こんなに贅沢な旅行ってあるのかしら!
 時間にも縛られず、誰にも束縛されずに自由に気ままに旅ができるなんて
 石垣さんのお陰だわ

 そう思いながら石垣さんのほうを見ると、熱心に前のほうを見ながら
 集中して運転しているようです。
 その姿を見てクスッと、わらってしまいました。
 すると・・こちらをみて
 「なにかしたの・・」
 「ううんなんでもないの!」
 横目でそうっと見ているととても頼もしく思えてきました。

 また笑いそうになったので目をつぶって、音楽を聴くふりをしました。
 カーペンターズの歌声は久しぶりに聞きましたが、やっぱり
 自分にはこのような歌が合うのかもしれない、
 何で石垣さんがこのCDを持っていたのか・・
 う〜ん・・考えや、性格が似ているのかな・・・
 そう思うとまた石垣さんの顔を見てみたくなりました。
 薄目を開けて横顔を見ると、やっぱり集中して運転している
 石垣さんがいました。

 「うふっふふふっふ」
 「どうしたの・・伊藤さん・・何がおかしいの」
 「ごめんごめん・・私思い出し笑いするの
      ピントがずれてるの・・ネジがおかしいのね
            気にしないでね・・運転に邪魔して悪い!」
 「私もあるわ・・
     笑い出すとおなかが痛くなるほど笑い出すの
                       笑うって苦しいよね」
 「お腹が痛くなるほど笑うのはわかるわ
            私も笑いすぎには注意しなければ」
 「でも・・しかめっ面よりいいよね」
 「いい・・いい・・絶対」 
 「余り難しく考えないことね・・物事を
               くよくよしないことよ」
 「そうよ・・物事は
    なるようになるのよ
              ケセラセラよ」
 「そうね・・ケセラセラよ」
 「ケセラセラね」

  二人をのせた車は快調に自動車道を走っていきました。





★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.100

          山菜きのこ メールマガジン
            「ちいくろ奮戦記」

                            ・・・・・・★★★★★★★★

    ・・・ ・サルノコシカケ(13.北へ)・・・・・・・

  
  「そうよ・・物事は
    なるようになるのよ
              ケセラセラよ」
 「そうね・・ケセラセラよ」
 「ケセラセラね」

  二人をのせた車は快調に自動車道を走っていきました。
            ・
            ・
            ・
 東北自動車道の、岩手県に入ります。この岩手県がとにかく
 大きいのです。道は山そして山の連続です。
 いけどもいけども岩手県といったかんじです。
 一説には四国と同じくらい大きいというのですが、
 道も空いていてのどかな心やすらぐ風景が続きます。

 青空の道のかなたからは、

 ”田舎なれども サーハーエー
  南部の国はサー
  西も東も サーハーエー
  金【かね】の山 コラサンサエー

 などと、ほおかむりしたおじさんが、のんびりと牛とともに
 「南部牛追い歌」を歌いながら歩いてくるようです。

 「石垣さん・・東北のほうでは民謡がたくさんあって
            歌うのも盛んよね」
 「そうね・・こちらではこのお盆ぐらいの時期から
    稲の刈り取りぐらいまで毎週のように
    どこかでは、民謡の全国大会が開かれているらしいわ」
 「涌谷ってとこでは、「秋の山歌」の
     全国大会だって言ってたような覚えがあるけど」
 「それから・・「お立ち酒」とか、「南部牛追い歌」
                   全国大会もあると思うけど」

 「民謡も聴いてみるといい感じのするものもあるよね」
 「歌詞が短い割には・・
     その割には・・深みがあるように思えるけど」
 運手しながら・・
 思いついたように
 「新相馬節なんか、歌詞が
             驚くほど単純なの」
 「こんな歌よ」
 「あれ!・・歌えるの」
 「いやね・・歌でなくて  私のは朗読
      朗読よ・・歌だなんていったら怒られそうよ」
 そういいながら、歌い始めました。

 ハアー
 遥かかなたは 相馬の空かヨ
 ナンダコラヨト ハ チョーイチョイ
 相馬恋しや なつかしや
 ナンダコラヨト ハ チョーイチョイ 

 「こんな感じ・・どう」
 「上手・・お上手よ」
 思わず手をたたいてしまいました。

 「上手ってほめられるほどのことはないけど
   ほら・・この歌詞は
    遥かかなたは 相馬の空か
    相馬恋しや なつかしや
   この2小節でなりたっているのに
   歌うと、なんて情景のこもった哀愁のある歌に
                    聞こえるんでしょう」
 「奉公に出された娘が、相馬の空のほうを
       見て、早く奉公の年季明けを願った歌なのかしら」
 「うんそれもありそう・・
   わたしは、伊達藩にお勤めに来ている相馬の藩士が
    故郷の奥さんやお子さんを思っての歌なのかしらって」
 「そいうかもしれないね」
 「とにかく味わいがあるわ!」
 「うん・・ある
   じっと聞いていると心を打ってくる何かがある」
 「民謡もいいよね」

 「ウフフフッフ」
 「あれ・・どうしたの」
 「ごめんね・・・・
   私たち二人とも民謡に心が惹かれるってことは、
     少しおばさん傾向に向かってるって事でないかって・・
                 そう考えたらおかしくなって」
 「あら・・物事を深く見つめることができるようになったのよ
               心が豊かになってきたのよ」
 「ウフフフッフ」
 「なに!」
 「だって反論するんですもの・・
         心当たりがあるからじゃないかと思って」
 「まーいじわるね」
 「ごめんごめん」
   ・ 
   ・
  少し間をおいて石垣さんが
 「伊藤さん・・さる酒って知っている」
 「さる酒!」
 「さる酒よ」
 「さるのこしかけ酒のこと」
 「違う・・違う」
 「じゃ〜わからない」
 「こんな歌があるわ」

    さる酒か 顔をうつたる 雫(しずく)あり
    さる酒に 消ゆる小雪も ありぬべし
 
 なんで、こんな歌まで覚えているの この人は
 車の運転をしながら、新相馬節を歌ったり、俳句を
 詠ったり・・
 
「きのこや山菜を歌った句は少ないけど、これは数少ない句だから・・
 お酒の好きな人は、自分の味わったことの無い「酒」には、
 強い憧れを持つものなのね。一度は飲んでみたいと」

 「サルが酒をつくって飲んでいたという話が地方に行くと
  いろいろとあるの・・このさる酒は、さるが木の実を冬に備えて
  蓄えていたら、その木の実が醗酵してお酒になったんですって、
  驚いたサルたちは、これはおいしいもんだということで
  せっせとその木の実を採っては、貯蔵して醗酵させて
  さる酒にしたんだわ・・そしてさるの祝い事にこのさる酒を
  飲んで、大賑わいしたのだと思うわ」

 「どう・・さる酒を飲んでいるサルさんたち
                 想像するとたのしいよね」
 「さるさんたち飲むとき、入れ物に器を使うのかしら」
 「私の想像なんだけど・・
   まず木の実の貯蔵場所は、岩の洞窟の窪みね・・
   日の射し込むところで醗酵させるの、ちょうど良いくらいになると
    その窪みのところから醗酵したさる酒を、大きな木の葉などで
      汲んで飲むの・・さしずめトチノ木の葉なんかいいね」
 「美味しいから・・さるさんたちもならんで順番待ち!」
 「順番待ちよ・・遠方から来られたお客の猿さんが
      先だから・・何しろ上手く醗酵させるには
    難しかったと思うから・・いい酒にはさるさんたちも目が無いわ」

 「木の葉では、上手くすくえないのでは」
 「そこが違うの」
 「違うって・・どう」
 「猿って・・猿知恵ってあるでしょ
    上手く二つに折って船のような格好に作って飲むの」
 「本当に・・想像でしょ」
 「下北へ行くとわかるのよ  猿知恵のなんだかが」
 「サルノコシカケに腰掛ている!」
 「ただ腰掛けているんじゃないの
      一服しているの・・キセルかなんかだして」
 「想像しすぎよ 今度は猿さんに火を使わせるの」
 「あらら・・タバコでも火の要らないたばこ
               噛みタバコのようなものね」
 「だったら・・メガネなんかもかけてるかも」
 「あっ・・それもあるかも・・メガネね・・あるかも
   ちゃんと観察しなくちゃ」
 「お〜忙しい人だこと」
 「う〜ん・・海を見ながら
   サルノコシカケに腰をかけて一服している猿さん
                      素晴らしいわ」
 「想像をたくましくして・・がっかりするんだから」
 「いいの  夢があって うふふふふふふ」
 

 「ところでさっきの木の実はなんて木の実なの」
 「・・サルが大好きで採取している木の実だからって
             その木の実にさるの名前をつけたの」
 「サルのつく名前・・木の実
      さるのこしかけ・・・ではないと・・」
 「う〜ん  クイズは弱いから」
 「さるなし」
 「さるなし!」
 「さるなし」
 オーム返しに同じ言葉を繰り返します。

 「さるなしね」
 「さるなしは、葡萄や木苺と同じように醗酵して
                    お酒になるの」
 「甘いの・・美味しいのよ」
 「作ったの・・石垣さん」
 「いや〜ね・・つくって飲んだらって・・話よ」
 「な〜んだ・・」
 「ほら・・さる酒の歌に歌われたほどだから
               きっと美味しいと思うんだけど」
 「石垣さんも無類の酒好きってこと」
 「いいや・・見慣れぬ物への好奇心よ」
 「あらら・・隠してる」
 「でもこのさるなしも今では採取は難しいの
   「こくわ」といって山の人たちの人気の木の実だったの
           余り採取されて絶滅状態になったようよ」
 「じゃ〜さる酒は・・」
 「う〜ん 私たちには無理ね 田山さんたちにお願いしなければ
    採れないから・・さる酒は高価なものになってしまうわ」
 「残念ね」
 「うん・・本当は少し残念」
 「やっぱり」

 「うふふふふふふ・・」
 「うふふふふふ・・・」
 二人でおかしくなってしまいには、大声で笑い出しました。
 
 東北自動車道は、北の高地でよく見られる「ななかまど」が
 道の両側にずーと植えられていました。
 よくこの地に来ましたねと呼びかけているようでした。




★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.101

          山菜きのこ メールマガジン
            「ちいくろ奮戦記」

                            ・・・・・・★★★★★★★★

    ・・・ ・サルノコシカケ(14.北へ)・・・・・・・

 東北自動車道は、北の高地でよく見られる「ななかまど」が
 道の両側にずーと植えられていました。
 よくこの地に来ましたねと呼びかけているようでした。
            ・
            ・
            ・

 東北自動車道を降りて、下北半島のマサカリ形をした柄の付け根の
 部分の野辺地町へと向かいます。心なしか潮の香りが届いているような
 そんな雰囲気です。

 途中ドライブインによりました。
 最近のドライブインは、コンビニの攻勢に押されてか、以前のような
 活気が見受けられません。

 折角来たのだから、コンビニの弁当ではなく、ホタテの料理を
 いただこうという全く贅沢な旅なのです。
 「まあ〜いいか
   石垣さんのおごりだし・・ここは気にせずに
    いうとおりにご馳走になろう」等とのんきにかまえている
      私なのです。
 
 この付近のドライブインも、寂れた感じのお客の少なそうな
 ドライブインでした。
 自動車道の便利さは、地方の活性化につながっているのかな〜
 かえって過疎化を推進しているようなそんな気もします。

 昔は大きなトラックなどがたくさん留まったのでしょうか、
 広い駐車場には、数台の乗用車がとめてあるだけで、広い分だけ
 余計殺風景です。

 昔ながらのドライブインの看板は薄汚れていました。
 「このようなところが意外と美味しいのよ」
 「なんていったって・・地元だから」
 「地元の味は料理研究家でも、出せないのよ・・
   何気ない料理だけど・・技があるのね」
 「そうかしら・・でもその技を理解している人
      少ないんじゃないの・・このお客様よ」
 「残念ね・・・味のわからない人たちが多いのよ
    だって・・コンビニばっかりで食べているんですもの
              わからないのよ」
 「少なくても・・私たちには
      わかるよね・・伊藤さん・・」
 「う・・うう・・」

 大食いの私には、質より量なので余りアジには自信が無いのです。
 何でも美味しくいただけるのですから・・
 なんて答えていいのか・・言葉に詰まってしまいます。
 上手に答えられない不器用な私なのです
 外食はほとんど食べたことが無いし・・

 でもこちらに来て驚いたのは「お米」の美味しいことです。
 鳥羽では食べたことの無い、とても美味しい米なのです。
 仙台のどのお店に入っても、ご飯はとても美味しいのです。
 「ささにしき」「ひとめぼれ」が主力ですが、気候が
 米の生産にとても適しているといわれているところですので、
 こちらの人はこの米を普通に食べているので気がつかないらしいのです。

 この「ご飯」の味の違いはわかりましたが、それ以外の
 料理はとてもまずくなければ、どんな料理も美味しくいただけるのです。
 良かった・・貧しく育って・・かあちゃんありがとう・・
 など変なところで感謝です。

 店の中は、外から想像したとおり暗く陰気な感じがしました。
 お客さんはもう二組入っていましたが、一組は食べ終わったらしく
 お茶を飲みながら雑談をしている風でした。
 もう一人の女性のお客は、海の見える畳の部屋で海を眺めながら
 料理の出てくるのを待っているかのようでした。
 
 お昼をちょっと過ぎたばかりなのに、この閑散さには暗さも手伝って
 尻込みしたい気分です。
 なのに・・我が連れのお方は
 さっさと帳場のほうへ行くと、
 「ホタテの料理やってますか」
 などと、私の心配等気にする風でもなく、明るく振舞っています。

 「伊藤さん・・
    ホタテの料理やってるって」
 「刺身と・・焼き物注文しちゃった。よかったかしら」
 「ええ・・私はホタテも大好きだから」
 「よかった・・
    店の中はおばさんとおじさんの二人でやっているようよ
  この広い店内で・・お客きたらどうすんのかしら」
 そうかしら・・この暗さではあんまりお客がこないようだけれど
 大丈夫かもよ・・心配しなくても
 心の中でそう話しかけました。

 石垣さんはこの旅行?がとても気に入っているようなのです。
 民謡を歌ったり、詩を披露したり・・・
 ほんとうにサルが、サルノコシカケに座っているのかしら・・
 顔を見てみると
 疑っているな・・座っているんだから・・といわんばかりに
 楽しみにしているようでした。

 まもなくホタテの料理が運ばれてきました。
 ホタテの料理は、おばさんが持ってきてくれました。
 愛想の無い素振りで「どうぞ」と素っ気無くおいて帰ります。
 刺身は新鮮で柔らかそうです。焼きホタテもじゅうじゅうと
 音を立てながら運ばれてきたのです。

