ブレッドについて

ブレッドを初めて聴いたのは71年の暮れ「Baby I'm-A Want You」、ラジオから流れるこの曲に何て粋なメロディーだろうと当時14才の私は心時めいていました。翌年夏あの「Dismal Day」で完全にブレッドの虜になってしまいました。あれから31年、依然としてブレッド・フリーク状態は続いております。
それでは私がこのサイトを作るにあたってブレッドについてこれまで感じてきた事を独断と偏見で書きます。まず彼らの一貫してきたスタンスに、バンドとしてレコーディングした曲は全てメンバーのオリジナル作品であるという事があります。また全てのアルバムのプロデュースとアレンジも彼等自身です。オリジナル・アルバムは6枚と少なかったのですが、全曲オリジナル作、そしてグループ自身が全アルバムのプロデュース&アレンジというのは当時のメジャー・バンドの中でも極めて稀な事であったのではないでしょうか。自らのプロデュースでオリジル作品に拘り非常に完成度の高いポップ・ミュージックを制作してきた彼等は70年代初頭のポピュラー音楽界で貴重なユニットであったといえます。メンバー全員がスタジオ・セッションやソング・ライターとして裏方の仕事で腕を磨いてきた経験は後に彼等の商業的成功へと繋がっていきました。他に商業的に成功した多くのグループは売れ線ライターの曲を採用したり、レコード会社のプロデューサーの意のままにバンド・イメージを作られていった事が多々ありました。そういう意味でブレッドのメンバー達は自らのプロデュースでオリジナル作品を演奏する事により上記のようなアーティストとは一線を画したバンドであったと言っていいでしょう。もちろんエレクトラのジャック・ホルツマンのアドバイスは有効であったと思いますが、ホルツマンの彼等のバンド・コンセプトへの理解は深いものがあったと思います。
ブレッドは当初A面シングル・カットに於いてデヴィッド・ゲイツの曲とジェイムス・グリフィン&ロブ・ロイヤーの曲を半々で行うという約束事(契約があったかどうかは不明)があったらしいのですが、ゲイツのポップ・ナンバーが連続ヒットしていく内にエレクトラはゲイツのメロディアスな曲をA面シングル・カットしていくようになり、結局グリフィン&ロイヤー作のA面カットは「Could I」だけでした。これらの事実は良くも悪くもリスナーのブレッドに対するイメージを決定付けたといっていいでしょう。ブレッドは解散するまで多くのファンはゲイツのメロディアスな曲にバンドのイメージを連想していきました。シングル・ヒット・グループとの認識は決して間違いではありませんが、それはファン心理の表面上のイメージに止まるとも云えます。彼等のファースト・アルバムは当初のバンド・コンセプトが如実に現れており非常に興味深いものがあります。「Dismal Day」はヒットチャートに登場しても不思議ではありませんでしたが、エレクトラの広報の失敗かどうかは不明ですが運悪くヒットには至りませんでした。(1972年夏に突如日本で大ヒット!)私が思うに当初彼等の目指したスタイルはおそらくこのファースト・アルバムで聴かれるサウンドだったのではないかと思うのです。3人ともこのアルバムの出来には満足していたと思います。(ライナーノートのコメントでも分かります)しかしニュー・ロック突入の時代に彼等のソフトライクなサウンドは今一つインパクトに欠けていた事も確かでした。しかしこのデヴュー作がファースト・ヒットには至らなかった結果が彼等の次の運命を左右したのではないかと思うのです。というのはファースト・アルバムがそこそこヒットしていたならゲイツは「Make It With You」を書かなかったのではないか‥、(とんでもない憶測ですが)この曲のレコーディングはマイク・ボッツのドラム以外は全てゲイツがダブル・トラッキングしており、凡そ一人で背負い込んだ曲作りは何が何でもヒット・シングルが必要であったというゲイツの心情の現れではないでしょうか。結果は幸か不幸か「Make It With You」は全米No1のミリオン・セラーとなり、世界中にブレッドの名を広めることになったのです。
こうしたラッキーな出来事はエレクトラのゲイツへのヒット・メイカーとしての要求を増幅させると同時にグリフィン&ロイヤー自身への不満が募っていく状況にもなりました。しかし私が思うに、ゲイツのヒット・ナンバーはアルバムの一部分であり多くの曲はメンバーの総意の基に作られたものが殆どなのではないでしょうか。グリフィンのアソシエイト・プロデューサー、またヴォーカリスト、ギタリストとしてのバンドへの貢献度を顧みればブレッドのサクセス・ストーリーは決してゲイツ一人の栄光のものとは言えないでしょう。ヒット・メイカーとしてゲイツのメロディアス・ナンバーの印象が強烈ではあるのですが、基本的に彼等の楽曲に対してのアイデンティティーに大きな違いはありません。またスロー・ナンバーでもアップ・テンポ・ナンバーでも基本はナチュラルでオープンなアコースティック・ギターのリズムにシンプル・トーンのエレクトリック・ギターがリード(何れもダブルかトリプル)そしてヴォーカル・ハーモニー、其れこそギター・バンドの手本といってもいいようなスタイルを彼等は一貫してきました。そしてあくまでもポップでメロディー・ラインを重視する明解な曲作りというゲイツ、グリフィン、ロイヤーの当初のバンド・コンセプトはラスト・アルバムの『Lost Without Your Love』まで継続されたと言っていいと思います。また多くの曲がコード展開等凝った楽曲作りをしているのですが、耳には聴き触りの良い滑らかなサウンドで入って来るのも最初から最後までブレッド・ナンバーの特徴の一つだったでしょう。
バンドの歴史の中でメンバー間の不協和音があったのは事実だと思いますが、自分達の音楽製作に関してはビジネスライクに割切っていたのだと思います。そういう意味に於いてプロフェッショナルな職人バンド、ブレッドの音楽はゲイツのヒット・ナンバーもグリフィン&ロイヤーの陰に隠れたナンバーも同等の価値を有するので
はないでしょうか。

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