 鳥羽のアルバイト先の野島さんのお店でもサザエのつぼ焼きを、
 運んだな〜・・あの時は私もいつか食べる側に廻るのかなと
 考えてこともあったっけ

 白い皿の上のホタテは、昔の高校生のときの思いを起こさせました。
 野島さんも、野島さんの家族も良くしてくれったけ
 店内には、軽快なジャズの音楽が流れていました。
 お店も観光地にふさわしく洋風なしゃれた建物でした。
 今もやっているのかな〜
 ジッとホタテを眺めている私に
 「どうかしたの・・伊藤さん
          何かついているの」
 「えっ・・なんでもない・・なんでもない」
 そうか・・ここは東北なんだ・・そして野辺地町なんだ

 石垣さんのほうを見て・・笑顔を見せました。

 店内には、女の歌い手さんの演歌が流れています。
 天井からは埃で黒くなり切れそうになって、ときどき
 パッパッと消えたりする裸の蛍光灯
 暗い店内、素っ気無い主人、演歌・・・
 海を眺められるように配置した薄汚れた畳の店内・・
 木枠の窓ガラスに寄り添いながらうつろな目で海を眺める女性・・
 恋に破れて・・人生に疲れて・・北へ向かう旅人には
 とてもつりあいの取れたお店のような気がしました。

 もう一組の男女のお客を、何気なく覗くと下を向いて深刻な話を
 しているようにも見えました。
 暗い陰が店内をおおい尽くしているようにも思えました。
 「北ね・・」「北へか・・」「海・・」
 外は明るく晴天なのに・・・とても深く深く沈んだ
 重い雰囲気にさせるお店なのです。
 すごいこの演出・・凄すぎる
 
 よく見るとお店の店内には・・昭和30年代の石原裕次郎の写真や
 浅丘るり子だったり、赤木圭一郎だったり、日活の往年の
 スターのポスターがはってあります。
 演出ではないでしょうが・・どれもみな料理の煙とか
 タバコの煙などで古く薄汚れています。

 オロナミンの、松山容子の写真があるのには何か時間が
 タイムスリップした感じさえ受けるのです。
 極めつけはミユージックボックスです。
 懐かしい機械が残されているのです。

 「どうこの味・・素朴でしょ・・伊藤さん」
 
 「素朴よ・・絶対素朴でなくちゃ」
 力を込めていってしまいました。
 これだけの演出ですから・・味も昔の味でなければ
 「許さないから」と思ってしまうのです。

 でも一人だけこの場に不釣合いな人がいるのです。
 その人は、美味しそうに「ホタテの味はこうでなければ」
 などと講釈をのべながら・・近代的な明るさを振舞っているのです。

 この雰囲気を肌で感じ取れない不幸な・・いや「幸せな」方が
 いらっしゃるのです。

 夢を見ている少女のように、目が輝いているのです。
 あ〜あ〜サルノコシカケに、恋してしまっているんだから
 あんまり期待すると、裏切られるぞ・・
 そうすると・・「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ってことにならなければ
 いいのにな〜

 そんな私の思いなど届くはずがありません。
 この場にお呼びでない不釣合いの客人は、美味しそうに
 「素朴な味を?」周囲の目を気にせずに食べているのでした。







★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.102

          山菜きのこ メールマガジン
            「ちいくろ奮戦記」

                            ・・・・・・★★★★★★★★

    ・・・ ・サルノコシカケ(15.北へ)・・・・・・・
            ・
            ・
  そんな私の思いなど届くはずがありません。
 この場にお呼びでない不釣合いの客人は、美味しそうに
 「素朴な味を?」周囲の目を気にせずに食べているのでした。 
                        ・
            ・
            ・
            
  車は、再び北へ向かって走り始めます。
  この道は車の交通量も少なそうなので、運転を変わることにしました。
  もともと車の運転はあまり得意ではありません。
  できるだけ運転はしたくは無いのですが、いつまでも長時間
  石垣さんだけに運転させるわけにも行かないし・・
  それより、この恍惚の目で運転したら、・・・
  そう考えると、「いいから私が」という言葉も振り切って
  ハンドルを取り返してしまいました。

  「伊藤さん・・北海道はクマが多いのよ」
  「は〜クマ!・・クマね」

  サルから今度はクマの話題です。

  「クマは利口な動物なの」
  「サルよりも」
  「猿は利口と言うか・・・
     う〜ん・・やっぱりサル知恵ね・・しょせんサル知恵よ」
  「あら・・サルの見方変わったの」

  「そうではなく・・なんていうかな〜
     サルとクマを比較した場合を言っているの」
  「クマはサルに比較して・・・ず〜とお利口さんてこと?」

  「そうね・・・
     サルは悪いたとえに引き合いが出されるでしょ
     ずる賢いとか・・・姑息なことをすることを
          「サル畜生」だなんてことを言ってるわ」
  「それだけ身近な生き物ってことでしょ・・
             人間との付き合いも古いので・・・」

  「そう・・だから・・ずうずうしくなったの
       野性なのに、人に慣れっこになったのね
                        礼儀知らずに」

  「悪いことではないわ・・
      慣れるということは・・私も歓迎よ
    それに・・人間の目から見たサルの無礼な行動は
       サルにとっては、自然の行動かも」
  「でも・・野生の動物は
       野生で生活できなくなると・・・滅びるの
     人間との共生はサルにとってはマイナス・・・
     サルだけでなく・・他の野生の動物すべてよ」

  「そうかな〜人間の手厚い保護を受けている動物は
       たくさんいるけど・・サルも・・」
  「野生でない動物には、本能的な生命力が備わっていないように思うの
     ・・・動物園の動物がそうよ
     姿形は、トラやライオンだけど・・実態は魂の抜けた
        飼いならされているだけの、可愛そうな生き物だわ」
  「でも・・野生と違って・・
        食事の心配も無く・・幸せかもしれない・・」
  「いや・・不幸だわ
          ひどく不幸よ・・可愛そう
      生き延びるために食べる ただ食べるだけの生活よ」

  「野生の動物は・・野生で生き抜くことで、他の動物たちとの
     生死を賭けた緊張感の中でだけ本当の生活があると思うの
    だから・・可愛いとか・・珍しいとか・・で捕獲したり
                   餌を与えてはだめなのよ」
              ・
              ・
  「自然の中で生活させるのが、彼らには一番大事なことなの
                    それが自然の掟なんだから」
  「あらあら・・難しいこと!」

  「それでかしこいクマは・・」
  「そう・・そう・・クマね」
  「クマはお利口?」
  「お利口さんよ・・クマの天敵は・・人間なの
   だからクマは人間からどうしたら、逃げられるか・・
     どうしたら会わずに済むのかを始終考えている動物よ」

  「そうかな〜」
  「そうよ」
  「でも・・ときどき人間と遭遇するよね」
  「それは・・若いクマや・・母熊なの
     まず若いクマは無鉄砲なの・・学習してないのね」
  「一番多いのが・・小熊を連れた母熊よ
     小熊が言う事を聞かないから、人間に小熊が見つからないように
      母熊が囮になることも多いの・・
             その間に小熊を逃がしてやるの」

  「ほら・・・・覚えてる
      伊藤さんたちと6人ぐらいで「舞茸」採りに
       田山さんたちに山へ連れてってもらったでしょ」
  「男の人たちが・・マイタケを探しに山奥深く入っていって
    私たち女4人で川沿いの山ん中を歩いているとき 
   「ウオ〜」って牛の泣いたような声を聞いたでしょ」

  「聞いた・・・聞いた
     怖かった・・・夢中で木をたたいたっけ」
  「なに・・あれ・・なんだったの」

  「あれ・・実は
      クマの声だったの」
  「クマ!  クマだったの」
  「そう・・クマだったのよ」
  「何で・・あの時教えなかったの」
  「教えられなかったの」
  「どうして・・なんで・・」
  「クマがすぐそばにいたからよ」
  「えっ・・クマがそばに」
  「そう・・すぐ近くだと思うわ
    言ったらみんな悲鳴を上げたでしょ」
  「近くに・・いたの
      本当に?・・・なんでわかるの」

  「あの声は、クマの緊急時にしか出さない叫び声なの
               緊急だったの」
  「本当・・ほんとに本当」
  「そうよ・・私たちは、親子熊と身近に会っていたことになるの
        声を出したのは母熊」

  以外でした・・
  あの時は驚いて皆で立ち木を叩いたり、音楽を目一杯
  鳴らしたり・・

  そういえば・・石垣さん
  テープの音を最大限にするようにって・・
  それに・・すぐ引き返そうとも言ったし
  わかっていたのね
  皆に何も言わなかったのは・・
  パニックになるのを防いだんだわ

 「母親クマは、危険を知らせるときにあの声をだして
    小熊に知らせるのよ・・小熊はあの声だけには
         絶対服従よ・・すぐ母親熊のところに戻るの」

 「私たちは、知らずに母熊と・・小熊の
            その間に入ってしまったの
    人間は最大の敵だから・・母熊は小熊の危険を察知して
              知らせたのよ」
 「よほど警戒したの・・母熊は」
 「通常は声を出さずに・・知られないように隠れて
                   小熊を避難させるの
  でもあの時は、その時間が無かった・・・緊急事態だったの」

 「危なかったの・・私たち」
 「あのまま歩いていけば・・間違いなく
                  小熊とあったわ」
 「本当に!」
 「間違いないわ・・あのあわてよう・・あの声は・・」
 「よかったすぐ引き返して」

 「どう・・クマのお利口さんぶりは」
 「それがお利口さんなの」
 「お利口よ」
 「そうかな・・ただあわてて私たちを
             驚かしただけに思うけど」
 「そこがクマの計算高いところね
            そこまで計算しているのよ」
 「小熊の危険を知らせると同時に、
     私たちに去るように警告を与えたのね
               お利口なクマさんだこと」

 「そうかな〜」
 「あら・・まだ疑ってる」
 「だって・・ちょっとクマびいきよ」
 「あらあら・・まだ信じていないんだから
    クマさんはお利口よ」
 「そうかな〜本当に」

 「仕方が無い・・
    決定的な事実を伊藤さんに」
 「なに・・決定的な事実って」
 「クマが本当に利口ってこと」
 「そんなこと証明できるの」
 「あるのよ」
 「あるの!」
 「昔から」
 「昔から!」
 「ほら・・熊って漢字よ〜く観察してみて」
 「熊・・漢字・・またクイズ」
 「クイズではなく事実よ」
 「事実!」

 「わからないらしいから・・ 
              教えるわ・・・」
          ・  
          ・
 ちょっとともったいぶってから
          ・
          ・
 「熊はね・・・
    能ある四本足って書くの」
 「昔からお利口って・・・
    皆が認めていたことなのよ」
         ・
         ・
         ・
         ・
         ・
         ・
      「能ある四本足か」
         ・
         ・
         ・
  車は西からの海風を受けながら一路むつ市へと向かいます
  日は少しだけ西に傾け始めました。
  車の数は相変わらずに少なく防風林に植えた松並木が
  続く道でした。






★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.103

          山菜きのこ メールマガジン
            「ちいくろ奮戦記」

                            ・・・・・・★★★★★★★★

    ・・・ ・サルノコシカケ(16.北へ)・・・・・・・

   

     車は西からの海風を受けながら一路むつ市へと向かいます
  日は少しだけ西に傾け始めました。
  車の数は相変わらずに少なく防風林に植えた松並木が
  続く道でした。
                      ・
           ・
           ・
           ・
  車は下北半島の中心地「むつ市」から東北に進路をとり、
  大間へと向かいます。
  時間は3時ごろになりました。日は少し西に傾いたようですが
  青空でとても快適です。

  今日の宿泊地は、下北半島の大畑から少し行ったところの
  「下風呂温泉」です。
  石垣さんが、夜イカ釣りのいさり火がきれいに見えるからということで
  この宿泊地を選んだのです。
  
  贅沢な旅の一日目は、早めの温泉宿に着きそうです。
  
  遠くへ来たのに道の付近は、あまり変わったところも無く
  平坦で平凡な道が続きます。
  もっともこのような道が私の運転には、向いているのですが・・

  「伊藤さん・・」
  何か思い起こしたように、石垣さんが口を開きます。
  今日の彼女はいつもの彼女ではなく・・何か・・
  サルノコシカケ病にでも摂りつかれたかのように・・
  語ってくるのです。


  「伊藤さん・・」
  返事をためらっていますと・・
  「ちゃんと聞いているの!」というように、
  再び名前を確認してくるのです

  「どううしたの・・何か見えた」
  「そうではなく・・
     さっきからず〜と考えていたの」
  「なにか・・深刻なこと
      駄目よ・・難しいことは」
  「いやそうじゃないの」
  「わかったのよ・・・わかったの」
  「なにが・・わかったの」
  「そうか・・やっぱり
    私の考えは正しいと思うわ」
  「うん・・・うん・・
       正しい・・正しい」

  独り言のようにうなづきながら、自分の考えを頭の中で
  まとめているようです。
  何か新しいことを発見したような、
  うれしい表情になりました。

  「伊藤さん・・・
    私の説を聞いてくれる」
  「石垣さんの説・・
     何か難しいこと・・」
  「難しくなんかちっとも
      理路整然としているから・・」
  「あら・・石垣さんの理路整然は、一般の人には
         馬の耳に念仏よ」
  「馬の耳に念仏!」
  「そうよ・・さっぱり理解ができないってこと」
  「ま〜伊藤さん
      古い・・・古いよ・・その諺」
  「古い!」
  「古すぎる・・今の人たち
        何のことかわからないもの」
  「年代がわかるぞ・・このことわざは」
  「ま〜そんなに言わないでよ
        だって難しいこと説明しようってこんたんでしょ」
  「いやね・・難しいことなんか」

  「とにかく聞いて・・聞いて」
  「駄目ってイっても
       聞かすんでしょ」
  「わかる」
  「わかる・・その目は絶対聞かせるって言う目よ」
  
  うれしそうに、顔が微笑んでいます。
  何がそんなにうれしいことを見つけたの

  「じゃ〜話すけど」
  「うん・・聞いてるから」
  「あの〜サルノコシカケのこと・・・
       だけども・・・本当に聞いてくれる」

  えっサルノコシカケ・・今までもう飽きるくらい聞いてきたのに
  これ以上・・まだいい足りないことあったの
  
  「伊藤さん・・サルノコシカケって名前の由来は?」
  「質問?」
  「質問ではなく・・確認よ
       一個一個積み上げていって謎解きをするの」
  「謎解きって」
  「サルコシカケと呼ばれた本当のサルノコシカケのこと」
  「本当のサルノコシカケ」
  「そうよ・・本当のサルノコシカケよ」

  「う〜ん」
  サルノコシカケに夢中になっている石垣さんは、楽しそうですが
  本当のサルノコシカケって、何のことなのか
  何を夢中になっているか理解ができないのです。

  まあ〜でも・・
  この旅行・・いや違った・・う〜ん・・なんだろう
  この楽しい旅は・・
  石垣さんのお陰でもあるし・・
  聞いてやらないと・・罰が当たるかな・・

  「本当のサルノコシカケ・・
    何・・それ素晴らしいじゃない」
  などと白々しい言葉を・・

  「わかる・・わかってくれる」
  えっ・・しまった
  石垣さんのってきちゃった

  「しりたいでしょ・・伊藤さん
                聞きたいでしょ」
  う〜ん本当は聞きたくないんだけど
  この旅行の楽しさは・・石垣さん・・困った
  聞きたくないけど・・おいしい食事はしたいし
  やっぱり・・おいしい食事が・・・

  「そう・・どんなことがわかったの・・」
  あ〜食べ物には負けてしまうな
  なんと不心得な心構えなの

  「サルノコシカケはサルがそのきのこに座る様子を
    みて、昔の人がそのきのこのことを
    「サルノコシカケ」って名づけたといわれているわ」
  「または・・大きなきのこだからサルが座っても
    大丈夫ということで、そのきのこのことを
        サルノコシカケと名づけたのかもしれないわ」
  「ここでキーポイントは・・なんだと思う」
  「伊藤さん・・」
  「えっ」
  何で・・・聞くだけかと思ったのに・・
  急に話を振ってくるんだから・・
  え〜ん  どうでもいいんだけど
  サルでもカニでも・・なんでもいいんだけど

  「キーポイントはね・・サルよ」
  何だ・・自分で答えてんじゃ・・驚かさないでよね
  
  「サルよ・・
    ここが一番のポイントね」
  「サルね!
     何でサルなの」
  「まず・・サルの習性を考えることで
       そのきのこの形が見えてくるの」
  「サルは集団で生活するのが多いわ」
  「集団とサルノコシカケって関係するの」
  「関係があるわ」
  「次に木登りが好きだし、高いところも平気よ」
  「サルだからね
      だって 高いところほどすきだっていうじゃないの」
  「そうでしょ・・そうよね」
  「それに食べ物も関係があるの」
  「サルの習性を考えれば・・そのきのこが
                    見えてくるわ」
  「昔の人がサルが座っていたのを見たというなら
      サルの習性にマッチしたきのこが
                本当のサルノコシカケよ」

  「まず・・集団・・そして高いところ
              食事・・・サルが座っていた」
  「間違いないわ」
  「伊藤さん・・きっとそうだわ」
  「私には整理して説明してよ
        断片的だと何がなんだかさっぱり・・」

  「じゃ・・説明するわ
         これがわかれば・・もう北海道には
        いく必要はあんまりなくなるの」
  「なぜ・・疑問が解けたの
        ツガサルノコシカケの」
  「そう・・いろんなことがわかってきたのよ
                もう迷わなくても済むわ」

  うれしそうに自分の推理を楽しんでいます。
  でも、サルノコシカケのことをこんなに深く考えているなんて
  石垣さんは幸せだわ
  ひとつのことに没頭できるんですもの
  
 「サルノコシカケは、サルのすんでいる所のきのこよ
     サルが住んでいなければ、昔の人は
    サルノコシカケって名前をつけなかったのかも」
 「サルが住んでいるところ・・」
 「サルが住めない・・北海道はサルノコシカケっていうのは
                        後で命名されたの」
 「よくわからない」
 「はじめに本当のサルノコシカケがあって、それに似た
      きのこのことを、○○サルノコシカケって名づけたの」
 「だから北海道のツガサルノコシカケは、サルノコシカケの亜流よ
                  本当のサルノコシカケではないの」
 「それに・・サルの食事
      サルは針葉樹ではなく・・主に広葉樹に生息しているの
     木の実や木の葉など、広葉樹のほうがたくさんの木の種類が
                あって、実のなる木も豊富だわ」
 「そうすると、サルが生息している本州でも
        針葉樹ではなく、広葉樹林だったのよ」
 「針葉樹に良く出るといわれる、ツガサルノコシカケは、昔の人の見た  
              サルノコシカケではないわ
                  どう考えても不自然だから」
 「そうすると・・サルがコシカケができそうなサルノコシカケは
           コフキサルノコシカケとブナサルノコシカケだわ」

 「ここでサルは高いところが好き・・そして集団で生活
     このところが、コフキとブナとの違いを鮮明にする
                    ポイントなのよ」
 もう石垣さんは、事件を解決した刑事のように謎解きの理由を
 次から次へと語ります。

 「いい・・コフキサルノコシカケは・・
           高いところはあまり好まないの
   もちろん高いところにも付いているものもあるけれど
    それは例外・・むしろ倒木などの低いところのほうに
                     多く発生しているの」
 「サルが座ったのを見たというのを考えると
   地面に近いところで座っているサルを見たというより
     木の梢で座っているのを見たというのが自然だわ
    高いところですと、遠くからでも見ることができるから」
 「コフキサルノコシカケは、ブナサルノコシカケのように
     たくさん並んで出ることもまれで、サルの集団生活上からも
                好まれないの」
 「お父さんがまたはボスざるが一番上の
   サルノコシカケに座ったとしたら二番目は次の力のあるもの
    そしてその下は・・・というように順番に座ったとしたら・・
      このように座る習性があるとしたら・・・」
 「この習性をコフキサルノコシカケは満たすことができないの」
 「それにコフキサルノコシカケは、なんと言っても数が少なすぎるの
        そんなにサルが座るくらいは無かったと思うの」
 「これらの内容を全て満たすきのこは・・・」

 「ブナサルノコシカケ!」
 「ピンポーン」
 「凄い推理ね
   私にはあんまりわからないけど」
 「ブナサルノコシカケが昔の人のみた・・
     サルが座っているのを見たきのこよ」
 「それをサルノコシカケって名づけたとしたら・・」
 「本当のサルノコシカケは・・・ブナサルノコシカケ?」
 「そうよ・・ブナサルノコシカケだわ」
 「だから・・・ブナサルノコシカケには
               名前が無いの」
 「なぜなら・・本当のサルノコシカケだから
       名前は要らないの」
  
 「それに身近なきのこだから・・・ 
    それをいろんなふうに利用してきた」
 「癌や・・そのほかにも利用した」
 「それらは全てブナサルノコシカケ?」
 「ほとんどがそうね」

 「だから・・ブナサルノコシカケ  
     これが本当のサルノコシカけだわ」
 そういい終わるとふっと息を吐いて
   外を見ました。

 自分の推理に十分に満足したようです。
 少しすると、小さく寝息が聞こえてきました
 大きな仕事をなし終えたように安心して寝入って
 しまいました。

 車は大畑を過ぎて、海の見えるところに出ました。
 太平洋の海風が車内に入ってきました。
 やさしい風です
 寝入った石垣さんの髪が風に揺れています。
 遠い海原の水平線に白い船が見えました。



★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.104

          山菜きのこ メールマガジン
            「ちいくろ奮戦記」

                            ・・・・・・★★★★★★★★

    ・・・ ・サルノコシカケ(17.北へ)・・・・・・・

   車は「大畑」を過ぎて、海の見えるところに出ました。
 太平洋の海風が車内に入ってきました。
 やさしい風です
 寝入った石垣さんの髪が風に揺れています。
 遠い海原の水平線に白い船が見えました。
             ・
             ・
             ・
 「サルノコシカケ」と言うのは、「ブナサルノコシカケ」のことを
 指すのであって、「ブナサルノコシカケ」は、「サルノコシカケ」の
 大本命の「サルノコシカケ」だと言うのです。

 他の「サルノコシカケ」は、「ブナサルノコシカケ」に、似ていることから
 「サルノコシカケ」と区別するために、名前をつけられたもので、
 「ツガサルノコシカケ」「ツリガネタケ」「コフキサルノコシカケ」は
 もともとの「サルノコシカケ」では無いと、言っているのです。

 北海道に出ている「サルノコシカケ」を、確認することで
 「ツガサルノコシカケ」「ブナサルノコシカケ」の違いを
 明確にしたいと言う思いからの、今回の旅行?でしたが、
 一つの謎が解けて、少しすっきりしたかのように、彼女は
 眠っています。
              ・
              ・
              ・
  下風呂温泉の看板が見えてきたので、
 「石垣さん・・下風呂温泉に着いたようよ」
 心地よく眠っている彼女を起こして、目的の宿を確認することにします。

 右手には太平洋、左手は小高い山となっていています。
 小さな入り江には、漁船が係留されています。
 イカ釣りの船なのか、船の上部のほうの舳先から、操縦室のところに
 電球が吊り下げられています。
 船は穏やかな波に揺られて、電球もゆっくりと揺れています。

 山の木々は、海からの強風に耐え切れずに大きくなれずに
 低木が目立ちます。
 
 国道沿いの、山裾に民家が並び、ひっそりと佇んでいる光景は
 北国の漁村の風景そのもののように思えました。
 民家の扉は、しっかりと閉ざされており、人の気配が感じられません。

 時折対向車が来ますが、どこの町でも見かけるようになった
 歩く人影はほとんど見られません。
 
 「どっかで聞かなくちゃ・・」
 「うんそうしょう
     開いているお店の人に聞いてみよう」
 ゆっくりと走りながら、開いているお店に宿の場所を
 聞いてみることにしました。

 大型店に押されて、一般の小売店はもう商売ができなくなっている
 現状です。ここでもその波が来ているようで、店の看板はありますが
 閉店状態になっているのが、見られます。

 雑貨屋さん風のお店が開いていましたので、聞くことにしました。
 店の駐車場などというものは見当たりませんので、店の前に車を
 停めて、薄暗いお店に入っていきました。

 引き違いのガラス戸は、ガラガラと大きな音を立てました。
 「ごめんくださ〜い」
 店内には誰もいません。お客が入ったと言う合図も、そんな設備も
 やってはいないようです。
 遠慮がちに声を掛けましたが・・でてくる様子が無いのです。

 もう一度少し大きな声で
 「ごめんくださ〜い」と呼んで見ました。
 すると奥の方から、「あ〜い」と言うような声がしました。

 でも・・なかなか出てこないのです。
 待ちながら、店の中を見回しますと、いろいろな雑貨物が置いてあります。
 食料品やら、洗剤、ホウキ、懐中電灯、長靴・・割烹着・・砥石・鎌
 ・・・地場産の海草の干物?・・つり道具まで置いてあります。

 物珍しく店内を見ていますと
 頭を手でかきながら、店番のおばあさんが出てきました。
 「すみません・・あの・・
    買い物ではないんですけど・・・」
 「は〜なんですか」
 「この宿を教えていただきたいのですが」
 石垣さんが渡してくれたメモを、見ながら
 下風呂温泉の宿をたずねると・・・
 「は〜そのところなら・・」

 何も買わないのに・・道をたずねるのに、わざわざ仕事の手を
 休ませて申し訳ないと思いながら・・
 おばあさんは宿は、公衆の駐車場のところに
 車を停めて・・そこから歩いてすぐだからと、駐車場の場所を
 教えてくれました。

 公衆の駐車場・・・そうか・・
 ここでは、温泉の湯を各家庭でお風呂のように利用しているようです。
 公衆の浴場があり、そこに車を停める場所を公衆の駐車場と呼ぶようです。

 公衆の駐車場は、すぐにわかりました。
 何台かの車が置いてありました。駐車場は小さくて10台ぐらい停めると
 いっぱいになりそうな気がしました。
 まだ夜には時間があるので空いているようですが・・

 目的の宿は、何軒かある温泉宿の一軒のようです。
 看板に簡単な略図があり、細い岩場の道を歩いて、登りながら
 行くのです。
 小さな沢のような所から湯気と一緒に温泉の湯が流れていくようです。
 あんまり温泉の硫黄の臭いがしてきません。

 車は、入れないのでお客様はみんな歩いて宿まで行くのでしょう。
 この宿は、石垣さんが友達から教わったのだそうです。
 友達は仕事の関係で、大間の灯台に何回か来ていて、いつもこの宿に
 泊まったと言っています。

 「おかみさんがいいのよ」
 「イカ刺しが美味しいし・・
    何より窓から・・いさり火が堪能できるの」
 「どう・・・お酒はぬるめの酒でいい・・・
       肴は・・あぶった干物でいい・・だっけ」
 「そんな気分を楽しめるのよ」

 黒い岩肌は、温泉の湯気のせいか少しぬれているように思えました。
 宿は一番奥まったところにありました。

 ガラス戸を開けると・・
 「いらっしゃ〜い」という、ちょっとだみ声風の声がします。
 二人で玄関に立っていると・・・
 声の主が現れました。

 黒髪で着物を着ていて、眉毛の濃い、目の大きな女の方でした。
 なんだか「丸山明弘」のクロトカゲに似ていると思いました。
 声の主は、
 やっぱり「丸山」風に・・「いらっしゃい」といいました。
 「仙台の石垣さんですか」
 こちらが名乗る前に・・

 「はい、石垣です
   こちらは伊藤さんよろしくお願いします」
 ペコリと、頭を下げますので、あわてて
 「伊藤です」と、頭を下げました。

 案内された部屋は2階で8畳間です。
 畳のところに2畳ほどの板の間があって、小さなイスとテーブルが
 ありました。
 押入れがあるだけで後は何にもありません。
 とても簡素な宿です。

 「この宿はね・・
    観光客よりも・・ビジネスマンが宿泊する宿なの」
 「観光客はむつのほうに宿泊するらしいの」
 「でも石垣さん・・
    この方が家庭的でいいわ・・ユースホステルみたい」
 「そう言ってもらうと助かるわ」
 「ほら・・このところからだと・・
             海が良く見えて・・」

 日は次第に暗くなってきました。
 いよいよ・・イカ釣り魚のいさり火が見れるときが来ました。
 
 鳥羽の海には、入り江や島や観光船が多くて賑やかです。
 でもこの海は、太平洋の水平線が見えて、島影などは全くありません。
 大海原が続いているだけなのです。

 「う〜ん・・・
    やっぱり・・北の海だ」
 「いいでしょ」
 「飲みたいって雰囲気にさせる!」
 「飲むわ・・・飲みましょ」
 「大丈夫・・・明日もあるのに」
 「飲むわよ・・・だって
       謎が解けたんですもの」
 「お祝い・・もうお祝いする?」
 「する・・うれしいの
     今日はつきあってもらうんだから」
 「もう十分に付き合ったんですけど」
 「だめだめ・・
     ドラマはこれからよ」
 「おう怖い」

 温泉の湯は、湯の花がいっぱいの湯でした。
 木の板で湯船を作っているもので、そこのほうがヌメヌメしています。
 3〜4人が入ると一杯になりそうな湯船です。
 家族風呂と言った感じのお風呂でした。

 「こじんまりね」
 「こじんまりだわ・・
    今の世の中は・・このような経費をかけない経営が
             体力があると思うな」

 温泉の湯気は、薄暗い天井のほうから、暗くなった外へと
 出ているようです。
 白熱球の電球の光は、湯気で浴槽まで光が届かず、
 お風呂場全体が薄暗く、湯船に浸かっている
 お互いの表情が読み取れません。

 たっぷりと温泉を吸って黒くなった木張りの天井から、
 滴がポチャン、ポチャンと湯船に落ちて静寂を
 更にいっそう奏でました。




★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.105

          山菜きのこ メールマガジン
            「ちいくろ奮戦記」

                            ・・・・・・★★★★★★★★

    ・・・ ・サルノコシカケ(18.北へ)・・・・・・・

   たっぷりと温泉を吸って黒くなった木張りの天井から、
  滴がポチャン、ポチャンと湯船に落ちて静寂を
  更にいっそう奏でました。
                      ・
           ・
           ・
  楽しみな食事は1階の食堂でするようになっているのですが、
 石垣さんが
「女将さん・・わがままで失礼なんですが
              部屋で食べたいんですけど・・」
 低姿勢でお願いすると、

 女将さんは、きまえよく
 丸山風にちょっと低音で
 「今日は・・お客さんが少ないんで
         よろしいですよ・・後ではこびますから」
 ここの従業員は、女将さんとお手伝いさんの二人のようでした。

 女将さんより少し若い感じの方が
 食事を運んでくれました。
 「どうぞ・・
   観光客のお客さんは、皆この時期、海を見ながら
     食事をしたいので・・という方が多いんですよ」
 窓からの海は、夕暮れ時でもう暗くなりかかっていました。
 イカ釣りの船なのか、港から沖のほうにポンポンと
 エンジン音を響かせながらでていきます。

 「すみません・・無理を言いまして」
 「いいんですよ・・今日はお客さんが少ないんで」
 「シーズンオフなんですか」
 「いいえ・・今観光客はこの辺には泊まりませんから・・
                 仕事のお客様が中心なんです」
 「週はじめですから・・明日ぐらいから
       泊まる方も多くなると思うんですけど」
 「今・・イカが獲れるんですか!」
 「今月ぐらいから・・獲れ始めましたね」

 食事のお膳を置くと
 「食べ終わったら・・通路に出しておいてください
                    後で片付けますから」
 そういいながら・・鍋物に火をつけると
            
 「どうぞごゆっくり」
 と出て行きそうになったところ

 「あっ  あの・・あの・・
    お酒とか・・ビールとかは・・」
 あわてて石垣さんが
 「お酒!・・ですか」
 「はい・・お酒と・・ビールも」
 「伊藤さんは・・なに・・焼酎とか・・ウイスキーとか」

 石垣さんは酒盛りでもやろうと考えているのかな・・
 「私は・・ビールで
           でも・・少しだけでいいわ」
 「あら・・美味しい肴があるのに・・
              肴さんに失礼よ」
 「すみません・・・
    えーと・・ビールとお酒と
        一応焼酎も・・お願いします」
 「はい・・ビールとお酒と焼酎ですね」
 「お願いします」

 「あっ  それから・・
     あの・・料理の追加は・・できます?」
 「できますよ」
 「あの・・・イカ刺しとか・・イカそうめんとか・・
      マグロのお刺身とか・・お刺身の盛り合わせとか
   ほら・・それから・・
      え〜と・・そう・・ホタテの料理」
 「伊藤さん・・いいこれぐらいで」
 「なに・・そんなにたのんで・・食べきれないかも
     食べてみて・・少なかったら追加でいいんじゃないの」
 「あら・・だめよ
     何度も働かしちゃ・・」
 「今の料理にも、同じものがありますので・・
          じゃ・・一人前づつお持ちしますか?」
 「そうそう・・それでいいわ
     いろいろの種類を少しづつって・・・楽しいわ」

 注文を聞くとお手伝いさんは、調理場のほうへ降りていきました。

 「石垣さん・・そんなに頼んで・・」
 「あら・・伊藤さん
      わたしって大食いなの・・大食漢なのよ
    普段は遠慮してるけど・・食べるときは凄いんだから!」
 「私も食べるほうだけど・・」
 「じゃ〜食べ比べだ・・
     どちらが大食いかを決めましょう」
 「なんで・・大食いを競うのよ」
 「いいのよ・・意味なんか無くても
     ただ・・どちらが大食いかってこと」
 「珍しいこと・・・意味の無いことをやるなんて」
 「やるのよ・・やるときは
      意味の無いことをやるのも楽しいの」

 なんか今日の石垣さんは、いつもと違うぞ
 さっきの「ブナサルノコシカケ」のことといい
 楽しそうだけど・・

 秋の日は、すぐに暗くなりました。
 畳の部屋からは、座っても窓の位置が低くなっていて
 海が見えるようになっていました。
 海はもう暗く・・船のエンジン音が時折聞こえるぐらいです。
 水平線のほうにかすかに、白いぼんやりとした明かりが見えました。

 「あれは・・いさり火(漁火)?」
 「そうね・・いさり火らしいわ
    まだ少し明るいし・・船が漁場に着いていないんだわ
    これから火がともるように、明るくなるんだから
       とてもロマンチックな光景よ」
 「そうか・・楽しみだわ」

  そのうちに、ビールとかお酒とか追加の料理が運ばれてきました。
 女将さんがきて、
 「ここからの・・イカ釣りの灯りはとてもきれいですよ
               ちょうど今が最盛期なんですよ」
 「ちょうどいい時期に来たってことですか」
 「そうです・・気温も暑くも無く寒くも無く
        湿度も少なく・・お風呂上りもさっぱりしますし
     ちょうどいい時期なんです」
 「ほらほら・・灯りがつき始めましたよ」
 「ほんとうだ・・きれい」

 水平線に灯りが一箇所ついたと思ったら・・たちまち
               一斉に灯りがともり始めました。
 水平線には、灯りが行列のように並んでいます。

 「どうぞ・・ごゆっくり」
 「ありがとうございます」
 
 「さあ〜乾杯だ」
 「なんに乾杯?」
 「二人の友情に」
 「友情に!」
 「だめ」
 「だめではないけど・・」
 「じゃ・・いいじゃない」
 「いいか!」
 「いい・・いい」
 「かんぱ〜い」「かんぱ〜い」

 二人は美味しそうに、ぐいっといっきに飲み干しました。
 「ふ〜美味しい
    久しぶりだわ・・こんなに美味しい酒は」
 「そりゃ〜謎が解けたんですもの」
 「あれ・・伊藤さん
      謎が解けたのわかってくれたの」
 「わからないけど・・
   でも理屈は通っているわ」
 「そう・・わかってくれた
     理屈ではなく・・理論と言ってほしいような気もするけど
         ま〜いいか・・」
 「本当のサルノコシカケは・・ブナサルノコシカケでしょ」
 「そうよ・・そうよ
         正しい理論だわ」

 「ほら・・石垣さん
      灯りがもっと大きく明るくなったようね」
 「周りが暗くなたからかな」
 「これはぜいたくだわ
    いさり火を見ながら・・酒を酌み交すなんて」
 「贅沢ね・・でもお金の贅沢ではなくて
         心の贅沢よ・・十分許されるわ」


 いさり火は白熱球のようなオレンジ色の灯りと、蛍光灯のような
 青白い光がありました。
 はるかかなたの灯りは、波の波動も無いのか一直線にならんで
 動きません。

 「狐の行列みたいだわ」
 「整然と並んでいるのね」
 不思議と、灯りが重なって見えることは無いのです。

 「伊藤さん・・
   また難しいこと教えちゃう」
 「なにを」
 「興味が無いかもしれないけど・・
   勝手に教えちゃう・・ついでだから」
 「あら・・あら
    教わっても無駄になるかも」
 「いいの・・いいの
     そのときわかっただけで
   だって教わったこと全てを頭に詰め込んだら
                   パンクしちゃうもの」
 「私って上手くできてるの
      ある一定以上は詰め込まれないのよ
    何か自分に必要なことが入ると・・不必要なものが
         出て行くみたいなの」
 「それは・・それは・・
   うまくできてるわ・・重要なことだわ
          物事を整理するってことは・・」

 「それで・・なにを詰め込ませようとしているの」
 「詰め込むことはできないわ
    だってさっぱり重要ではないんだもの」
 「でも・・時として
      意味の無いことも入れることもあるの
    だから・・入るかもね」
 「入るかしら」

 「やってみて」
 「じゃ・・教えちゃう」

 「ほら・・水平線にいさり火が見えるでしょ」
 「見える」
 「あのいさり火・・  ・・・・  ・・・
    う〜ん・・やっぱりやめよう」
 「何で途中で話を切るの」
 「だって・・やっぱり退屈なことなんだもの」
 「さっき言ったでしょ
     意味の無いことも入るし時としてそれも大事だと」
 「大事だけど・・」

 「まあ〜それより
    飲みましょ・・ほら
           本場のイカ刺し
        本場のイカそうめん・・どうこのつるつる感」

 どうも今日の石垣さん変だぞ・・
 何か無理してるな
 妙に陽気だし

 窓の外はもう真っ暗で、遠くの水平線には、イカ釣り船の
 いさり火があかあかとともっています。


★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.106

          山菜きのこ メールマガジン
            「ちいくろ奮戦記」

                            ・・・・・・★★★★★★★★

    ・・・ ・サルノコシカケ(19.北へ)・・・・・・・

   窓の外はもう真っ暗で、遠くの水平線には、イカ釣り船の
   いさり火があかあかとともっています。
             ・
             ・
             ・
  静かに・・海を見ながら
  美味しい料理をいただいてると

  「飲んでね!」
  「いただいてるわ」
   久しぶりのご馳走にお腹もご満悦のようです。
  
  「はい・・・石垣さんも」
  「少しね」
  コップを差し出しながら
  「私・・・今日は・・とっても
                伊藤さんに 感謝してるの」
  「あら・・あら・・どうしたの」
  少し酔って来たのか、石垣さんが私をのぞくようにしながら
  語りかけてくるのです。

  「私・・・決めたわ
       伊藤さん・・決めたの」
  「何を決めたのよ!」
  「う〜〜ん」
  「うなっていないで!」
  「やっと決心がついたの
      伊藤さんを見て・・・決心がついたの」
  「何の決心!
     またまた・・サルノコシカケがらみね」
  「残念でした・・・そうではありません
             もっと重要なことなの」
  茶目っ気たっぷりにいうと

  「発表します・・・
     私・・石垣は今から・・
       相田(あいだ)にもどります」
  「なにそれ・・
        なんのこと」

  「石垣でなくなるって事・・」
  「石垣で無くなる!」
  「そうよ・・これからは
    伊藤さん・・私は今から・・相田よ」
  「相田 智子(ともこ)よ」
  「相田 智子!
      突然どうしたの・・結婚?」

  「ふんぎりがついたの」
  「伊藤さんのお陰よ」
  「私が何か・・した?」
  「したのよ・・私に・・」
  「えっ・・なに・・仲人?
       覚えてないけど!」

  「や〜ね・・結婚ではないの!」
  「どうしたの・・急に・・驚くわ」
  「驚いた」
  「驚くわ」

  「石垣というのは・・結婚したときの・・相手の苗字なの
    離婚したんだけど・・・・ずーと相手の苗字にしていたの」
  
  「そのままにしておいたのよ」
  「未練があったのね・・
    いつでもまたもどれるようにしておこうって・・・
      いつの日か・・迎えにくるかも・・なんて
               そんな気持ちが・・・あったんだわ」
  「女々しいわ」
  「でも・・吹っ切れたのよ」
  「やっと・・重荷が下りたような気がするの」
  「伊藤さんのお陰よ・・ありがとう」


  「私が何か・・」
  「なんていうのかな・・
    上手く説明できないけど・・私に 生き方を
           人間としての道を・・教示してくれたのよ」

  酒によってるな・・石垣さんは、
  私の内心を見たら驚くのに・・
  私は、食べ物に負けて・・サルノコシカケの話を聞いただけなのに
  こんな大げさに・・評価をするなんて
  

 「そうそう・・伊藤さんは気がついていないのよ
           他人に希望や勇気を与えているってこと」
 「なにそれ・・そんな大げさな
       それに他の人に影響を及ぼすなんて・・」

 「でも・・私には与えたわ
         私は・・伊藤さんを見てとても自分が
    みすぼらしく思えたの・・つまんないことに
            こだわっていた自分が恥ずかしいわ」
 「そんな・・相手の苗字を名乗るってことは
                恥じることではないわ」

 「もちろんよ・・でも20年も引きずって
         あれこれ考えてきたことなの
             ちょうど娘も20才になったし・・」
 「決心ができったってことが、うれしいの
                 感謝している・・迷惑」

        
 「迷惑なことなんか・・ちっとも
     でも・・私の力は何にも影響してないと思うけど
       そんな買いかぶりは・・・後で後悔しますよ」
 「いいの・・私が決めたことだから
      伊藤さん・・いい・・いまから
    相田って呼んでね・・いいにくければ「智子」でもいいわ」
 「急に言われても!どちらもいいにくいわ」
 
 「早速・・「こずえ」に知らせなくちゃ」
 石垣・・・いや相田さんは、部屋の電話をとると
 仙台の自宅へ電話をしました。

 リリリリリリリ・・・ン
 しばらくすると若い女の人の声がします
 「もしもし・・石垣ですが」
 「こずえさん・・おかあさん」
 「遊びに行ったおかあさん!」
 「遊びではありませんよ・・研修よ!失礼よ!」
 「・・とかいって・・本当は観光旅行なんでしょ・・」
 「ま〜本当に失礼な子ね」

 「どう・・伊藤さんもいるの」
 「もちろんいますよ」
 「お酒か飲んで適当にやってるんでしょ」
 「当たり・・それはあたってるわ」
 「やっぱりね・・本当の目的はそれなんだから
   おばあちゃんもいっていたわ・・
    智子は言ったら聞かないって・・」
 「おや・・おばあちゃんのことを信用するの」
 「お母さんより信用できるもの
      お小遣いはくれるし」
 「やっぱりお金ね・・困った子ね・・20歳にもなって」
 「地獄の沙汰も金次第って言うでしょ」
 「おお・・金亡者・・」
 「お土産もきちんと買ってきてね 楽しみにしてるんだから」
 「はい・・はい」

 「ところで・・こずえさん」
 「重大発表です」
 「なに重大発表って」
 「驚かないでね」
 「どんなこと・・再婚とか」
 「似たようなものね」
 「エ〜再婚・・やだ〜」
 「再婚なんてことないでしょ」
 「そう・・あ〜安心した」
 「名前を変えたのよ」
 「名前って」
 「今日から・・相田にするの」
 「なんだ〜そんなこと」
 「驚かないの」
 「驚かない・・おばあちゃん相田だし
     何でお母さん石垣なのか・・相田のほうが合ってるわ」
 「あら・・がっかり
    驚いて喜んでくれると思ったのに」
 「喜んでいるわ・・よかった再婚でなくて」
 「もっと喜んでよ」
 「私も・・相田にするわ」
 「こずえさんに任せる」
 「じゃ〜私も相田」
 「じゃ二人とも今日から相田ってことにしよう」
 「うん・・うん・・よかった
         おかあさんよかったね」
 「ありがとう・・こずえさん」
 「おかあさん・・よかった」
 「ありがとう」

 元気の良かった声が、次第に小さくなり
 涙声になったかと思うと、二人とも電話口で泣き出してしまいました。
 「おかあさんよかったね」
 「ありがとう・・・」

 海のいさり火は、相変わらず動くことなく水平線に点々とつづいて
 明るく周囲を照らしていました。窓から初秋の潮風が入ってきましす。
 もらい泣きした涙が頬を伝わり冷たく感じました。

















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★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.107          山菜きのこ メールマガジン             「ちいくろ奮戦記」 ・・・・・・★★★★★★★★     ・・・ ・サルノコシカケ(20.北へ)・・・・・・・ 海のいさり火は、相変わらず動くことなく水平線に点々とつづいて  明るく周囲を照らしていました。窓から初秋の潮風が入ってきましす。  もらい泣きした涙が頬を伝わり冷たく感じました。 ・               ・               ・  「もしもし・・・・」  「もしもし・・・お客様」  誰か遠くのほうで、呼ぶ声がします。  ・・・今日は山へは行かないよ。  だって・・久しぶりに楽しく飲んだんだもの  ・・・ 迎えに来たの!・・・  あれ!・・野田さん・・元気になったの・・  いやだ・・ちいちゃん         前から・・   元気よ・・  野田さん・・早いこと   でも・・今日は・・きのこ採りは・・お休み・・  ・・どうしたの・・  ・・・いいことがあったのよ・・・  ・・いいことって・・  ・・いいことっていうか・・  ・・・・友達ができたの・・・  ・・だって野田さんが・・山へ行かなくなったでしょ・・  ・・そんなことないでしょ・・迎えに来たのよ・・  ・・さあ〜起きて起きて・・  ・・・ま〜元気だこと・・本当に良くなったの・・  ・・でも・・  ・・どうしたの・・  ・・友達が・・う〜ん・・石垣・・  ・・いや・・相田・・そうだ・・相田さんになったんだっけ・・  ・・相田さんが・・  「あの〜・・」  「えっ・・あっ!」  「あの・・お食事の用意が!」  「あれ・・」  「下のほうにご準備しておきましたので・・       用意ができましたら・・下の食堂のほうへ来てください」  「あっ・・・はい」  あわてて・・浴衣の前を合わせて  「ありがとうございます・・いきますから」  お手伝いさんが、階下へ降りていくのを確認してから  周りを見回すと・・  そうか・夢か!・    昨日・・あれから 大分遅くまで話し込んでいたから・・  寝たのも良く覚えていないし・・  い・・し・・が・・き・・  いや・・相田さんは・・  もう私以上に・・睡魔におかされているようです。  全く身じろぎもせずに、行儀正しく横向きに寝入っているのです。  窓からは、初秋の朝日が気持ちよく射し込んできます。  すがすがしい天気のようです。  昨日の夜のイカ漁船はどこにも見えません。  海は水平線のかなたまで何一つ無く続いています。  手前が薄いブルーで沖合いに行くほど濃い紫がかった色になっています。  朝日が波しぶきを輝かせて見えました。  きれいな朝です。  相田さんの船出には良い朝だわ  どうしょう・・まだ寝かせておくかしら  昨日は・・大分興奮していたから・・・  もう一度お風呂に入ってこよう・・  それから・・まだ寝ていたら・・起こしても  時計を見ますと・・7時を少し廻ったところです。  え〜と  大間発のフェリーは、11時30分  その前に・・脇ノ沢の北限のサルというものを見に行って・・  大丈夫かしら・・間に合うのかな〜  ま〜いいか・・  それより・・お風呂・・お風呂  食堂の脇を通るとき  お手伝いさんに、声をかけると  「どうぞ・・ごゆっくり」  いいな〜地方は・・親切で・・  あれ・・私も地方だっけ・・  お風呂は、天窓から朝日が差し込んで、明るくなっています。  黒光りする板の風呂も、今日は落ち着いて見えます  お湯の温度は少し熱そうに感じました。  相変わらずに湯の花が湯船一杯になっていて手足も見ることは  できません。  それでいて湯の花をすくおうとすると、手の間から  逃げ去ってしまうのです。  何度か試みましたがおなじで、湯の花は手の平で見ると  少し白く濁って見えるだけで、塊としては確認できないのです。    山の雲みたい  遠くから見ると白く見えるけど・・近くに行くと何も無いの  ・・・貴方は雲の仲間なの・・・  などと・・湯の花に語りかけていると・・  お風呂の引き戸が開いて・・    「伊藤さん・・良く寝ちゃった」  「あれ・・石・・相田さん・・」  「相田って呼んでくれたの!」  「智子って呼べって!」  「お〜いじわる・・うふふふふ   なかなか・・いいお風呂だわ」  お風呂に入るなり相田さんは  「伊藤さん・・」  「はいはい・・なんですか相田さん」  「いいね・・いい響きだわ・・相田って悪くないわね                        そう思わない」  「はいはい・・呼びやすい名前だこと」  「ま〜」  「どうしたの」  「今日・・脇ノ沢のサルを見に行くの中止にしようと思って」  「どうして・・サルがキセルを構えているのを                見なくてもよくなったの」  「それは興味があるけど            少し考えたのよ」  「またなんかひらめいたの 学者の相田さん」  「何でちゃかすのよ・・いじわるなんだから」  「ま〜聞きましょ          どのようなことなのか」  「単純ね・・     寝坊したから・・ついでにもう少しここでゆっくりして            そして落ち着いてから出かけようってことなの」  「あら・・あら・・      信条を曲げるの      絶対サルが腰掛けているのを見るって言ったの誰だっけかな〜」  「心構えを変えたのよ      物事にこだわりすぎないようにすることにしたの                   ま〜柔軟に生きるってわけね」  「それに大きな謎は・・解けたことだし                こだわらなくてもいいわ」  「お〜一日で・・    こうも変わるのね・・・」  「いいことはすぐに実行するのよ」  「いいことなの」  「いいことなのよ・・物事を柔軟に考えることは    フレキシビリテーって発想・・」  「どう〜私変わった      今日から・・相田ですからね・・名前に負けないで変わらないと」  「そうかしら・・・     ただ遅くおきたのと・・二日酔いに負けたと       思うんですが・・・・わたくしめは・・そう思います」  「あら・・じゃ無理しでも行きますか」  「おお信条を・・また曲げるんだから     行きたいって言っていないんですけど・・」  「そうでしょ・・     私もそう思って・・提案したのよ」  「ま〜私を思ってのことだったの       やさしい・・相田さんだこと     変わったわ・・・やさしく変身したこと                  だったら・・・賛成よ」  「ふふふふふふふふふふ・・・」  「ふふふふふふふふふふふ・・・・・・・」  「はははははははっははは・・」  「ふ〜おかしい」    風呂上り食堂のテーブルに女将さんも来て  話しに入ります。  「サルノコシカケを見に、北海道へ!」  この人たちは、物好きな人たちだとでも思ったでしょうか  「このあたりでは・・あんまり見かけないけど」  サルノコシカケそのものがよくわからないというふうでした。  この周辺の漁業の話になり、  マグロの一本つりをやっている漁師さんが結構いるのだそうです。  へミングウエーの「老人と海」のような話です  とても大きいマグロですと一本数百万円もするらしいのです。  「すごい・・海にはロマンがあるわ」  「ロマンではなくて・・金塊でしょ」  「夢を壊さないで・・」  「美味しいコーヒーが、もったいないわ」  「あら・・伊藤さん・・ロマンチストね               いいわ夢を見るって」  「夢ではなくて・・本当ですよね               女将さん・・・」  「年間には、何匹かは獲って来る人がいるの」  「それは凄い」  「凄いでしょ・・     それは男のロマンよ・・    それに・・家で待ってる奥さんや家族も期待してるわ      今日こそって・・そうでしょ女将さん」  「そうね」  丸山風の女将さんはタバコを取り出すと、  「ちょっとタバコをすってもいいですか」といって  美味しそうに口にしました。  はきだしたタバコの煙が、朝日に揺らめきゆっくりと上のほうにと  流れていきます。  タバコの煙ごしから見た女将さんの表情は  眉毛が太く、口元が大きく彫りの深い顔かたちは  丸山明弘にも宝塚の「男役」の感じにも見えました。  なんか・・この温泉場には似つかないと思いながら  見ていると・・  「私も昔は東京にいたのよ」というのです。  石垣いや相田さんとの、東京近辺の会話には、とても  懐かしく思い出しながら話しているのです。  まもなく二人は宿を後にして車に乗り込みました。  時期に大間港に着きました。  フェリーのついている場所は風が強く、  車外では寒く感じられるほどの風でした。  フェリー乗り場の売店には大きく「マグロTシャツ」と書いて  販売されています。  どうやら・・マグロで町おこしのようです。  それに世界柔道に出場するなんとかさんが、この町の出身なので  このtシャツを着て応援するのだそうですが・・  フェリーのすぐ近くには、小型の漁船が10艘ぐらい係留して  いて、ときどきエンジン音がしたかと思うとポンポンと音を出しながら  港を出て行くのです。  岸壁には漁師さんの小型のトラックが並んでいます。    イカ釣り漁から帰ってすぐ、また別の漁にでも・・?    いつの間にか小さなフェリー乗り場には、どこからともなく  現れてきたかのように、車や、バイク、人が集まりだしてきました。        二人は大間岬の突端から、11時30分発の函館行きに  乗り込みました。           ・           ・           ・  フェリーの甲板から海を見ていると  航路の波しぶきが白く見えています。  白い波しぶきは時には大きな渦巻きを巻きながら、時には落ち着いた   線状に見えたりします。  その模様をずーと眺めていました。              ・              ・              ・              ・  みんな・・本当に  一人一人の生き方に大きな人生のドラマがあるんだわ  誰にも語れない・・誰にも知られたくない・・過去があるんだわ  思いもつかない人生のドラマが・・みんなに・・  ・・・・誰にでも・・・  人間一人一人が・・大きな船の船長さんなんだわ  人生の大海原を航海する・・  船は大間港をどんどん引き離していきました。
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★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.108          山菜きのこ メールマガジン             「ちいくろ奮戦記」 ・・・・・・★★★★★★★★     ・・・ ・サルノコシカケ(21.北へ)・・・・・・・      みんな・・本当に  一人一人の生き方に大きな人生のドラマがあるんだわ  誰にも語れない・・誰にも知られたくない・・過去があるんだわ  思いもつかない人生のドラマが・・みんなに・・  ・・・・誰にでも・・・  人間一人一人が・・大きな船の船長さんなんだわ  人生の大海原を航海する・・  船は大間港をどんどん引き離していきました。           ・           ・           ・  船室に戻ると、小さな丸いガラス窓越しにじっと海を見つめている  相田さんがいました。  頭や体を動かすことなく、何か思い出にふけりながら  海を見るでもなく遠い過去のほうを眺めている風です。  そばに行って  「おや・・?     思い出と友達になってんの・・相田さん」  「あら・・伊藤さん 失礼気が付かなかったの」  「あんまり・・真剣だから声を掛けにくくって」  「真剣って・・ちょっと気合を入れているの」  「それ以上気合を入れるの・・・こわっ」  「伊藤さんに負けないようにね       私には新しい出発よ」  「あらあら・・いつだったか      人生はいつも今の時点が新たな出発だって     誰かさんが・・・言っていたような気がするけど」  「覚えていたの・・・余計なことは        頭に入らないんでなかったの」  「残念・・・余計なことではなかったみたいよ            頭の片隅から出てきたんだもの」  「基本的には・・・・今いるときがいつも始まりよ。・・・       今が最初よ・・・」  「だから・・過去を悔やむなって言うんでしょ・・      今日からを今を大事に生きれっばて・・そういうことでしょ」  「わかってるじゃないの・・お勉強したのね               エライ・・・・エライ」  「だって・・・先生がとっても怖いんですもの・・      忘れたりしたら・・それはもうビシビシですからね」  「ふふふふふふふ・・・」  「ふふふふふふふふ・・」  「でも冗談ではなく・・     本当に気持ちを新たにしているの・・       海を見ながら誓っているの・・・もう負けないって」  「いやだ・・たまには負けるが勝ちってことを       覚えることも・・必要ね」  「おう・・おう・・     その考え方・・柔軟性・・その気持ちの持ち方が       好きなの・・・伊藤さんのいいところよ」  「石・・いや    ・・相田さんには、絶好の出発だわ       いかにも船出って感じだし・・・     新たなところにいくのも・・・気持ちの切り替えに役立つわ」  「そうそう・・良いこと言うわ       そんな気持ちになっていたところなの」  「ほら・・外は快晴ですし・・         みんなが・・・門出を祝ってくれてるようよ」  「ありがとう・・      じゃ〜・・今夜も乾杯する!」  「え〜また・・    懲りない人ね・・今度はサルノコシカケ採りを      やめるって・・ことになるんじゃない」  「それはありませんよ      脇ノ沢のサルを見に行かなかったのは・・・              謎が解けたからよ」  「でもまた・・謎が解けるかも     研究家とか学者さんは・・突然ひらめくんだから!      頭の構造が違っているのね・・・だから安心できません・・よ〜」  「ま〜・・」  「ふっふふふふふ」  「でもよかった・・」  「よかったね」  フェリーは意外とお客が乗っているのです。  大間という下北の半島の突端から出るのだから・乗客はいるのだろうか  などと心配をしていましたが、見回しますと広い客席には  点々とお客さんが乗っているのです。  フェリーの発着所に着いたときは、車もまばらで、やっぱりシーズンオフ  なんだろうななどと思っていましたが、出発近くになるとどこからともなく  車や人が集まり始めたのです。  そういえば鳥羽にいたころは、伊勢湾フェリーで伊良湖の会社の  保養所に何度かいったことを思い出しました。  鳥羽からは天気がよいと伊良湖の近くにある神島が見えることがありました。  伊勢湾フェリーは、伊良湖〜鳥羽を一時間で結んでいます。  名古屋、大阪などからの観光客が多いので、便は一時間に一本と  多くあります。ちょうど大間〜函館のようです。  でも、大間のほうには、鳥羽のように背後に大阪や名古屋といった  大きな都市がありません。  せいぜい青森や八戸でしょうから、伊勢湾フェリーに比べたら  採算は厳しいだろうな・・と思っていたのです。  でもこの乗客には意外で、驚いていたのです。  二人で客室から海を見ながら  「ワイワイ」していると・・  近くのおばさんが(失礼・・私もおばさんと呼ばれています)  「あの・・もし・・     どっちへいかれんの」  といいながら・・話の仲間に入りに来たのです。  「えっ・・」  なんて答えればいいのかな!  ところがすかさずに  「こんにちわ・・    北海道の植物を観察に・・仙台から」  「植物の観察?・・ですか」  「ほら・・こちらって       本州より寒いから・・・山などには      変った山野草が・・・・それを見に・・    それと・・温泉・・・・      う〜ん・・・やっぱり観光かな」   相田さんが、私に相槌をうつように       促すので  「そうです・・観察っていうより      観光よ・・観光ですよ・・」  「そうかね・・」  「おばさんは?」  あんまりこまかいことを聞かれるとまずいと思ったのか  相田さんが、おばさんに話しかけました。  おばさんは、一人で大きな紙袋を二つほどもっているようです。  疲れた感じのする身なりでした。  家からそのまま出てきたような、普段着の格好です。  メガネをかけて・・  「ふ〜」と大きなため息をついて  「娘のところへ」  「まあ〜娘さん」  「出産か何か」  「いいえ・・病気で入院したから」  「あら・・病気で       それは心配だわ」  「たいへんね・・おばさん」  「まあ〜あんまり悪い病気で・・ないようだし」  「それはよかった」  「ありがとう」   ・・・・  このおばさんの前では、あまり楽しそうに話はできないぞと  相田さんに目配りすると  「承知しました」というようにうなづきました。  函館の周辺の地域とこの下北の人たちは、交流があるようです。  おばさんの娘さんは、下北の大畑に嫁いできたのだそうです  昔は大分行き来していたそうですが、最近はすくななってきたと  話しています。  娘さんのご主人は、漁船の漁師さんで、ニュウージランドとか  太平洋のほうでイカ釣りをやっているとのことでした。  留守中の姑さんとうまくいかずに・・・  とても苦労しているなどと・話すのです。  「娘のことが・・かわいそうで・・」         ・         ・           ・  嫁と姑、・・・・  深い深い・・因縁の対決です  昔からその構図はあまり変ってはいません。  それがいやで今の若い人たちは、姑の居る家には  余り嫁ごうとしません。    さばけた自分などと言っている人でも、やっぱり  同じ問題を抱えているのです。  嫁と姑・・・  難しくて・・・  答えが出ない自分に・・  ふと考えてしまうのです。  相田さんは・・・  あっ駄目だ・・・離婚していて母親との暮らしだし  姑さんとは・・ほとんどいなかったんだ  嫁と姑・・・・  あ〜・・  なぜ・・うまく・・仲良く暮らせないの      難しい問題を「おばさん」は、私に提起してくれました。  人間は未熟の塊だわ  「我」の塊だわ    わかっていても・・  理解していても・・時として反対のことをやってしまう  何故なの  自分を苦しめながら・・・  悪いことと知りながら・・・  素直になれない自分を知りながら・・・  何故・・・      ・・・船は・・函館に着くようです  あわただしく船倉に降りていく私に、重い思いが  のしかかってくるようでした。  人間は不完全なのよ  許してね・・・・  いや・・・許されるべきだわ・・  完全な人なんていないのよ・・  船は岸壁近くで2〜3度大きく揺れました。  船内の空間がグワ〜ンと、ひん曲がって揺れるように  感じました。  でも何事もなくハッチは開いて、車は青空の下に  飛び出したのです。  そうだ・・  「ケセラセラ」だ  「相田さん!・・ケセラセラよ」  「えっなに・・突然」  「人生は・・「ケセラセラ」ってこと」  「あらっ・・それは私のせりふよ」  「いいじやない・・・    誰かさんが言ったでしょ・・いいことは真似ろって」  「そうよ・・いいことは真似るのよ「ケセラセラ」ね」  「ケッセ・・ラセラ〜      なるようになる・・・        ○○○・・・のこ〜とは・・わからない」  「えっなんていったの・・○○○・・・ってな〜に」  「それは・・永遠の課題ってこと・・・」  「おうむずかし〜永遠なんて」  「私にも・・少しは難しいことを              言わせてよね」  「どうぞ・・・どうぞ・・・」  「ふふふふふふふ・・」  「ふふふふふふふふ・・・」  車は・・快晴の中を船から飛び出していきました。  相田さんの出発です。  もちろん私の出発でもあるのです。  ・・・日々のそのときそのときが新しい出発なのですから・・・
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★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.109          山菜きのこ メールマガジン             「ちいくろ奮戦記」 ・・・・・・★★★★★★★★     ・・・ ・サルノコシカケ(22.北へ)・・・・・・・ フェリーから降りた車は、青空の下に飛び出しました。  「さあ〜いくわよ」  ハンドルを握った相田さんがいいます。  「いよいよね!」  「・・いかそうめんとか・・    いくら丼が食べたいけど・・我慢・・我慢ね」  「もちろんよ・・     大収穫の後に・・ゆっくりいただきましょ」  「そうしょう・・    すると・・見つけるにも・・ 励みになるもの」  「早ければ今晩でも食べれるかもよ」  「そうね・・・今晩にもね!」  「函館は・・    朝市とか・・御陵郭とか・・夜景とかが                   観光スポットらしいわ」  「今度ゆっくり来ましょ」  「来れるかしら」  「来るのよ」  「今度は何の目的で」  「サルノコシカケってことにはいかないし       まあ〜・・今度はきのこ採りってとこはどうかしら」  「高いきのこ採りにつくわね」  「仕方がないのよ・・・      何でも・・・先行投資は必要よ」  「先行投資?」  「きのこの生態を観察することも・・きのこを知る意味では     大事なことだから・・」  「おおげさだわ・・生態だなんて」  「言葉のあやね!     まあ〜そんな・・言い訳はどうかしら」  「誰に言い訳を」  「自分自身によ!       無駄遣いでないって・・言い訳するの」  「それは言えるわ      自分でも納得したいって気持ちあるものね」  「そうでしょ・・     じゃ・・そうしましょ」  「じゃ今回は・・あきらめて・・      次にゆっくり来ることにして・・いきましょ!」  「おお・・いきましょ           山は呼んでるぞ!」             ・             ・             ・  「それで・・どこを目指す?」  「・・わからないの・・・」  「やみ雲に・・走るの!」  「とりあえずは、そのようよ」  「大丈夫・・?」  「北海道は・・でっかいどう・・」  「まあ〜・・心強いこと」  「車も走れば・・山に当たるってこと」  「ふふふ・・」  函館を出発してからしばらくは、東北地方にあるような険しく  そそり立った山は見当たりません。  山陰は見えるのですが、近くに来ると高原のようになってしまうのです。  まるで、里山の放牧地帯のような牧草畑の続く、なだらかな  丘陵地のようなところです。  山と思われるところには、白樺の木や松類の針葉樹が生い茂っています。  木も細くとても、サルノコシカケが付いているとは、  見受けられないのです。  「相田さん・・山の景観が違うね」  「違うわ・・高原のような感じね」  「信州って・・こんな感じなのかな」  「標高は高いかも知れないけど・・山って感じはしないわ」  「サルノコシカケって・・このようなところにも出るのかしら」  「う〜ん・・出ないと思うわ      さっきから注意深く見てるけど・・・     立ち枯れ木が・・無いの・・ほとんど見当たらないわ」  「そういえば・・」  「北海道でも・・この道南と呼ばれるところは・・           ・・自然環境の穏やかなところなのかも」  「暖かいとか・・・?」  「暖かさより・・地形や、風や、河川・・雨などかな〜」  「地形?・・風・・?・・雨・・?」  「高原で・・雨・・水分が少なく・・       それが・・木を太らせない理由ではって考えているの」  「ほら・・川、河川が少ないでしょ」  「川が少ない!」  「川が見当たらないの」  「そういえば・・少ないかもね」  「むこうでは・・河川が多いのに」  「木の成長に水分は重要だわ     大雨の降る地域には大木が多いの        三重県や、和歌山県のところ・・屋久島のスギ       秋田県や・・そう白神山地も雨が多いの」  「雨・・・雨ね」  「水分は・・木を成長させて・・木は大木になり        大木になった木は、自らの樹木の大きさに      自分を支えきれずに・・風などで倒れる・・・」  「倒れた木には・・」  「倒れたり・・倒れる寸前の木には・・              サルノコシカケが出る」  「じゃ〜サルノコシカケは・・大木に出る!」  「倒木や・・立ち枯れ木は・・            大木が多いわ    細い木は・・・倒れる根拠がないの」  「ここの木には・・・サルノコシカケは・・出ない?」  「出ない・・・    出ていても・・小さいと思うわ」  「小さい・・」  「この周辺には・・・     大きな湖沼や、河川が少ないので・・・      サルノコシカケには、不適な気候条件かもしれないわ」  「それに・・木が細いから!」  「うん・・うん・・木が細い」  何気なく車を運転しているかと思っていましたが、地形や  景観を見て、サルノコシカケに適した山かどうかを  観察していたのです。  驚いた推察力です。  「試しに・・ちょっと山に入って見る?」  「入る・・!」  「見てみよう」    函館を出てから二時間ぐらいです  右手に海が見えるところ、長万部の看板から左手に入り  山というより丘陵地に木が茂っている里山風の  林に入って見ることにしました。  道路脇に車を駐車して、林を見ることにしました。  北海道の道路は、除雪のためにか道路も広いですが  歩道と呼ばれる路側帯が、やけに広いのです。  車一台は、ゆうに停められる広さがあります。  長靴に履き替えて身支度を整えようとすると、  「伊藤さん・・・見るだけ」  「見るだけ!」  「近くに行って、眺めるだけ」  「入らないの!」  「入っても無駄よ」  「無いの!」  「う〜ん・・無いと思うわ」   車から林までは300mぐらい・・・   背は高くても細い木です。  林の中は熊笹で覆われています。  二人で林の中や、木を見ましたが、立ち枯れ木や倒れた木は  見当たりませんでした。  「やっぱり・・見当たらないわ」  「本当・・なさそうね」  むこうでは、ほとんど見ることの無いとどまつや、白樺類の木が  天高く伸びきっているのです。  東北のいつも見る雑木林とは大違いでした。  そういえば途中道路沿いの看板に、  「ブナ北限地」の看板がありました。  そうか・・やっぱり広葉樹はこちらには向いてないんだ    針葉樹・・・「ツガサルノコシカケ」か・・  木も違うので・・サルノコシカケも・・これは違うかも・・  こんなに見つからないんでは・・・  「サルノコシカケ」は、こちらでは貴重品?  車に戻ると  「伊藤さん・・・洞爺湖方面に向かいましょ」  「洞爺湖!」  「ほら・・地図で見ると・・」  手に持っている地図から、札幌の近くにある「羊蹄山」というのが  高くて手ごろというのです。  それから・・湖が近いので洞爺湖周辺には・・  サルノコシカケの生息には適しているのでは・・という考えでした。    「やっぱり・・違ったわ」  「ブナサルノコシカケとツガサルノコシカケのこと」  「はじめ私はツガサルノコシカケとブナサルノコシカケは   同一品ではないかと疑ったのね・・・    でも・・間違っていることが明確になってきたわ」  「・・ツガサルノコシカケとブナサルノコシカケは        違う品種なの?」  「違うわ」  「違うのね」  「違う・・いよいよ楽しくなってきちゃった・・伊藤さん」  「あら・・なんか楽しそうね」  「だって・・ツガサルノコシカケに出会えるんですもの」  「採れると思ってるの」  「採れるかな・・いや採れるわ・・きっと採れるわよ」  「いきましょ・・早く」    二人は再び車に乗り込みました。  相田さんは、新しい発見をしたかのように  生き生きとしてきました。  新しいサルノコシカケを目指して・・・  車は、羊蹄山を目指して走り始めました。          ・          ・          ・          ・  「採れるかな?」  内心そう思いました。  でも・・相田さんはサルがサルノコシカケに座って  キセルかなんかでプクプクしている様子を思い浮かべているときよりも、  更に楽しそうに輝いて見えました。
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★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.110          山菜きのこ メールマガジン             「ちいくろ奮戦記」 ・・・・・・★★★★★★★★     ・・・ ・サルノコシカケ(23.北へ)・・・・・・・     北海道はとても広いです。  本州にいますと、面積の広さは県別に比較してしまいますので、北海道も  感覚的に一つの県として見てしまいがちです。  函館から札幌、札幌から釧路、旭川から稚内など、同じ県内の  移動のように考えがちなのです。  でも交通標識を見ますと、単位が違うのです。  通常本州ですと、国道などには次の町までの距離が表示されて  せいぜい40kmぐらいの表示なのです。  ときどき東京まで400km、とか青森まで350kmとかでると  いくつもの県をまたいでいくから・・・  と納得してしまうのですが  北海道での道での標識は、普通に○○まで100kmなどと  通常の標識なのです。  えっ・・これからまだ100kmも・・と思ううことが  しばしばなのです。  同じ北海道の中で・・まだこれからこんなにも  いけどもいけども・・目的地へはなかなか着きません。  「伊藤さん・・・今日中に一度は            山に入ってみなくちゃね」  「そうね・・山の雰囲気を味わっておかないと」  「でも結構走っているのに・・・北海道は広いわ」  「大きいね・・想像以上だわ」  「特に今日はね・・道をわからずに走っているから       どこをどう走っているのか・・・」  「地図にはこの道を行けば、羊蹄山に行くはずよ」  二人は、函館から休みもしないで走り続けています。  遠くに山が見えてくると・・・  「見えた・・・見つけた             どうあの山は」  「よさそうね・・」  遠くに見えた山にいこうとしますが、道は山の方向から  離れていってしまうのです。  「あらあら・・道が・・・」  「遠くに離れてしまう」  思うように見えた山と、道が連動していきません。  そのうちに、時間は経ってきます。  「あらこんな時間だ」  ふと車の時計を見ると4時を過ぎていました。  もう3時間も走っているのに、目的地へは着いていないのです。    途中の山々へは、木が細かったり、山が浅かったりして  「サルノコシカケ」が、出ていそうになかったのです。  高い山を目指して走っているのですが、  どうも山が嫌うのか思うように近づけません。   「相田さん・・・ほらニセコ町って看板でてる                 もう羊蹄山の近くよ」  「ほんとだ・・じゃ次は右のほうに曲がるのね」  「地図で見ると・・・もう少し行ってからのほうが                      よさそうよ」  平日なので車の交通量は少なめです。  きっと後ろから見た私たちの車は、行き場のない目的もない  ヒッチハイクのようにふらふらと見えたことでしょう。  晴れた高原を「あっちでもない・・こっちでもない」などと  言いながら・・「羊蹄山」と表示されているところまで  たどり着くことができました。  「ほら・・羊蹄山よ」  「ほんとだ・・大きい」  車の左窓に見えた「羊蹄山」は、とても大きな山でした。  私たちのほうで大きな山は、「栗駒山」ですが、  この山のいでたちも変っています。  富士山を見ているような感じなのです。  麓には山などが連なっておらず・・「羊蹄山」だけが一人  高くたたずんで見えるのです。  「栗駒山」は違います。  他の「高い山」もです。  これらの山は山脈の一部になって見えるのです。  周囲にはこれらに負けないような、山々が連なっていて  深い森に囲まれているのです。  でも羊蹄山は、ぽつんと一人だけたたずんでいるように見えました。  「とりあえずに、車で麓まで入れるところがあったら      入ってみよう」   「うん・・」  羊蹄山を包み込むように道はありました。  でも・・山道が見当たりません  しばらく麓を走っていましたが、中へ行く道が見当たらないのです。  ここかなと思って入っていくと住宅地だったり、畑地だったり  時には農場の中へ入っていったりしてしまいました。  「山へはいけないのかしら」  東北の山は、山の麓を道路が走っており、いくつもの林道が  林の中へ入っていっているのです。  道も曲がりくねったり、険しかったりしますが  こちらの道は一向にそんな気配はしないのです。  どこまでも周囲を眺めながら高原の道を走り続けると言った感じです  山は近くには見えますが、林の中に入っていくことはありません。  「やっぱり北海道はスケールが違う        地元の人に聞かないと入れないかも・・」   「聞いてみようか」  「もう少し行ったら・・聞いてみよう」  車は山麓の道を走り続けていますと・・  看板が見えます。  羊蹄山○○○と書かれています  「看板があるわ」  「行って見ましょ」    大きな看板は、森林センターなどのような公的な施設のようでした。   車で入っていきますと、スポーツ公園のようになっていて  車が10台ぐらい停まっており、テニスコートでテニスに興じる人  芝生では野外料理「バーベキュー」等を楽しんでいる人たちが  見えました。  「ここから・・山へいけるかもしれない」  「行ってみよう」  屋外で楽しんでいる人たちを横目に、車は進みます。  でもまもなく・・・車の進入禁止・・・も立て看板が  「行けないわ」  「残念・・いけると思ったのに・・ね・・」  「仕方ないわ・・戻って       来る途中見えたところに行って見ましょ」  「あの林ね」  「あの場所で・・今日は終わりね」  「そうか・・仕方ないか」  車を戻して、入り口付近の林に入って見ることにしました。  この付近一帯は、レクレーション用に整備された林です。  きれいに刈り払いをされた道を歩いてみると  「伊藤さん・・伊藤さん・・きのこでてる」  「きのこ!」  「ほら・・一杯」  「あれ・・本当」  車が一台通る広さの道の両側に、きのこが出ています  「ナラタケよ」  「ナラタケ!」  「こちらではポリポリなどといって、親しまれているきのこなの」  「ちょうどいい時期だわ       どうして・・採らないのかしら」  「気が付いていないのかも       それより一般の人たちはきのこには興味が                   ないのかもしれないわ」  「もったいない・・・でもいいわ      お陰で私たちが採れるんだから」  ナラタケは道の両側100mぐらいに続いて出ていました。  9月初めですので、やっぱり15日から30日ぐらい早い  きのこの収穫でした。  道から続く林は、松林です。  道路沿いに雑木林があってすぐ松林です。  松林も良く整備されていて、難なく歩けるのです。  枝の間から木漏れ日が射していますが、  林の中は暗くジメッとしていました。    ベニテングタケやホコリタケにまじって  松林には、見慣れないきのこが出ています。  相田さんは松林の中へ入っていくと、林の中で  きのこでも探しているような  一人の男性になにか話をかけています  私も追いかけていきました。  やはりきのこの話をしているようです。  男の人は木の棒のようなもので、マツバを掻き分けています  「なにか採れるの?」  「あかもみたけですって」  「あかもみたけ!」  「見せていただいてもいいですか」  男の人は気安く・・  「ほら・・」  「あら小さい・・幼菌ね」  「大きいのは・・採られたね」  あかもみたけは、幼菌でほんの少しだけ出ているところを  木の棒で引っかいて見つけるという職人技のような  「きのこ」採りでした。  それも袋に結構採っていたのですから  どこにも名人技を持っている人はいるんだ  「ほら・・私も採ったわ」  いつの間にか相田さんも3個ほどのあかもみたけを採っていました。  「それから・・このきのこも」  「なにそれ・・」  「わからない!」  「わからない」  「マツバハリタケよ」  「マツバハリタケ!      あの海岸線の・・砂林の」  「そう・・あのマツバハリタケ」  「山にも・・でる・・の」  「でるんだ・・    わたしも初めて・・山では」  そのマツバハリタケは、海岸でのマツバハリタケとは違い  薄く小さいものでした。  でも傘の後ろ側は、マツバハリタケ特有な針模様と、傘が  湾曲しているので、「マツバハリタケ」だとわかりました。  男の人に相田さんは、羊蹄山への入り口と  「サルノコシカケ」の事を聞いた模様です。  この辺では「サルノコシカケ」は、  ほとんど見当たらないと言うことのようです  「そうかやっぱり」  相田さんはうなづくようにして聞いていましたが、  「伊藤さん・・・いよいよ明日は           挑戦よ・・・・ブナサルノコシカケに」  「明日に備えて・・今日は帰りましょう」  二人は羊蹄山の森林センターを後にしました。
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★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.111          山菜きのこ メールマガジン             「ちいくろ奮戦記」 ・・・・・・★★★★★★★★     ・・・ ・サルノコシカケ(24.北へ)・・・・・・・ 「そうかやっぱり」  相田さんはうなづくようにして聞いていましたが、  「伊藤さん・・・いよいよ明日は           挑戦よ・・・・ブナサルノコシカケに」  「明日に備えて・・今日は帰りましょう」  二人は羊蹄山の森林センターを後にしました。  北海道は広いです。  宿泊所を、洞爺湖温泉にしたのです。  それが間違いでした。  二人は早めに引き上げたつもりなのに、なんと羊蹄山から  洞爺湖温泉の宿泊所のホテルまで2時間以上もかかってしまいました。  同じ北海道だからということで、マップからホテルを選んで  羊蹄山の次は、湖に近い山で探すのに「洞爺湖」近辺で宿泊するには  好都合だからと言って、洞爺湖のホテルを予約してしまったのです。  暗い山道を地図を頼りに「洞爺湖」に向かいます。  何度か、道を間違いながら・・  月が行く手方向に真ん丸く出てきました。  「やっぱり北海道は広さが違うのね」  「地図だとあんまり遠くに感じないのに               ずいぶんと遠いのね」  「明日はまた羊蹄山まで戻って採りましょ」  「あるかしら」  「山が深く大きいので・・あるとおもうんだけど」  「明日は早めに・・・でかけましょ      もう・・記念は終わったし・・・深酒はしないで・・ね」  「あら・・深酒だなんて・・      それはちがうわ・・祝い酒よ!」  「祝い酒でも飲みすぎれば・・・深酒でしょ                 まあ〜いいかあ〜」  「いいでしょ・・おいしい・・お酒だったわ」  「今日は早く寝て・・明日に備えなくちゃ」  「おっ・・伊藤さん       気合入ってるね」  「気合でなくて・・・眠いだけよ」  空には月の近くに、いろいろな星が見えてきました。  電話でホテルには8時ごろの到着ですと遅れることを  連絡しておきました。  大分走って山の中腹に来たとき、  湖の周辺に灯りがたくさん見えてきました。  どうやら洞爺湖温泉のようです。  今日は函館から羊蹄山・・そして洞爺湖と・・  車で走りづめのようでした。  山に入った時間は2時間もないでしょう・・  ホテルに付いた二人は、おとなしく食事を済ませると  すぐに床に就きました。  横に寝ている相田さんを見ると、もう、すぐに寝息が聞こえてきます  「食べ物や」「お酒」の話題が出なかったので、  よほど眠かったのでしょう。  いつの間にか私も寝入ってしまいました。          ・          ・          ・  翌朝・・ホテルを8時前に出発です。  温泉や洞爺湖の景色、食べ物等の欲望は・・・まず目的を  ある程度達成してから・・・楽しもうと言うことになりました。  もう一泊同じホテルに予約して今晩はゆっくりしようなどと  言いながらの出発です。  朝は体がキリットします。  「羊蹄山まで2時間ぐらいだから・・・      お昼も山でいただいて・・3時ごろまでの予定でいいかしら」  「いいわよ・・・      でも無いときはどっか違う山へ移動しましょ」  「そうね・・     山へ入って様子を見ての臨機応変ってことにしましょ」  夜のときはあんまりわからなかったのですが、  洞爺湖温泉から、羊蹄山に行く途中にも結構いい山がありました。  全般的に高く険しくはなく・・なだらかな感じのする  山のようです。  羊蹄山の近くに来ました。  山へ入る林道を探して周囲をぐるぐるまわります。  昨日と同じようになかなか山へ入る道が見当たらないのです。  民家の人に聞こうにも、民家が少なくて    本道からそれる砂利道には2〜3度入ってみました。  とうもろこし畑だったり、牧草地だったり・・・  サイロが見えてきたので、思い切って牛舎の近くの  人影に近づき聞いてみることにしました。  白いつなぎのようなものを着た身なりの人は、  私たちが近づいてもいっこうに不審がらづに、作業を続けています。  北海道の人はみんなこうなのかな〜  「あの〜すみません・・お仕事中     お伺いしたいことがありまして・・」  相田さんがいつもとは違う小さな頼りなさそうな声で  いいますと  やっと気が付いたように、こちらを見てくれました。  ひげを蓄えている品のよさそうな人です。  消毒か何かをするのでしょうか、噴霧器を肩にかけて  牛舎に入るところでした。  「あ〜はい・・なにか」  「あの〜山へ行きたいんですが」  「山へ・・・」  何のことかわからないらしく、  「山・・山ですか!」  「はい・・あの山へ行ってみたいんですけど                  道が見つからなくて」   相田さんは、山を指差しながらいうと   その方も同じように山を指差しました  「ええこの山です」  「登山・・ですか」  「いや違うんです・・山野草を見たいんですけど」  「山野草・・・」  なんかまだ理解ができていないようです。  何でこんなところへ来て山へ行きたいって聞かれるのかが・・・  「私たち・・仙台から     北海道の山にはどんな山野草が出ているかを      見たくて来たのですが・・・    道がわからなくって・・・    間違ってここへ来てしまったのです」  「仙台から・・・え〜           それは大変ですね    何かお目当ての山野草でもあるんですか」  「いや・・特にないんですが        どんなのが出ているのか見たくて」  「熱心ですね・・わざわざ来るなんて」  「そうでもないんですけど・・              興味があって」  「この山へ行きたいんですね?」  「はい・・あの〜      この周辺に道とかがあれば・・         そこから行きたいのですが」  「この辺の道は・・上までは行ってはいませんよ      車では山のほんの少しぐらいしか行けませんけど」  「それで構わないんです・・深く入ったり            高く登ったりしませんので」  「そうですか・・      山野草が見れますかね!」  「何か見れれば・・それで十分なんです!」  まだ納得がいかないような素振りでしたが  うんうんとうなづきながら  「この道を戻って・・      舗装道路に出たら左に走りますと、    そうだなあ〜2kmぐらあるかな       牧草地の切れ目のところに・・左に     入る砂利道がありますから・・そこがここからは                        一番近くかな〜」  「あの〜ちょっと  漫画でもよろしいので地図を       描いていただいてもよろしいですか」  メモと鉛筆を渡すと  「目印がないから・・      描きにくいけど・・・」  そういいながら・・約2kmここにとうもろこし畑      広くなって・・そうか松ノ木もあったな・・     松ノ木っがあって・・わかるかな〜  「はい・・これでいいと思うけど」  「ありがとうございます・・助かりました」  「山の中はいろんな林道が入り乱れて       走っているから気をつけて」   やさしく言ってくれました。  面倒がらずに親切に教えていただきました。  「はい・・注意します」   何度も何度もお辞儀をして  「どうも・・」  「どうも・・」   礼を言いながら・・  「よかった・・これで行けそうよ」  「よっかたね」  車は描いてもらった地図を頼りにゆっくりと道を走ります。  「畑・・・畑・・      とうもろこし畑っと」  「あった・・相田さん見えた             松の木も」  左前方に松の木が一本道に枝を張り出しています  緩やかに左にカーブするところです。  言われたように車が出入りするように砂利がしかれて  広くなっていました。  車が道なりに砂利道に入りますと、大きなトラックが  道端に停めてあります。  すぐそばで、見たことのないような大きな  トラクターが作業をしています。    黒い豊かに見える土がトラクターの刃からこぼれ落ちていました。  畑は5ヘクタールもありそうなぐらい広大です  田山さんの息子さんが言っていた機械化とは  このようなことを言うのだろうと思いました。  車はトラクターや働く人たちを尻目にいよいよ  北海道の大自然の中へやっと入れたのです。  
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★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.112          山菜きのこ メールマガジン             「ちいくろ奮戦記」 ・・・・・・★★★★★★★★     ・・・ ・サルノコシカケ(25.北へ)・・・・・・・  車はトラクターや働く人たちを尻目にいよいよ   北海道の大自然の中へやっと入れたのです。 道は、林道ですが、雨の少ない乾燥している気候のせいか、水溜りなどもなく  危険な山肌や、崖地などもない平坦な山道でした。やっぱり高原の林地を  走っていると言う感じです。  東北の山は曲がりくねっていたり、斜面があったり、道は雨で削りとられて  いたりの危険のある山道が多いのですが、とっても安全な山道なのです。  道幅も対向車が来てもすれ違いができそうなぐらいの広さです。  車はまもなく、三叉路にかかりました。  「どちらに行こうか」  「そうねこちらのほうが、木が多そうだから左に」  「左ね!」  車は左に曲がると三叉路を少し行き過ぎたところで停まります。  「どうしたの・・石、、いや相田さん」  やっぱりいいにくよね、急に名前が変るなんて・・    「目印を・・」  「目印!」  「そうよ、初めての山は危険だから慎重にね」  相田さんは車から降りると、魔法のリュックから赤いリボンのテープを  取り出しました。  測量のときなどに使うテープのようです。  良く林道の測量などに、木の枝に赤い蛍光塗料を塗られたようなテープが  くくりつけられていることがありますが、それと同じようナテープを、  目印にやっぱり木にくくりつけたのです。  「帰りにはずすのを忘れないように     このように、道の交差点には目印をつけていきましょ」  なんて用意周到な人だ  改めて感心してしまいます。  貴方は偉い・・  「凄いね・・こらならだいじょうぶだわ」  「ほら・・こずえが言っていたでしょ      山を案内するときに、このテープを目印にマップを作っているから     このテープは山歩きの必需品なの」  「必需品ね・・私の必需品は弁当だけど        このテープも仲間にいれておこうっと」  「便利よ・・初めての山には必ず必要よ        このテープとテープの間の距離と時間を入れておくのよ、     そうすると、今どの変にいるかが検討がつくし、もっと別の利用方法もあるのよ」  「別の利用方法って」  「マップを作るときに使うの」  「マップね」  「そのうちに伊藤さんも、こずえが      自慢げに教えると思うわ・・・そのときに」  なるほど・・・  牧場のおじさんが言っていたもの、  山には無数の道があるので迷わないようにって    秋田や山形の私のいく道は一本道でいった道を帰るしかないけど、羊蹄山は違うらしい  本当に北海道は広いんだ!  結びつけられた赤い紐は道路にはみ出している枝にくくりつけられたので、遠くになっても  良く見えました。  ときどき後ろを振り返って確認しました。  いってらっしゃいと言うふうに手を振っているようにも見えました。  少し行くと  また車を停めて  「伊藤さん・・サルナシの木よ」  「サルナシの木!」  「降りてみましょ」  車を林道脇に止めて、サルナシの木に歩み寄ってみました。  「出てる!」  「でてる・・本当」  「ほら・・あそこんとこに」  「本当だ・・でてるね」  さるなしは大きな木に絡みついて、道路にたれさっがてきており  車の通行にも邪魔になるぐらいでした。  木の上のほうにいくつかの「さるなしの実」が付いています。  北海道にも「さるなし」はでてる  明るい希望が見えてきます  「サルノコシカケ」も見つかるぞ  「さるなし」は、車を停めた道を挟んで両側に出ていたのです  こちらのほうは低い木だったので、そのまま手で採ることができました。  結構おおく採れたので満足です。  「さるなし」を採っている最中に2台の車が上のほうに  登っていきました。  一台の車に乗った初老のご夫婦が、車の窓越しに  「何を採っているんですか」  とたずねられたので、「さるなしの実」ですと答えると  「さるなし!」と・・わからそうでしたので  「コクワ・・コくわの実です」といっても、やっぱりわからなそうでした。  こちらでは、あまり関心がなさそうな感じです。  見えるところなのに採取されていないところを見ると・・  二人は、「ふ〜ん・・・コクワですか」と、実を見ていましたが  「どうも」と言って立ち去りました。  「相田さん・・さるなしは北海道では関心がなさそうね」  「そのようね」  「北海道はもともとの先住民ではなく、開拓のために全国から     集まってきた人たちが多いから、山菜やきのこに興味が                         ない人が多いのかもね」  「東北は違うわ、昔からの先祖代々から山からいろんなものを利用してきた    から、山のものを大事にするわ」  「東北は山菜きのこの先進国ってわけ」  「先進国・・・う〜ん・まあ〜そのようなことね」  「山菜やきのこを大事にしていたってことは、冷害などでの     作物が取れなかったから・・自然のものに頼らざるを得なかった       ということも考えられるから」  「やっぱり先進国じゃない・・どのような意味でも」  「山菜やきのこの先進国だとか・・沢山採れるだとか・・・        裏を返すと・・・生活が厳しく貧しいと言う意味が        隠れているような気がするんで・・・」  「あら・・駄目よ      物事を深く多面的に見るのはいいことだけど、卑屈になるのは         先進国でいいのよ・・・先進国よ!東北は」  「その考え方がいいのよ・・・伊藤さんは」  「単純なのよ・・物事を考える尺度が一方向しか見えないの」  「ふふふふふふ・・」  「ふふふふふふ・・」  山は風で倒れたのか木が結構倒れています。  木肌が皮が剥がれてあかむけになっている木が相当あります  でもサルノコシカケは見えません  やっぱり細い木が多いのです  ブナの木は木の直径が1mぐらいのものは普通です。  こちらの針葉樹はそのぐらいの太さのものはほとんど見当たらないのです  何箇所かまがって赤いテープで印をしてきましたが、上のほうに行っても  木の太さは望めそうにもないので、まず山へ入ることにして車を降りました。  「伊藤さん・・とりあえず入ってみましょ」  降りたところは山のやや登ったところでした  山の中は下草や、熊笹で一面覆われています  下草や熊笹は他の植物を寄せ付けないようです  「相田さん・・この山には「みずの実」がないわ」  「本当ね」   この時期になると「みず」は、葉の根本に小さな赤いをつけて「みずの実」となります。  みずは湿ったところが生息地なので乾燥しているこの大地には適さないのかもしれません  聞くところによると、わさびも沢などに生息していると聞き及んでいましたが、  その姿も全く見えません  果たして「サルノコシカケ」は出ているのでしょうか   また不安が頭をよぎります  
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★★★★★★★★★★・・・・・・・・・・・・  vol.113          山菜きのこ メールマガジン             「ちいくろ奮戦記」 ・・・・・・★★★★★★★★     ・・・ ・サルノコシカケ(26.北へ)・・・・・・・  果たして「サルノコシカケ」は出ているのでしょうか   また不安が頭をよぎります   北海道の9月は快適です。時折吹く風も暑くなく寒くなく   心地よく感じられます。   そういえば虫もあんまりいないような気がしますが・・・   気のせいなのでしょうか・・・  カラマツなのでしょうか?  針葉樹の木が、天高く伸びきり揃った木の太さが続きます  林の景観がまるで違うのです  笹は背の高さ以上に伸びているものも、結構ありました。  あんまり人が踏み入った形跡もありません。時折笹が倒れているので  きのこ採りにでも入ったのでしょうか・・  でも笹があまりに乱雑に倒れているのです  右に倒れたり、左に倒れたり・・  規則正しくなく、あわただしく通り去ったかのように     ・・・うん・・まさか・・例の・・ヒグマ!・・ってことはないよね  まだ麓だもん・・・熊なんかじゃない・・絶対無い・・  一応  相田さんに確認・・確認・・転ばぬ先の杖って言うもんね・・  「相田さん・・・相田さん!」  相田さんは、笹薮の陰のほうでなんかを探しているようです。  木の根元を探しているところをみると・・「サルノコシカケ」では  なさそうです。笹の陰になったり現われたり・・・  近くにいるのになんか遠くのほうにいるように感じるから  知らない山は不思議です。  「相田さん・・・ほら笹が倒れているところあるわ       ・・・熊・・ヒグマってこと・・ない!」  「熊・・?」  「熊よ・・笹が倒れてる・・乱雑な道ができてる」  「ふふふ・・怖いの」  「怖くないの」  「怖いわ・・熊がいるなんて」  「じゃなんで・・そうやって落ち着いていられるの」  「だって・・伊藤さん    熊が・・人間にわかるように跡を残すとでも」  「残してる・・ほらほら」  「いやだ〜それは人が歩いたのよ」  「人・・誰か歩いたの」  「だって熊は能ある四本足よ      熊は山を音もなく歩くのよ・・・              笹だって倒すもんですか・・」  「なあに・・じゃ〜熊はネコのようにじゃまものを除けながら       体をくねくねさせて歩くってわけ」  「ふふふふ・・     あの体をくねくねって・・おもしろいこと」  「おもしろいって・・熊は軟体動物なのかしら             歩いた跡を残さないなんて」  「それが野生の動物の生きる術なのよ       そうしないと・・生きていけないから」  「誰も熊を狙うことは、しないのに」  「違うわ・・・人間よ・・    人間に姿を見られたら・・・すぐ猟友会とか何とかって            熊狩りが始まるんじゃない」  「熊の天敵は・・自然界では人間よ」  「天敵・・人間が」  「私たちが天敵なのよ      天敵に・・跡を悟られるようなことすると思って」  「ま〜・・弱い天敵なのに        かわいそうな熊さん・・そこまで気を使うなんて」  「熊さんは気を使っているのよ」  「でもほんとに、熊でないの!」  「だいじょうぶよ」  「ほんとね」  「熊の場合には、笹などを倒したりしないし・・                 それに・・跡がないもの」  「跡って・・まだ何か」  「熊は、立ち木や笹などに形跡を残すことは無いんだけど     隠すことのできないものがあるのよ」  「やっぱり・・何かあるのね」  「うん・・足跡よ」  「足跡!」  「普通の山だと足跡も見つけにくいけど      注意深く見ると・・足跡がわかるの」  「足跡がわかる・・」  相田さん・・あなたは・・熊の研究家  ・・きのこの研究でなかったっけ  「たくさん見るとわかるようになるわ」  「たくさん見るって・・どのようにして」  「う〜ん・・奥山の水芭蕉などの出る湿地帯がいいわね」  「水芭蕉・・熊が来るの」  「水芭蕉に来るのではなくって、湿地帯だから           熊が通ると足跡がよくわかるってこと」  「見たの・・何度か」  「何度となく見たわ」  「怖くないの」  「だって・・熊の通り過ぎた後だもの・・怖くないわ            熊は襲ってこないの・・・天敵だから」  「どんなん足跡って」  「そうね・・人間のような足跡を想像したらだめよ」  「う〜ん・・人間ではない足跡・・牛とか・・馬とか・・        象とか・・」  「動物の足跡だから・・      ほら・・パンダ・・」  「パンダか・・大熊ネコね」  「パンダから想像するとわかるけど、丸っこいのよ     足跡も丸っこいの・・・」  「丸っこい・・の・・」  「丸っこいのよ」  「かわいいのかな」  「丸っこいけど・・大きいの」  「やっぱりかわいくないな」  「それを何度となく見ると・・わかるようになるわ            大きさも想像がつくようになるの     どのくらいの足だと何キログラムだとか」  「そこまで・・わかるの・・」  「その足跡が・・見つからないもの       ここには・・最近はいないってこと」  「最近?」  「そう最近よ    だって・・昔の足跡は消えるもの    いずれにしろ・・笹が倒れたのは人間で・・     ここには熊さんは・・いませ〜ん」  「じゃ〜熊さんは安全ね」  「でも・・伊藤さんに会いに来るかも         友達だと思って・・・ふふふふふ」  「天敵なのに?」  「なんでも例外ってあるから」  「海を渡ってきたから?」  「そうよ・・ご挨拶ご挨拶・・            熊って礼儀正しいから」  「ふふふふふ・・」      ・      ・      ・  「ところで相田さん・・・なに探してんの」  「ほら・・このきのこ」  手元を見ると、傘の赤い虫が食ったような、疲れた感じの「きのこ」  でした。  「なに・・それ ・・あんまり見かけないきのこのようね」  「落葉よ、・・・ちょっと流れかけているの」  「ラクヨウ・・ラクヨウ・・・」  「人気あるきのこの一種よ」  「人気がある・・」  「北海道とか、長野とか冷涼なところの針葉樹にでるきのこ」  「針葉樹にでる・・きのこ」  「東北では、「花イグチ」と呼んでいるの・・     昔の人は、こちらと同じ「落葉」とよんでるの・・                    宮城でも、人気があるわ」  「ほら・・そこに出てる」  「ほんとだ」   笹タケの根本のほうに赤い色をした傘が見えました。   7〜8センチの大きさでした  こちらは形のしっかりしたものでした。  「きれいだ」  「いい形をしているわ・」  「でもあんまり見かけないけど」  「東北には、針葉樹林が少ないから・・・」  「そういえば・・あんまりカラマツ林を見かけないけど」  「針葉樹林が少ないから、見かける事が少ないのね                  きれいなきのこよ」  「針葉樹は・・気候的に育たないのかしら」  「そうでもないわ・・育つんだけどね」  「なんで・・少ないのかしら」  「それは植林政策ね・・国の」  「植林政策!」     「もう40年以上前かな〜   日本でも植林が盛んだったころ・・そのころは   山を持っている地主さんは、勢いがあった思うけど・・    林業が盛んなころ・・・山の雑木林やブナ山を伐採しては          杉の木を植えたの」  「雑木林や・・ブナの林を・・    雑木林は・・あんまり使い道がないので・・わかるけど                   ブナの木も!」  「ブナの原生林は昔はもっともっと広かったんだと思うわ    ブナの木は、立っているときは柔らかくてもろいんだけど    倒れて乾燥するとそれはそれは硬くて、木の性質としては      とってもいいの・・・だから乱伐されたのよ              多分密林もされたのよ」  「密林って」  「密林って言うのかな・・密漁のように許可なく                     伐採すること・・」  「それって・・木の泥棒!」  「木の泥棒よ」  「そんなことできるの」  「一般の人はできないでしょ     木を切って運び出すことできないもの」  「じゃだれ」    「誰って・・・誰でしょうね」  「山の関係者ってとこ」  「そんなところかな〜よくわからないけど・・               想像で話しているの・・」  「そうやっては・・木を伐採して             杉の木を植えたのね」  「歌にもあるよね      もしもしすぎのこ・・なんとかって    それほど、林業が盛んだったんでしょうね」    「どうして杉の木を」  「住宅の建材に・・杉の木が多く使われたから、杉は建材としては     他の木には見られないような多くの特長を持っていたから       高く販売できたようね・・・だから杉の木を              至るところに、伐採しては植えたのよ」  「針葉樹は、杉に比較すると柔らかくもろいので、    また虫も付きやすいので・・・建材としては杉に劣ったのね     だから・・東北の山には、杉の木が多く針葉樹が少ないの」  「杉の木は、花粉症の原因だって・・・     当時はわからかったんでしょうね・・まさかこうなるとは」  「わからなかったでしょうね・・宮城の場合各家でも    家の周りに杉の木を植えて、将来の建て替えの建材としての利用や    防風林、防雪も兼ねてみんな植えているわ」  「そういえば・・杉の木で家の周りが囲まれているわね」  「全国で・・宮城が県の敷地面積あたりの杉の木の植林面積は      全国一だって・・・」  「花粉症から・・逃れなれなって訳ね」  「逃れられない・・・だめだめ・・何所へ行っても」       「今は、林業も駄目ね      日本の山は起伏が激しく、木の切り出しに     お金がかかりすぎるので、外国の木材に負けてしまっているわ」  「だから・・この山も荒れ放題?」  「山が荒れると・・・下草が生えて・・      地面には日が当たらない・・風も通らない・・・     ・・・・そうすると・・きのこは・・・出ない」  「きのこの危機が・・近づいているの」  「林業の危機は・・きのこの危機ってわけ」  「そうよ」    「きのこは木のサイクルに、関係するから」  「新しい木も、古い木も必要なの」  「植林や・・植えた木の手入れ・・山の保全        きのこは、山の人たちの汗の結晶の副産物よ」  「放り投げた山には将来は、きのこも出なくなるのかしら」  「きっときのこも採りにくくなると思うの」  「天然のきのこは、貴重品ね」  「貴重品よ」  「天然のきのこは、そのメカニズムが理解できる人たちで    ないと・・その良さがわからないんでしょうね」  「そのとおりよ     どれだけ貴重なものなのか・・・          一般の人には・・・わからないわ」  「なんだか・・もったいなくなってきた」  そうおもいながら・・「花イグチ」を見てみました。  一個は赤い色が薄汚れた茶褐色になろうとしています。  傘の裏は虫が一部を食い荒らしたのか筋が入っています  もう一個は若くてきれいなイグチです。   この針葉樹の笹を掻き分けて、見つけたきのこです。    天然のきのこは「貴重品」・・・・    天然のきのこは「貴重品」・・・・    天然のきのこは「貴重品」・・・・             ・          ・          ・          ・   何度となく・・頭の中で繰り返し言い続けました。       
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